あぁ、なんだか懐かしい


時間がゆっくりと流れてく感じ

私はお盆だからと、おばあちゃんの家に来ていた


周りに何もないからかなり暇だけど、たまにはこうやってぼーっとするのもいいなぁ


さわさわと穏やかな風に揺られる草の音に耳をすませながら遠くを見つめていた


そういえば

近くに対して大きくはないけれど、公園があったような…

昔はよくそこに遊びに行ってたものだ

一人っ子で都会から来た私は、田舎に友達なんかいるはずもなく

二日三日程度で帰るから友達ができても、来年には私のこと忘れちゃうし


……特にすることもないし、公園へいこう

遊具で遊ぶような歳ではないけれど、久しぶりにブランコに乗りたいな


私は人通りが全くない道路を歩きながら、昔の記憶を頼りに公園へとたどり着いた


昔と変わらない、ブランコと大きな滑り台

まるで森の中と錯覚してしまうような木々

遊具の大きさに不釣り合いな小さな砂場


なにもかもが懐かしい


ブランコに腰掛けると、ズボンからじんわりと伝わってくる鉄のブランコの熱

誰にも遊ばれずにずっと太陽の下にあったのだろう


もう誰も公園では遊ばないのかぁ

少し寂しいけど、それが時代だな。なんて

年寄り臭いことを考えながら

公園に来たけどやっぱりすることないな、とか思って

ここまで来たけどやっぱ家に帰ろうとしたんだけど


ふと、横に気配を感じて振り向けば


「……初めまして」

周りにお花が飛びそうなぐらいに笑う私と同じぐらいの男の子が隣のブランコに腰掛けていた


「全然気付かなかった、いつの間に?」

「ついさっき、だよ。あんまり見ない顔だね?」


なんて言うから

「まあ都会から来てるから。お盆だからおばあちゃんの家に帰ってきたの」


そう言えば、少し目を見開いて


「へぇ、きみも…」


なんのこと?って思ったけどすぐに、あぁ、そういうことか。って理解できた


「私そろそろ家に帰ろうかな。あんまり家を空けると、ちょっと悪いし」

「ふふっ、そうだね。僕たちの帰りを待ってくれてるのにそこにいないと申し訳ないからなぁ」


よいしょっと男の子はブランコから立ち上がり


「じゃあね。ばいばい。また夜に」

「うん、ばいばい」


私達は公園を出て逆方向の道へと帰っていった


家に帰るとお母さんがバタバタと準備をしている

あ、家族全員でおばあちゃん家に来たんだよ


忙しそうだなぁ、だなんて他人事みたいに思いながらお母さんを見ていると

おばあちゃんが現れて居間からひょっこり顔を出して、お母さんに向かって


「そろそろ休みなさいな。あの子もそろそろ帰ってきてるだろうよ」


お母さんはそうね…なんて小さく呟いて居間に行く


私もお母さんの後ろをついていって、テレビを見ているお兄ちゃんの横に並んで一緒にテレビを見た


すると私のまだまだ小さい妹が私の方に駆け寄ってきて

「ねぇね…」

って小さな手を必死に伸ばしてきて

すっごい可愛い

伸びてきた手の小さな指を優しくぎゅって握ってあげると、にっこり笑って

そしたらお母さんが何してるのって私から妹を離すから

少し寂しいけど仕方ないかって我慢してまたテレビを見る


お兄ちゃんとおばあちゃんがこっちを不思議に見てたから


「なによー。私がいちゃ悪い?」


ふくれっ面で言ったら二人とも微笑んで

「おかえり」って

お兄ちゃんは頭を撫でてくれた

少し位置がズレていたけれど



そこからは晩御飯

いつも家では七時とかに食べる夕食もおばあちゃんの家では六時


全然お腹空いてないんだけどな、なんて思ったけど
これ、最近いつもそうかって自分で面白くて笑っちゃった


慌てて口を抑えたけど、誰も私を見てないから大丈夫

今日の晩御飯は素麺

テーブルの上には茄子ときゅうりの、馬?みたいなのがある

茄子に割り箸を四本ぶっ差して立たせたようなやつ


そうだ、確かお盆の時に作るやつ

なんかこれにのってあの世とこの世を行ったり来たりするー的な?

こんなの人が乗ったら潰れちゃうんだけどな


皆が笑顔でご飯を食べている所を遠目で見ていたら


「おーい!」


庭の方から聞こえる声

聞いたことあるな…って庭の方にいくと、公園の男の子


「どうしたの?」

「そろそろ時間だよ。帰ろう」

「え、もう…?まだもう少し」

「ダメ。また来年、ね?」


仕方ない、これはルール

また来年こればいいんだ


私は家族がご飯を食べているテーブルまで戻り


「ありがとう。楽しい一日だったよ。妹が私に気付いてくれて嬉しかった。お兄ちゃん、頭撫でてくれてありがとう。少し位置がちがかったけど。おばあちゃん、私の分まで長生きしてね。お母さん、先に消えてしまってごめんなさい。お父さん、お仕事頑張ってね」


突然、私の妹が泣き出す

それに慌てる家族

あぁ、私が離れることをわかってくれているのか


ぽろぽろと淡く壊れ出す私の体


「じゃあね、また来年」


そういって男の子の方へ駆け寄る


「さぁ、もういいかい?」

「もちろん。帰ろう」


私達は手を繋ぐ

下半身なんかもう消え去った


「それじゃあ、また。来年に」

「そうだね。もうちょっと生きていたかったなぁ」

「今更文句言ってたら神様に怒られるわよ?」

「あはは、そうだね」


ぼろぼろと消えてく体

私達は光になって消える


まだ少し明るい空に向かって

二つの光が昇っていった



お盆の日

それは亡くなってしまった大切な人が帰って来る日


若くして亡くなってしまった女の子と男の子が大好きな家族のもとに一日だけ帰ってこれました

二人はきっと来年も、大好きな家族のもとに帰ってくるのでしょう。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

お盆には――

私が作ったものではないです(;´д`)

友達(ちょこころね)が作ったやつなんですけど……これを元に歌を作りました!

これを載せた方がわかりやすいかなと(^_^;)

閲覧数:75

投稿日:2014/08/14 21:53:34

文字数:2,435文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました