第六章
「いや、まだだ。
悪夢の力がここをただよっているのを感じる。」
夜の王がみなに注意をうながすと、星空に黒い雲のようなものがわきあがり、夜空の星々を覆い隠していきました。
ミクは叫びます。
「あれは何?」
夜の王が答えます。
「Heaven’s stoneにとりついていた悪夢が大きくなって、宿主を必要としなくなったんだ。
悪夢は、世界中の悪夢を吸い取り巨大化し、そしてまた悪夢をひろげてしまう。
手遅れになる前にどうにかしないと。」
そう言って王はドラゴンを呼び寄せ、夜空にある巨大な悪夢の黒いかたまりへ向かって行きました。
剣を振り上げ
「夜に帰れ!!」
と叫びます。
しかし、王の一撃は黒いかたまりには全くききません。
「くっ、巨大化しすぎだ。」
と夜の王は悔しそうに叫びます。
悪夢のかたまりが黒い雲を夜の王にふきつけると、王は吹き飛んでミクたちのところにたたきつけられました。
ミクと、ルビィが夜の王のところへかけよります。
「大丈夫!?」
二人で夜の王を助けおこします。
王は、
「僕は王だ。これくらいではやられない。しかし、このままでは世界が悪夢に閉ざされてしまう。いや、世界だけではない。宇宙すべてが...」
その時、クイーン・ローズの声が聞こえました。
「まだ手はあります。」
見ると、向日葵の馬車に乗って、空を飛んでくる女王クイーン・ローズがいました。
ルビィが
「女王様、なぜここにおこしに。」
と言うと、クイーン・ローズが、
「ルビィ、世界が危機に瀕しているのです。当然です。 」
と言いました。
夜の王が女王に聞きます。
「それで、女王様の言うこの事態を切り開く手とはなんなのでしょうか?」
「天空のステージを使います。
春の訪れをつげ、世界すべてを浄化するために作られたステージです。
普通の者がそこで歌っても、ただ春の訪れを告げるだけで終わります。
でも、ミクなら、もしかしたら奇跡を起こせるかもしれません。」
夜の王はうなずきます。
「なるほど、それなら、私たち夜の国の者たちは、ミクが歌っている間、悪夢からステージを守ろう。」
女王が、
「ありがとう。ミク、ルビィ、ブリキン、この馬車に乗るのです。」
と言います。
女王に言われたとおり、三人は馬車に乗りました。
四人を乗せた馬車は、黒い悪夢をつきぬけて、銀河の河をとおり、宇宙をつきぬけ、天空にある巨大なステージに来ました。
女王は言います。
「ここが天空のステージよ。
ミク、あなたのためのステージ。」
クイーン・ローズがそういっている時にも、宇宙に悪夢が増殖していきます。
「ミク、時間がないわ。」
女王はそう言うと、手から蔦をだし、ステージを悪夢から守り始めました。
夜の王たちもドラゴンの群れに乗ってかけつけ、ステージを守り始めます。
夜の王が叫びます。
「ミク、歌を!!」
ミクはルビィとブリキンに言います。
「行くわ。一緒にきて。ルビィ、ブリキン。」
ルビィは答えます。
「当然でしょ。友達なんだから。」
ブリキンも言います。
「ボクも!!ボクも!!」
三人はステージに立ち、そしてミクは歌い始めました。
星に口づけをしたら
願いがかなうから
わたしは宇宙へでかけたよ
一緒に行こう
宇宙のロンリー ボーイズ&ガールズ
悲しむよりも今 星へ
Kiss me
僕は星だから
Kiss me
僕は愛だから
流れ星 君の涙
星に口づけ シューティング・ラブ
願い追いかけて
星の旅人
Kiss me
―ルビィ!!歌おう!!
二人ならもっとやれるよ!!
―うん!!ミク!!わかった!!
―(Heaven’s stone)ミク!!僕の力も貸すよ。君の歌声を宇宙の
隅々へ、そうすればみんなに君の歌声が届く。
天空のステージの上にHeaven’s stone が来て、様々な色に輝き、宇宙すべてを照らす照明になりました。
天から光がふりそそぎ、奇跡の光がミクたちを輝かせました。
ミクとルビィは、光の羽をはやしました。
Kiss me 僕は星だから
kiss me 僕は愛だから
流れ星 歌をうたう
君の約束 シューティング・ソング
歌い続けて
星の旅人
Kiss me
歌声は宇宙にひびき、悪夢のかたまりは、砕け散り夜に帰って行きました。
Heaven’s stone はそれをみて言いました。
「僕は天に帰らなきゃならない。
ミク、一緒に行かないかい?
君なら天国でも歓迎されるよ。」
「ごめんなさい。
わたしはこの地上にのこって、みんなに歌をきいてほしいの。」
「わかったよ。ミク。そう言うと思った。
地上に来てよかった。
ミクのステージが見れたんだから。
それは僕の宝物だよ。」
そういうと、Heaven’s Stoneは金色にかがやき細かい光の粒の集まりになって天に昇って行ってしまいました。
「さよなら、Heaven’s stone.
歌を聴いてくれてありがとう。」
ミクは天に向かって言います。
その時、夜が明け、かなたには朝日が昇り始めました。
ルビィがミクを抱きしめました。
そして涙声で言います。
「ミク、あなたはもとの世界にかえらないといけないわ。
力をつかいすぎてしまったから。
お別れしなくちゃ。」
「ルビィ…」
ミクも涙を流しました。
ルビィは涙を浮かべながら笑って言います。
「かなしいことなんて何もないわ。わたしとあなたの強い思いがあれば、私たち
はまたあえる。きっと会える...。だから悲しくなんてないわ。
世界を救ってくれてありがとう。
友達になれて本当にうれしかったわ。」
ミクの体は光につつまれていきました。
ミクは言います。
「私たち、これからもずっと友達だか...ら...。」
そして、ミクはリアルワールドに帰っていきました。
それは、星のきれいな夜でした。
舞台が終わった後、ミクは楽屋のドアがノックされるのを待っていました。
友達が、来るかもしれないからです。
そして、ミクが鼻歌を歌っていると、
トン、トン
楽屋のドアを軽やかにノックする音が聞こえてきたのでした。
<初音ミクとHeaven’s stone 完>
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