「あーぁ、シチュエーションだけは完璧なのにな」

しんと静まった深夜。
頭上には無数の星々。
買ってくれた缶コーヒーはすっかり冷たくて。
あたしと君はふたり、ベンチに並んで腰かけている。

さっきからの沈黙に耐えかねて、あたしは一人ごちた。
隣の男にもちゃんと聞こえるように。

「……ごめん」

低く、呟かれた。

べつに謝って欲しいわけじゃない。
答えはわかっていたんだし。
だてにずっと見てたわけじゃあないんだよ。

「ねぇ」

正面を向いたまま、隣の男に呼びかける。

「ありがとう」

彼はこっちを見た、気がする。
そんな気配。
でも、ごめんね、あたしはまだ君を見れない。

「あたしの気持ち、聞いてくれてありがとう」

ここで君を見てにっこりほほ笑むことができたら。
かなりの出来た女なんだろうな。
そんなこと思いながら、でもあたしは正面を向いたまま。
声だけ思いきり明るくして。

「俺も、ありがとう」

しばらくの間のあと、ぽつんと声が聞こえて。

あたしの頬に一筋の水が伝った。


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  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

SSS そのいち 「星空の下で」

小説と呼ぶには及ばないショートショートストーリー。

すいません、半分以上実話ですw

閲覧数:29

投稿日:2011/07/28 13:09:44

文字数:452文字

カテゴリ:小説

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