「ひゃー、久しぶりに来ると大分変わってるもんだなぁ」
 驚きながら、カイトは街中を歩いていた。
 城下町らしい栄えた町の中、昔見た、この土地の記憶を今の街並みに重ねている。目的は勿論レンを探し出して連れ戻し、お説教をするためだったが、カイトはそれ以外にも密かな楽しみがあった。
 少し歩いてから、カイトはふと考えた。自分の探し人は一体、どこにいるのだろうか。
「そこのお兄さん、彼女に花でも買っていかないかい?」
「ああ、綺麗ですね、貰っていこうかな。…あの、これくらいの金髪の男の子見かけませんでしたか?連れなんですけど、はぐれちゃって」
 自分の胸くらいの高さを手で示して見せて、すこしだけカイトは考えをめぐらせ、付け足した。
「女の子みたいなんですけど」
「男の子なら知らないけど、そんな感じの女の子なら知ってるよ」
「本当ですか?その子の家とか、教えてもらえません?」
「お城だよ」
「え?」
 少し驚いた声をした。
「お姫様だ」

 花売りに言われたとおりに城に来て見ると、白く大きな壁に五人ほどの見張り番が並んで立っている。さも当たり前というようにカイトが中に入ろうとすると、二人がカイトを止めた。
「え、あ、あ」
「用件は?名前と住所と職業、年齢と城内に関係者は?」
「えっと、えっと、な、名前は始音カイト、住所不定無職!歳は二十一、用件は連れに似た子供がいるって聞いて!関係者は…えっと…」
「関係者は?」
 問い詰め、見張り番がカイトに詰め寄る。
「かっ、関係者は…その…めーちゃ…いや、メイコさんという方がいらっしゃるはずなんですが…」
「メイコ様か?」
「そ、そうですっ!茶髪のショートボブの胸がおっきい!」
「…」
「あ、いや、最後のは忘れてもらっていいんですけど」
 あわてて弁明をして、カイトは作り笑いを浮かべた。
 見張り番が無線を取り出してメイコに連絡をして確認をしようとしているらしく、何度か言葉を返している。少しして無線をきると、見張り番はカイトの方をにらみ見て告げた。
「メイコ様に確認が取れた。少し待てば、メイコ様が出てきて下さる。少しまっていろ」
「あ、は、はい」
 少し怯えながらカイトが返事をした。
 見張り番たちはまた立ち居地に戻り、カイトは門の壁に寄りかかって、メイコが出てくるのを待つことにした。
 栄えている城下町を見下ろし、カイトはため息をついた。前に見たときよりも景色が広がって見えて、昔見た景色よりずっと『灰色』に染まっていた。昔の茶や赤や橙の屋根の色は既になくなりかけ、灰色のビルや住宅街が大半を占める中、まばらに色あせた昔ながらの屋根が見える。大きな超高層ビルまではないものの、近代的な家々が増えていることは数年前を知っているものからしてみれば、まったく別の町のようだ。
 空も心なしか以前の青さをなくしているように見えた。
「――カイト?」
 空を見上げていたカイトの視界をさえぎるように、メイコが顔を出した。
「めっ、めーちゃん!」
「久しぶりね、どこに行ってたの?心配したのよ!」
「ご、ごめん…」
 少しうつむいて申し訳なさそうにカイトが謝ると、メイコはそっとカイトに抱きついて囁いた。
「もうどこにも行かないで…」
「え…?」
「もう、あんなこと、怒っていないの。貴方がいなくなってから、片時も貴方を忘れたことなんかない」
「めっ、めーちゃ…」
 その瞬間、カイトを離すまいとカイトの腰に回されていた手に強く力がこめられた。
「なんて」
「え?」
 顔を上げてメイコがにっこりと微笑み、カイトの腕を首に回して背中をカイトの腹に押し付けるようにしてまた上目遣いにもう一度カイトに微笑みかけた。
「えっ?」
 一気にカイトの顔から血の気が引いた。
「言うと思ったか、この変態藍マフラー野郎がぁぁぁあああああああっ!!」
 少し長いカイトのお気に入りのコートの袖からずれないようにカイトの腕を強くつかみ、重いきり背負い投げを食らわす。
「ヒィッ!!」
 背負い投げの威力は尋常ではなく、カイトは頭から落ちそうになるのをどうにか着地し、安堵のため息をついた。途端、息が苦しくなった。
「め、めーぢゃん゛」
 青白い顔のまま、カイトがメイコを見上げると、メイコはカイトのマフラーをしっかりとつかんで城内へと向かって歩いていた。
「め゛―ぢゃん、ギブ!ギブ!」
「うっさい!黙ってきなさい!」
「じ、じぬぅぅぅぅぅうううううう!!!」
 地面をバンバンとたたきながらメイコに引きずられていくカイトはあまりにも哀れだった。それを見て、見張り番たちはこそこそと耳打ちをした。
「メイコ様、随分とお怒りのようだな」
「しかし…何があったらあの温厚なメイコ様からアレほどの怒りを買うことが出来るのか…」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

遠い君 4

こんばんは、リオンです。
ミクの設定について、お答えをいただきましたので、
大体のミクの設定が決まりました!(パチパチパチ)
ミクの設定↓
ヴァンパイアと人間のハーフで、レンの婚約者。
ミ「ありがとう御座いました!レン君の婚約者なんて、リンちゃんとライバルかも!」
そんなわけで、今日はこの辺で。
また明日!

閲覧数:440

投稿日:2009/12/05 22:50:48

文字数:1,979文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

  • 関連動画0

  • リオン

    リオン

    その他

    こんばんは、採用させていただきまして、こちらこそありがとう御座います!

    はい、みずさんの意見と周さんの意見を取り入れさせていただきました。
    その前に…。
    レンの婚約者がミクなら、私はリンとルカとメイコとカイトを!!!(自重。

    乱文でも何でもいいのです。もう、なんでも。
    おぅっと、鏡音廃がここにいますよっと。

    次も頑張ります!コメントが遅くても全然いいんですよ!ありがとう御座います!

    2009/12/06 17:47:46

  • リオン

    リオン

    その他

    こんばんは!

    ミクの設定には、みずさんの提案も練りこませていただきました!ありがとう御座いました!

    見張り番がいないと、カイトはメイコさんに殺されかねなかったです。はい。
    じゃあ、そのタグ、つけちゃってください!カイト兄さんも本望だろうと思います。

    これからもカイトは不憫ですから!よろしくお願いしますね!

    2009/12/05 23:01:26

オススメ作品

クリップボードにコピーしました