「05」です。これは本当に見た夢を基にした話です。
パラレルでオリキャラが少し出ております。
若干描写がグロテスクかもしれませんので、苦手な方はご注意ください。
パラレル、オリキャラ、グロ、全て大丈夫な方はスクロールで本編へどうぞ。













>>05



 結局次から次へと出てくるモンスターのせいで他のプレイヤーも参戦して大乱闘みたいなことになってしまったが・・・最後の一体を撃って、俺はようやくその場に膝をついた。動き回っていたせいで息が切れてるし・・・平然としてるルカとハルたちが羨ましい。リンとレンは歌でモンスターを倒していたし、ハルはその後ろで指示を出してただけだし、ルカは・・・リンレンと同じように歌いながらも動き回ったりはしていたが、生きてるわけじゃないから疲れ知らずだ。
 何ていうか・・・不公平だよな・・・。
 その時俺たちの前には動かなくなったモンスターが大量にいた。赤い血ではなく、黒い血を流して事切れたモンスターの真っ赤な目は、死んでいるというのにまた動き出しそうな不気味さを湛えている。死体ぐらい消してくれと思ったが、リアルな世界を表現したかったのだろうと思うと消さないのも頷けた。必要ないところのような気もするが・・・これはそういうゲームらしい。
 しかし、本当にリアルだ。
 死体の一つに気を取られていると、モンスターの悲鳴がすぐ後ろから聞こえてぞっとした。瞬時に振り返ると、そこには頭部だけになったモンスターの顔。牙をむき出しにして俺の顔に息がかかる・・・そんな近い位置で、モンスターの最後の一撃は止められていた。
「シュン様、油断大敵という言葉をご存知ではなくて?」
 静かにその頭を掴んでいるルカは、冷ややかな視線を俺へと浴びせてくる。
 普通は首切られたら死ぬもんだろうなんて言っても、今のこいつには意味がないだろう。まさか頭だけでも動くやつがいるなんて知らなかった。これからは用心しないとまた文句言われそうだな・・・。
 ルカの手にいるモンスターは、何とかしてその手から逃れようとしているが、まぁまず無理だろう。
 掴んだモンスターの耳元に艶やかな唇を寄せ、ルカは小さな声で子守歌を歌い始めた。静かな水面に水が一滴だけ落とされ、その波紋が徐々に広がるような・・・そんな静かに染み渡る歌声。その中に、明らかな怒りが混じっていた気がした。どうやらモンスターが俺に向かったということがルカの逆鱗に触れたらしい。マスターを一番に考えるようになる、か・・・なるほどな。
 そんなことを思った瞬間、ルカの手の中にあったモンスターの頭蓋骨を陥没し、脳漿と思われる物体を頭皮から吐き出し始める。
 何事かと目を見開いた。どうやらルカの歌声がモンスターに影響を及ぼしているらしい。
 人のものではない黒い血が頭の内容物と一緒に流れ出ていく・・・そしてルカが笑みを浮かべた瞬間、その頭部はまるで握り潰されたかのように全てを飛び散らせた。びしゃりと顔を生暖かい感触が滑る。触れてみると、黒い血と生暖かい肉のような小さな物体がビクビクと痙攣していた。あまりにもリアルすぎるそれは、すぐに痙攣をぴたりと止める。
 手に残っている生暖かさが、気持ち悪い。
「うえ・・・気分悪ッ・・・」
「大丈夫っスか!?」
「マスター!?」
 ハルが口を押さえて今にも吐き出しそうな仕草をしている。リンとレンに背中をさすられながら唸っているその目が若干涙目なあたり、本当に吐きそうになったんだろう。俺よりも明らかにプレイ経験は長いはずだが、ここまで残酷なのは見たことがなかったらしい。
 自分もそれに倣うように手にあるそれを地面に投げ捨てて口元に手をやった。
「う・・・」
 何も臭いがしないのがまだ救いか・・・それでも気分が悪い。もしも今ここにある臭いまでもを感じ取っていたなら、俺もハルも完全に嘔吐していたことだろう。もしも臭いがわかったというなら・・・立ち込める硝煙の匂いと、モンスターたちが発している血の臭い・・・だろうか。
 ふと顔を上げると、ルカはその場で自分の手を見つめたまま停止していた。先ほどの殺気や怒気など全く感じさせない・・・呆然とした様子で。
「・・・ルカ・・・?」
 黒く染まった自分の片手を見たまま固まっているその様は、俺の中の妙な不安をかき立てる。
 思わずその手を引くと、ルカははっと気付いたように俺を見た。
「・・・・・・何ですの・・・その手は」
「え?何って、お前が・・・」
 バチンッと景気良い音が響いて俺は尻餅をつく。
 えー?・・・・・・俺何も悪いことしてねぇだろー・・・?してないよな・・・?
 もしこれがゲームじゃなかったら今以上に痛みと驚きで何も考えられないんだろう。ゲームでよかった・・・本当に。
 ぼけっとしたままルカを見上げていると、顔面を踏まれた。・・・・・・おいこら待て。
「おまっ・・・マスターを何回も足蹴にすんびゃへ・・・ッ」
 すんじゃねぇ、と言いたい口にブーツの踵部分がぐりぐり押し付けられて妙な声が出る。ルカは「何て言ってるのかわかりませんわ」と言って恍惚と表現するしかない表情で微笑んでいた。
 この根っからのドS女王め、心配するだけ損したじゃねぇか!
 何故か靴をお舐めなさい的なことになってしまったのはこの際スルーして、どうにかこうにかルカの足の下から這い出るとリンに鼻で笑われた。「ダメダメっスね」と。
 それに腹を立てたり笑ってるヤツらを睨みつけたりすることで、さっきの気分の悪さなんて忘れてた。ハルもいつの間にかけろっとした顔で笑ってやがるし、レンはいつもの調子で「情けないですねー」とか言ってるし・・・マジでこの三人いつかぶっ飛ばす。
 キレそうな俺に気付いて、ハルがは小さく笑いながら俺の肩に手をかけてきた。
「まーまー、これでちったぁ慣れたろ?」
「・・・・・・おかげさまで」
 ルカの足蹴も慣れてきた気がするしな、と笑って見せれば、「お前素質あんじゃねぇの?」とからかわれた。
 ハルの背中をグーで軽く殴りながら大声出して笑う。他のプレイヤーやキャラクターたちが何だ何だとこっちを見ていたが、気にせず大声で笑った。俺もハルも、今ならどんな滑るギャグや漫才を見たって、何にだって笑えただろう。そのうちリンも大声出して笑い始めて、レンとルカがそんな俺たちを馬鹿にしたような目で見ていた。
 何が楽しいのかわかんねぇが、とにかく俺の中は何もないみたいに空っぽで、馬鹿みたいな自分のでかい笑い声が響いて楽しかったんだ。
 モンスターの残骸が散らばる街の中でも、俺たちはただ楽しかった。多分俺らは最強で、ゲームオーバーになんて絶対にならねぇって・・・そんな気がしてたんだ。







