悪鬼と砂糖
BPM 120
大通りから逃避ついで
鵙(もず)への小さな土産ついで
べたつく大気に紛らわせ
派手に担がれしまった宵の果て
少し屈んで潜る裏道
隙間から頭を打った滴り
小耳に入った「止まないね」
たぶん、僕がいるせいなんだろうね
右から左の選別待ち
ずっと呼ばれない僕の名前に
意味などないから火をつけた
大したことない命だった
空瓶の山に躓く体(てい)
倒れ込んだ油の滲みた壁(へき)に
劈(つんざ)く響く確かに意識
重たい身体を運ばせる
そこに応えなどない
堕ちる先すらないまま
憶えなどない
念いに何故か焦る
唐紅映す眼すらないなら
どうにもこうにも
浮かぶ術もないまま
あんなに待ってやったんだ
鬼さんそっちはどうだい
「報われない」が人生だなんて
感情的だね
ただ愛想なんかつかれぬ程に
薄情なしの錆びれた僕だ
渇ききる前に濡らしたい
だから
さっさとお菓子を頂戴な
僕の恥も巫山戯(ふざけ)も喰い尽してやる
甘えも虫歯もどうだっていいさ
「同じ穴の狢(むじな)さ」
そして
行きたい処があったのに
目移る景色に迷い込んだ
醜悪奸邪(しゅうあくかんじゃ)に浸り過ぎて
疲労が意欲に勝っていた
夢を売っていた彼奴が
夢を治す仕事に就いていた
治せるもんなら診てもらいたいな
…まあいいや
青狐(あおご)の面、硝子の視線
縊鬼(いつき)の息から逃れるよう
この都市(まち)の胃の中這っていたんだ
世間知らずでいたかった
懐かしい筈の路地(みち)なのに
どうして不安が拭えないや
きっと変わってしまったようだ
そう思うことで頷くしかなかった
遠くの方で鳴りやまない狂騒
温度差が僕を追い詰めていく
音もしないで砕けた様相
誤魔化せない逃げられない
現実に足掻くの
わかってんだよ
そうあんなに待ってやったんだ
鬼さん手の鳴る方へ
「諦めること」が成長なんて
短絡的だね
ただ愛想なんてつかれぬ程の
迷彩色に塗れた僕だ
いっそこのまま消えてしまえたら
何から間違ったんだ
鬼さんもういいよって
「救われない」が救済だなんて
図々しいだけなら
哀訴なんて聞かれぬ程の
蹌踉めいた惨めな僕だ
渇ききる前に濡らしたい
だから
さっさとお菓子を頂戴な
僕の嘘も真実(まこと)も塗り潰してやる
だったら居場所を頂戴な
僕の帰る場所などないから
貴方ならなんて言ってくれるのかな…
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