『桜の樹の下には 死体が埋っていると
教えてくれたのは 誰だったろうか
だから美しいのだと…
だから儚いのだと…
繰り返される囁き声が
いつまでも耳に響いている…』
桜色に染まる視界
一面に舞う花びら
狂った様に踊り続けるそれに
彼は心を奪われた
現実感のない風景
自分の存在すら 危うく思えた
空の藍を塗り変えるかの様に
散り踊る桜
その中に彼は 彼女を見つけた
『夕闇に浮かぶは 狂い咲きの桜
世界を桜色に染める 花吹雪
その樹は人の心を糧に 華を咲かす
鮮やかに… 鈍色に…
咲いては散り 散りては咲く
まるで人の心の様に…』
紅色の唇をひらく
言の葉を紡ぎ謡う
楽しそうに微笑む彼女に
彼は言葉を失った
現実感のない風景
自分の存在すら 危うく思えた
彼の意識を奪い取るかの様に
紡ぎ謡われる 言葉
その中で彼は 彼女を見つめていた
桜の樹の下には 死体が埋っていると
教えてくれたのは 誰だったろうか
だから美しいのだと…
だから儚いのだと…
繰り返される囁き声が
いつまでも耳に響いている…
『―桜の樹には魔が潜み
気に入った人間を取り込もうと狙っている
狂い咲く桜には気を付けなさい
心を奪われてはいけないよ―』
眠る彼の桜には どんな花が咲くのだろう
紅色の唇に笑みを浮かべて
囁き声で彼女は謡い続ける
桜の花が咲くであろう 次の春を待ちながら…
『アナタノ桜ハ 何色ノ花ヲ咲カスノカシラ…?』
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