 暗い部屋に、十数個の画面。その真ん中には、2メートルはあるかという一際大きな画面が煌々と光を放っていた。
 何者かの手がキーボードを叩く音が、カタカタと部屋に響いている。時計の秒針の音に混ざり、それは妙なリズムを刻み続けた。
 永遠に続くノイズのように続いていたその音は、カタンという一層大きな音で一度制止し、機械的な女性の声が響く。
『強制離脱設定及び痛覚軽減設定を解除しました』
 感情のない声と共に、画面に文章が映し出される。
 またキーボードを叩く音が響き始めると、画面がくるくると切り替わっていった。いくつもの窓が重なり合い徐々に画面を埋めては、設定を書き換え消えていく。すると、光っていただけの周りの画面が何か映像を映し出した。そこに映っているのは、人間ではない黒い血を流し残骸と化したもの。その世界で、モンスターと呼ばれているものだった。
 小さく長いため息が聞こえたかと思うと、今までよりも速いスピードでタイピングが始まる。いくつか画面に現れた窓は、どれも女性の声と共に『強制収容モードに切り替えようとしてます。全てのプレイヤーを離脱させてください』という文を表示させている。キーボードを叩けば叩くほど複雑に窓が重なり合い、まるでエラーを表示しているようにも見えた。気のせいか、キーボードの音も苛立ちを隠せていないように響き続ける。
 カタカタとキーボードを弄る音はまだ響く。しかし確実に画面の中の窓は消え、すっきりした様子になってきていた。その時には、もう音から苛立ちは感じられなくなっていた。
 そして最後の窓が、入力した文字や記号によって消える。
 ザザ、と画面が揺れた瞬間、一度全ての画面から光が消えて部屋が暗闇に支配された。その間僅か30秒ほどだろうか・・・暗闇の中、ライターで火を付ける音がして、画面の明かりがつくと共に吐き出された息は白煙を巻き上げる。その口元には煙草が咥えられていた。
 タンッと指がEnterキーを押すと、ビーという音の後、また女性の声と共に画面に文章が現れる。
『プレイヤー強制離脱完了しました。
 現在プレイ人数0名。強制収容モードに切り替えます』
 画面に切り替え中という文字が映し出され、バーと共に数字が0%から徐々に上がっていく。
 くっと噛み殺すような、男の笑い声。キーボードを叩いていた男は、煙草を指で挟んで灰を落とした。
 暗い部屋の中、男の怪しい笑い声が響く。70%を超えても、まだ上がり続けるその数字。比例するようにバーが左から右へと移動していく。
 男の目の前にある画面には、あるゲームの様々な場面が何秒かごとに切り替わりながら映っており、そこには何名もの・・・あるいは何百、何千、何万ものプレイヤー達の姿が鮮明に映し出されていた。
 93, 95, ・・・数字が100%になり、ついにステータスバーが一番右端へ達する。
『強制収容モードに設定。感覚機能全て電子化しました』
 男の指がEnterをクリックすると、画面が切り替わり、警告文と共にある文章が現れた。
『プロジェクトAAA、開始しますか?』
 声を伴ったその文章に男はにやりと笑み、Enterに指を動かす。男はその指に力を入れずクリックしないまま、ふと横に視線をやって暗闇の先にあるものを愛しそうに見つめると、またキーボードに視線を戻した。
 そして今度はトンと軽い音を響かせ、男は躊躇わずEnterを押した。
「――さぁ・・・本当の目的を果たせ」
 ニィッと笑った男の目の前にある無数の画面の一つには、シュンとハルという青年たちも・・・そのパートナーと共に映し出されていた。













