17.目が覚めて
薄暗く湿気の多い所で少女は目を覚ました。
まだ、はっきりとしない意識の中で、左ほほに温もりを感じた。
やがて意識がはっきりしてくる中で、自分が横になって寝ていることに気がついた。
左ほほに感じていたのは、だれかのひざの温もりだ。
安心感に包まれるようなあたたかな温もり。
さっきまでの怖い出来事は夢であったのだと、少女はほっと安心した。
「やあ、やっと目が覚めたかい? お姫様」
聞き慣れない声、でも確かに聞いたことのある声。
その声に導かれるように、少女は一気に現実へと引き戻されていく。
少女は急に起き上がり、今まで自分が枕にしていたひざの主人を確認する。
長いコートを着た、ショートヘアーのきれいな女性が座ってこちらを見ていた。
少女の夢は、現実へと変わっていく。
混乱している様子の少女を見かねて、ショートヘアーの女性が優しく声をかけた。
「まあ、とりあえずここに座んなよ」
女性の声に少し落ち着きを取り戻した少女は、女性の目の前にちょんと座った。
「まあ、なんだ。混乱するのはわかる。しかし、私もわかないことだらけなんだ。
とりあえずこちらから質問するから、簡単に答えてくれる?
まだ落ち着かないだろうから、本当に簡単にでいいから」
少女は、こくりと首を縦に振った。これはつまり、わかったという合図だ。
「まずは君の名前 教えてくれるかな?」
「……」
「みんなからなんて呼ばれてた?」
「……クミ」
「へー、クミちゃんかー。かわいい名前だね。私はシンデレラっていうんだ」
「……私たちはその名前というものはない。別に困ることはないから。
でもみんなは私のことだけは、クミ様と呼んでいた」
「ふーん、まあ確かに独自の文化があってもおかしくはないか。
地図にも載ってないような所だし。
うん、それでクミ様はここで暮らしていたわけ?」
「クミでいい。シンデレラは私の命を救ってくれた者だからな」
「ははー、ありがたきしあわせです」
「そうだ、私はここで生まれて、ここで暮らしてきた」
「お母さんやお父さんと一緒に?」
「母や父の顔は知らない。私は生まれてきた時からずーと皆で育てられた。
母や父は私を育ててくれた皆の中にはいただろうけど、名乗り出たりはしなかった」
(本当に独自の文化だな まるでこの世界から隔絶されていたような)
「それにしても、シンデレラはおかしな格好をしているな。
ずっとこの森で暮らしていたのか?」
「いや、そんなわけないでしょ。世界を旅して回ってるんだ」
「セカイ? それはつまり森の外から来たのか?」
「そうだよ、外から……まあ、確かに君から見ればそうとも言えるか」
「!? ほんと? でも、外は危険がいっぱいで人が住めるような場所じゃないって」
「まあ、危険がないわけじゃないけど たくさんの人が普通に暮らしてるよ。
……もしかして、クミは森の外に出たことがないの?」
「だって、私は皆の上に立つ者として、この地を離れるわけにはいかないから。
皆、私を慕って……そう、私がいないと皆がさみしがるからな」
「ふーん、じゃあそのしゃべり方も?」
「皆の上に立つ者として、気丈に振る舞うのは当然だ」
「そうかな? もっと年相応の方がかわいいと思うな。せっかくかわいい顔してるんだから」
「ふん、と とにかく、もっと外の世界の話を聞かせなさい」
「はいはい、わかりましたよ。お姫様」
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だいすきだ だいすき
だからね
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だいすきだ だいすき
だけどね
だいすきだ だいすき
だからね
どう思っても 後悔しちゃってさ どうしよう...だいすきだ
宝木望 Nozomi TAKI
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