――それでは次の次の次で、また逢いましょう。




≪アウターサイエンス【自己解釈】≫



 ある少年の話をしよう。
 少年は少女とともに都会へ来ていた。少女はかなりのお金持ちで、少女はとあるアイドルのサインを欲しがっていたらしい。
 しかし、不運な事故――そうだ、ほんとうに不運な事故で、彼女はトラックに轢かれてしまった。
 彼は彼女に惹かれていた。スキという感情だ。まったく理解出来ない感情ではあるが。

 ある女子生徒の話をしよう。
 女子生徒は青年とひとつの教室で勉強していた。青年は生まれつき身体が弱く、それは女子生徒も同じだった。だからこそ、今この教室に居るのではあるが、かといって青年はそれを苦には思っていないようだった。
 しかし、青年の突然の発作により、彼女はある思いを伝えたかった。これまた――スキという感情だ。くだらない。ほんとうにくだらない。

「もういい……聞きたくないんだ……」

 そう言ったので、仕方なく話をやめることとした。

「そんなことは、嫌な話だ」
「だが、それが事実だ」

 ――君も見ているがいい、そう言って僕は活動を再開する。

 ベッドのようなものに横たわる、一人の青年。
 結論から言えば、こいつは既に死んでいた。
 だが、そのままにしておくには少々つまらないので、ひとつやることをやってしまおうと思う。
 きっと、こいつは『怪物に食われた』とでも思っているのだろうが、そんなチャチなものではない。
 これは、死であり生であった。
 目を刳り貫いて、新たな『命の息吹』を吹き込む。それは、すぐ終わるし、簡単なことだ。

「――睨まれた時に、神に祈りを捧げただろう?」

 僕は訊ねる。
 相手は小さく頷く。

「それでいい。それだけでいい。……僕はそういうのが大好きだからね」

 悲壮精神が、大好きで堪らない。「殺さないで」と祈る、それが堪らない。どうあがいても、だめだということに気づいていても、人間とは抗う生き物だ。だが、それを完膚無きまでに叩き潰す。『希望』だなんて、チャチなものがあるとでも思うのが、人間という生き物の特性にも思える。
 だからこそ、それを叩き潰すのが、非常に面白い。
 この場所で、生まれ変わる。
 死んだ人間に新たな命を授ける。
 なんと素晴らしい場所か、理解もしないのかい?
 死んだ人間が新たな命を手に入れることは――怪物じみて、素敵なことじゃないか。
 耳に届く「神様、なんで……!」とか「もう嫌だよ……」とか泣かれても、僕には良心なんてもんはない。
 ただ、こう呟く。

「受け入れろよ、これが運命だ」

 恨むのなら、次の次の次の主に期待することだね。


 ◇◇◇


 死んでしまった小さな命に、目と『副産物』を埋め込む。
 最近はこれを人工的に行おうだとか言っている科学者も居たが、バカバカしい。人間はいつもそうだ。自分たちだけでこの興隆が出来たと思っているのだから。
 目の前には白髪の少女が涙を流して跪いていた。いつからそこに居たかは解らないが、だからといって救助方法を教えるほど僕だって甘くはない。
 ここにたどり着いた者など、数少ないのだから。
 少女の目を見ると、――赤かった。混じり気のない赤だった。そうして僕は確信した。

 ――宿ったのは、この子だったか。

 そうして、僕は少女に近づき、呟く。

「君がこの悲劇の『女王』だったのか……クスクス。面白いね」

 そう言っても、少女は怯えるだけで何も言わない。
 多少なら、言っても構わないかな。

「君に宿った能力……それは、目を合体させる能力なのさ。それは、運命だ。君がそれを備えるということを……幾億年も昔から決まっていたことなのさ」

 そして、僕は少女の前に手を当てる。

「――だから、ここに気付くのはまだ早い。ゆっくりと、眠るがいい――」

 そう言うと、少女はすうすうと寝息を立てた。


 ◇◇◇


 あれからどれくらいたったことだろう。
 目を埋め込んだ人間たちは徒党を組み、あろうことかこの現象を解き明かそうとした。
 なんてくだらない出来事だ。

 ――平和な日々を、崩してやろう。

 歯車というのは、ひとつが噛み合わなければ、凡て噛み合わなくなってしまう。そして――凡て動きが止まり、崩れ始めていく。
 それは、なんにだって応用できる。
 殺して、殺して、殺して、殺しまくる。
 そうして、一人にさせる。
 そう――凡て、『始めの悲劇』に足並みを合わせていく。

「なんでみんなを……返してよ!!」

 少女は泣きながら跪き、僕の目の前にいる。僕は今、少女と仲良くする緑のつなぎを着た男の首を絞めている。

「――こいつが愛しいか? ならば、化け物の力を使え」

 僕が言うと、さらに少女は涙を流す。
 涙を流すだけで助かるなんて、そんな甘い展開を期待しているならば、さっさと死んだほうがいい。

「なんで……、なんでなの……!?」

 そんなこと、今は言う必要はない。
 つまらなかった――ただそれだけのことだった。
 君は求めすぎたんだよ。奇跡だと思っていたかもしれないが、そんなことは必然的だ。ただ、ちょいと切欠を与えてやっただけだった。
 なんというか、君たちは何度でも抗ったというのに、ダメだった。
 君の仲間が、呆気なく僕に殺された。
 それが証明だろう。

「それでは、次の次の次で、また逢いましょう」

 そう言って、僕はテレビの電源を切るように、少女の腹に拳を叩きつけた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

アウターサイエンス【自己解釈】

かっこいい!

原曲:http://www.nicovideo.jp/watch/sm21720819

これはバッドエンドルートらしいですね……

閲覧数:2,609

投稿日:2013/08/31 20:20:57

文字数:2,294文字

カテゴリ:小説

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