>>06

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Elysian 05

しかし、意外と早く終われるかも、なんて今回ので思いました。
30回ぐらいは覚悟してたんですが、夢の中だとこれが中間地点・・・ということはあと半分ぐらいかなー・・・。
書こうと思ってるところほど書けない自分に絶望した。書けねぇぇ・・・!
しかし銃・・・まだまだ問題が山積みです。
ステージらしいステージに分かれてなかったので、どうやってボス戦まで繋ぐかとか、夢のまま最後までいっちゃっていいのかとか・・・これ一番の問題です、実は。
昨夜同じ夢見たので感覚は残ってるんですが・・・・・・もう少し考えることにします。

03での話なんですが・・・BGMの件いろいろ助言してくださった皆様、ありがとうございました。
今は探してきたもの詰め込んで延々リピートしながらやってます。
また何かオススメなどありましたら教えてやってください(笑

閲覧数:171

投稿日:2009/04/13 19:34:00

文字数:4,318文字

カテゴリ:小説

  • コメント7

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    その他

    >>C.C.さん
    こんばんは、お久しぶりです、C.C.さん!
    修学旅行の方、十分に楽しんで来られましたでしょうか?
    自分もどこかのんびりできるところに行きたい気分です。
    ELY、すごいことになってますか?(笑
    プロジェクトAAAもきっとそのうちわかるはず・・・なのでお待ちくださいませ。
    06の方はまたすぐにでもお返事しますね。

    2009/04/18 22:25:16

  • まにょ

    まにょ

    ご意見・ご感想

    こんにちは。お久しぶりです。。イースター休暇とぃぅことで、修学旅行に行ってぃました・・。
    そぅしたら・・・。なんかすごぃ展開に!?シュンとハルが閉じ込められてしまったなんて。。
    あの男はなんなんでしょぅか?プロジェクトAAAって!?(ルカのAAAと関係があるのでしょぅか。。)
    ぅゎあああ!気になることが多すぎます!!06読んできますね。

    2009/04/18 17:33:35

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    その他

    >>紅翼様
    こんばんは、紅翼様。遅くなったなんてとんでもない。
    こちらこそ感想残しに行けなくてすみません・・・自分のチキン・・・!
    強制収容モード・・・ゲームに閉じ込められるということでいいんじゃないでしょうか。
    毎回手探りでやってるもので、今回は夢が基礎とはいえ自分でも先がわからない状態なのですよ。
    次かその次ぐらいでどのみちわかると思うので続きをお待ちください。頼りない作者ですみませ・・・orz
    どんどん面白くなってきましたか・・・!続きもそう思っていただけるように頑張りたいです。
    紅翼様が問題山積みなら自分は一体・・・と思ったのですが、人それぞれ問題を抱えてるってことですよね。そう思うと少し気が楽になりました。自分も足りない頭つかってやっていきます。
    できるだけ早く書けるように頑張りますので今後ともよろしくお願いします~。

    2009/04/13 23:22:53

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    >>FOX2様
    こんにちは、FOX2様。
    お約束ですか、そう言っていただけると心強いです(笑
    しかしながら自分の中ではどんでん返しとか全くないわけで、それが読んでくださる方から見てどんでん返しの展開となっていれば結果オーライなのですが・・・まぁそんなに甘いもんではないですよね・・・。
    FOX2様はロック系聴きながら作業されてるんですね。
    しかも指が超高速まで加速とは・・・!それは絶対にロックを探さねばならないですね!
    自分はJPOPではどうしてもバラード系中心になってしまうので、意見いただけて嬉しいです。
    皆様の力を借りつつ続きも書いていきますので、また見かけたら読んでやってくださいませ。では。

    2009/04/13 22:46:18

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