-第三十章-
退院の手続きを終え、ルカは病院を出た。
狭苦しい病院の敷地内から出るのは、もう一週間以上も久しくおもえ、ルカは大きく深呼吸をした。そして、空を見上げると、少し表情を変え、歩き出した。その表情からは、緊張が見られた。
ふと、街路樹の陰から見える人らしき何かに目を留め、ルカがそちらへ歩き出すと、人影はこちらに気がついたらしく隠れるようにした。どうやら一人らしく、帝国の使いの類ではなさそうだな、とおもってルカが覗き込むと、そこにいたのはメイトだった。
「メイト。どうしてここに?」
「…迎えに来てやったんだろ。お前の家は目ェつけられてんだよ。さっき見に行ったけど、門の前に2,3人は監視してる奴がいる。だから、お前がいく前にと目に来たんだ。わかるか?」
挑発するように行ったメイトの言葉を無視し、ルカは少し首をかしげながら、メイトに問いかけた。
「それで、どうしてメイトが?…まあ、いいですけど。じゃあ、私はどこへいったらいいのですか?」
「そうだな、今のところ目をつけられていないのは、がくとメグの道場と、俺の家。どっちがいい?」
「勿論、道場のほうで」
即答だった。
「可愛げねぇな。そこは、こっちを指名するもんだろ」
「あら、男性一人しかいない家に、のこのこ入っていくほど、私は馬鹿じゃなくてよ。それとも、何、私に来て欲しかったんですか?」
「…行くぞ」
そう言ってメイトは近くに止めてあった紅いバイクにまたがってルカにヘルメットを渡して、自分は何もつけない。ならば、というようにルカがヘルメットをつき返し、バイクに後ろに横向きに乗り込んだ。つき返されたヘルメットを少し不満げに見ていたメイトだったが、しこし迷ってから、また、今度はルカにつき返した。つき返し返した、というべきか。
「なんです?いりませんよ」
「おく所ねぇんだよ。気づけ。持ってられるか?落ちたら元も子もないけど」
「大丈夫です。…慣れっこですよ」
「悪かったな」
そういって少し舌を出してルカを睨みつけると、メイトはバイクのエンジンをかけた。
バイクが、低く響く音を立てながら振動をはじめ、その振動が大きくなってきたあたりで、メイトはバイクを発進させた。
発進してすぐにスピードを上げ始めるバイクは、そう経たないうちにスピードは最高に達し、広い街を紅いバイクが駆け抜けていく。風を切って走るバイク。
ルカの長く桃色の鮮やかな髪が風になびいて優雅に揺れる。それにあわせるように、メイトの耳にかかった茶髪がふわふわと踊っている。
何度か信号に引っかかる度、メイトは舌打ちをしていた。
目を覚ましたときには、リンもお昼を食べ終わり、ベッドの横ですこしうつらうつらし始めているところだった。
頭を押さえながら、上半身を起こして携帯電話を開いた。画面には、今の時間――午後二時三十九分だった――を示す、デジタル時計が表示されていて、 レンはそれを確認すると、登録されている名前の中から一つを見つけ、そこに電話をかけた。
「…もしもし?」
「――今、運転中」
「どうせバイクでしょ。…そろそろ、ルカが退院した頃かとおもって」
「――いるけど?後ろに。かわろうか?」
そういうと、メイトはレンの答えも聞かずにルカに携帯電話を渡した。
「レンから。お前のこと心配してんだよ。出てやれ」
「は、はい。――もしもし、かわりましたけど、どうかしました?」
「いや、なんでもないんだけど、大丈夫かなーと。ホラ、帝国運営の病院だったしさ。特に言うことがあるわけでもないんだけど…あ、風邪、ひいたみたい」
「――あら、まあ」
このタイミングで風邪をひかれてしまって、普通なら怒るなり呆れるなりするのだろうが、それを「あら、まあ」で済ませてしまうルカはさすが、といったところなのだろうか、あるいはただ天然なだけなのか。
まあ、携帯電話でそう大きな声で話しているわけではないので、大きな音を鳴らして信号が青になったのと同時に走り出したバイクの運転をしているメイトに、レンの声は聞こえないのでまだいいが、メイトに聞こえたときにはお説教をされること、間違いなしである。
「――それで、大丈夫ですか?」
「うん。ちょっと気分は悪いけど、一日眠ればきっとよくなるよ。…そろそろきるね。バイクの上みたいだし。それじゃ、気をつけてよ。何かあったらすぐ連絡ちょうだいね」
「――はい。わかりました。それじゃあ、今度」
そう言って通話をきると、次の信号で止まったときにメイトに携帯電話を返し、大体の話の内容を教える。一部、メイトが呆れたようにしていた部分もあったが、それをルカが気にすることはなく、また信号が青に変わった。
それから、しばらく経った。
作戦会議も終えた。全員でやるべき事の確認もした。今日は、作戦を実行に移す日である。
守護者たちは全員、帝国王がいるとおもわれる城の最も近くにある、神威の道場に集まっていた。全員が額をつき合わせて作戦の確認をすると、頷いた。
「――わかってるよね?」
「勿論」
「それじゃあ、行こうか。準備はできているよね?」
その場には守護者以外に、リンの姿もあった。話し合った結果、守護者になる可能性のあるリンも、いい機会ではないか、ということになり、リンも今回の作戦に参加している。
まだレンの風邪も治るどころか、悪化していたが、少し無理をしつつ実行する日程を動かさないようにしていた。
「――行こう。皆、気を抜くなよ」
全員が声を出さずに静かに頷いた。
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