パン!パン!パン!
朝っぱらから眠気を吹き飛ばすような弾ける狼煙の音。
（何で日曜日まで早起きしなきゃなんないのよ・・・）
今日は学園祭。
うちの学園祭は結構手が込んでいるらしく、毎年別の学校からの客や、一般の人で賑わっている。
クレープや紅茶の甘い香りや、ゲームなどの楽しい声が遠くから聞こえてくる。
私は今、学園祭に参加せず、空き教室で携帯をいじっていた。
本来ならば、私のクラスで企画されている出し物、男女逆転メイド執事喫茶に参加しなければならないのだけれど。
正直言って、運動会や学園祭のような行事は昔からあまり好きではない。
後片付けが面倒だし、キャーキャー騒いでいる客や生徒も馬鹿らしく思えた。
（暇だなぁ・・・何か、もう帰っちゃおうかな・・・客いっぱい居るし、このまま帰っちゃってもバレなそうだし）
そう思い、空き教室のドアに手をかけた。
ガラッ
!?
手をかけた途端、ドアが開き、最近顔を見ていなかった男子生徒が私を見てにやにやしながら言った。
「サボリですかー女王様」
「・・・どちらさんでしたか?」
「ひでぇ!!」
その男子生徒は自分の赤い髪を触りながら笑った。
「嘘。あんただってサボリでしょ、メイト」
「まぁね」
「マナはどうしたのよ?一緒に回ってなかったの?」
「・・・話題のアーティスト君と一緒にお仕事してますー・・・」
メイトはふくれっ面をして言った。
あ、そういえば、部門一緒って言ってたっけ。
「何の仕事?」
「・・・校門の前で、客寄せしてる。運動会の時のチアリーダーの服を着てな!」
今度は、机の上にあぐらをかきながら、ぷいっと顔を横にしていった。
「チアリーダー評判良かったものね。あんた、彼女の頑張ってる姿くらい見に行ってやりなさいよ。どうせ暇なんでしょ?」
私が言っても、メイトは拗ねた子供のように不機嫌そうだ。
「だってさーあのさーだって・・・」
「何よ?」
メイトがあまりにももじもじしながら言うので、気持ち悪いことをするなと言うと、真剣な顔になって言った。
「あいつ、俺と居るよりクオと居る方が楽しそうなんだもん」
「へ?」
楽しそう?
「あの二人が一緒に行動してたのなんて、学園祭の準備してた時くらいでしょ?そりゃ、学園祭の準備してる時は誰だって楽しいでしょ」
私を除いては、ね。
「でも、許せない・・・マナの笑顔は俺だけに向けて欲しいのに。あの可愛い顔も・・・」
「あー気持ち悪い気持ち悪い。ノロケは他でやってよね」
馬鹿らしい・・・
私は今度こそ教室を出ようとした。
「待って!」
あぐらをしていたメイトが、いつの間にか私の腕を掴んで止めていた。
「ごめん・・・ルカちゃんがこういう話あんま得意じゃないの知ってるのに・・・・」
メイトの顔は捨てられた子犬のようにしゅんとしていた。
「俺、寂しいから・・・一緒回っていい?」
う・・・
「い、いいけど・・・」
「やったね」
そんな顔されたら、断れないじゃない・・・
私はしぶしぶメイトの誘いにのった。
「じゃあ、行こ!」
私は教室から出て行ったメイトの後についていった。