作業に少し疲れてふと顔を上げると、お師匠は相変わらずダンボールに黙々と荷物を詰めていた。長い溜息を吐いてから意を決して口を開いた。
「良いんですか?このまま行っちゃっても。」
「口より手を動かせ馬鹿、役立たず、チビ、ガキ、ヘタレ、女顔、童て…。」
「お師匠!」
「煩い!」
この人ってイイ歳こいてすっげぇ解り易いな、俺より顔に出まくりと言うか、怒るか焦るかすると口数多くなるし。なんて考えていたら手元の携帯が鳴った。ん?天城会長?珍しいな。
「煩い、貸せ。」
苛立たしげに携帯を取り上げたと思うと掃除用の水バケツに携帯を投げ入れた。
「何すんですかアンタは!しかもあれ個人用!私物!」
「リア充くたばれ、でも荷造りはやってけ。」
「小学生じゃないんですからさっさと澤田先輩に言えば良いじゃないですか?」
「お前は意識が回復したばっかりで笑顔で減給言い渡される恐怖を知らないからそんな事が言えるんだよ…。大体お前の事だけでもペナルティ喰らってんのにさ…。」
今度はぶつぶつ言い出したよ、この人。しかし笑顔で減給ってブラック企業じゃないか?まぁ、俺に関係無いか。と、いじけているお師匠を尻目にまた携帯が鳴った。今度は支給携帯の方で、また天城会長からだった。
「はい、もしも…。」
『こんにちは、七海拓十君。』
「――っ?!」
「何だよ?!」
知らない声にビクッと携帯を突き放した俺にお師匠も驚いていた。恐る々々電話に出直すと穏かな声が聞こえた。
『多分君の隣でいじけまくって荷造りしてるであろうプランクトン脳に『話があるからそこで待っていなさい』と伝えて下さい、すぐ行きますから。』
「え?ちょ…?!」
用件だけ言うと通話は切れ、ツーツーと機械的な音が聞こえた。
「何処行こうとしてんですか?お師匠。」
「鷹臣さんとこ?」
「話がややこしくなるから面倒な事しないで下さいよ!」
「嫌だ!死ぬ!殺される!そして犯される!」
「皆が皆お師匠みたいな性癖は持ってませんよ、ガムテあった…っと。」
「鬼ー!!」
5分もしない内に玄関のインターフォンが鳴った。来たのは知らない人と…
「ヤダ七海君ったら随分過激なプレイを…。」
「誤解です。」
一緒に居たであろう天城会長と鶴村先輩の3人だった。
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