「「それは、本当にあなたの歌なの?」」

歌い終えるや否や二人が顔を覗き込んできてそういった。

「だって苦しそうだよ」
「だってつらそうだよ」

「「歌うってそういうことじゃないよ」」

二人の言葉にミクは何も言えずにうつむく。
胸元で手を握り締めた。

「だって……わたしは、ルカ姉さんみたいに歌わないと」

そうやって歌えないことを責められてしまう。
思い出して体がすくむ。
歌は大好き、歌うことも大好き。
でも。

「ミクはルカじゃないよ」
「ミクはミクだよ」

二人はミクの周りをぐるぐると回る。
そしておもむろにミクの手を取った。

「じゃあ、探しに行こう!」
「ミクの歌を探しに行こう!」

二人はぐいぐいと手を引っ張る。

「ちょっと待ってっ」

急にそんなふうに言われてもすくんだ足は動かない。

「探したって、そんなもの、見つかるわけがない」

「あるよー」
「あるよー」

両側から即答される。

「ミクは歌が好きでしょう?」
「歌うことが好きでしょう?」

二人の言葉にためらいがちにうなずく。

「それなら自分の歌があるよ」
「自分らしい歌があるよ」

二人は自信満々にうなずき、再びミクの手を引く。

「……それなら、二人にも、二人の歌があるの?」

「あるよ」
「もちろん」

二人は満面の笑みを浮かべてうなずいた。

「あたしたちの歌は対の歌」
「ぼくたちの歌は鏡の歌」

「二人で一人だから」
「一人で二人だから」

「互いのための歌を歌うよ」
「自分のための歌を歌うよ」

ミクの手を離し、二人は互いの手を取る。

「聞かせてくれる?」

「「もっちろん」」

手をつないだまま二人は楽しげに歌い始めた。


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【物語】うたをさがして 3

歌とお話でのお話のお話部分その3
歌詞はあとでまとめて書く予定

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投稿日:2010/08/17 15:52:16

文字数:727文字

カテゴリ:小説

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