見ていたよ
噴水の端(はた)俯く花(きみ)を
見ていたよ
鳥籠の中俯く鳥(きみ)を
知ってたよ
宵闇の中俯く風(きみ)を
時の流れが気付かせる
恋のうたは独り言
囁くほどの叫び声
私もひとり聴いていた
知らない方が幸せなどと
知った後から嘆いてばかり
知らない儘で居ることなんて
知った後には恐れるくせに
私も……そうね
見ていたよ
噴水見上げ輝く花(きみ)を
見ていたよ
教会の上羽搏く鳥(きみ)を
見ていたよ
水面揺らし華やぐ風(きみ)を
時の流れに気付かされ
恋のうたを歌ってた
瞬くほどの笑い声
私はひとり聴いていた
知らない頃に分からぬものを
知った後から嘆いてばかり
揺れない儘で居ることなんて
知った後には出来ないくせに
私も……そうね
この想いに気付いた時
きみに声は届かないと
知ってしまった
それでも
花が土を癒すように
鳥が街を癒すように
風が空を癒すように
月(わたし)の光が
輪郭をなぞるならば
そうね……私も
知らない方が幸せなんて
今の私は言えなくなって
知らない頃を覚えてるから
揺れてるきみに語り掛けるの
知らない言葉知らない温度
全て光で包み込むから
知らずになぞる影は花弁(はなびら)
今の私に見えているから
知った季節を忘れぬように
私は今日もきみを見詰める
まだ知らないものに
出逢う日まで
私も……きっと
時の流れが気付かせる
恋のうたはひとりごと
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