よく、漫画や映画なんかにあるベタなシチュエーションに、家に行ったら豪邸で門から玄関まで5分掛かります。なーんてのがあったりするけど…。

「普通!」
「何を期待した?何を?」
「豪邸とか?」
「あー、そう言うのみたいならまた今度ね…取り敢えず入っ…ああ、引くなよ?」

家に入る前に敷居の高い前振りされた。ゴミ溜めになってるとか?色んな想像をしてドキドキしながら入ったが、見た感じ普通だった。何処までも肩透かしな…。

「あーっ!!」
「わっ?!何?!」
「凄ーい!!プレミアモンブランの60㎝うさうさ!あっ!こっちは苺ミルクプレート!ちゃんとスプーンまで揃ってる!可愛いーっ!」

緋織ちゃんは子供の様に目を輝かせながら兎のキャラクターグッズに魅入っていた。よく見ると半分ほど開いた扉の向こうにぎっしりと兎グッズが並んでいる。こ、これは確かに引くわ!

「とりゃー。」
「はっ!す、すいませ…!…あ…ああっ!それは…!」
「七夕限定生産モデル77体の内の1体、キャラメルハニーうさうさ77㎝。厳選された材料で作られたふわふわもっこもこの逸品。」
「はわ…はわわわ…!」

一之瀬さんは楽しそうに77㎝の兎ぬいぐるみで緋織ちゃんを弄っていた。おあずけ喰らった子犬みたいになってるし。

「ほーら、ほーら欲しいか欲しいか~?」
「抱っこ!抱っこだけでも!」
「2人共馬鹿な事してないで本題。」

呆れ返った真壁さんの一言に2人はハッと我に返っていた。軽く咳払いをした後一之瀬さんがリビングへ通じるらしいドアを開けて入って行った。何気なく緋織ちゃんを見ると思いっ切り兎グッズの部屋を見ていた。そんなにあの兎好きなのかしら…?

「じゃ、本題…。」
「あの、すいませんリビングに引くんですけど。」

知らない人が見たら絶対女の子の部屋じゃないかと思う位、可愛らしいグッズやぬいぐるみやらが大量にあった。緋織ちゃんはぬいぐるみが気になるのか、そわそわと落ち着かないみたいで、こう言う物とは無縁の私は別の意味で落ち着かなかった。流石にこれは居たたまれないわ…。

「…すっごく誤解してるだろうけど、別に少女趣味じゃないからね?」
「周りの理解が得られないんですね…?」
「哀れむな!そうじゃなくて、これは自社製品なんだよ!ここは展示場と保管も兼ねてるだけだ!」
「…自社…?」

髪をかき上げながら一之瀬さんは名刺入れから一枚の名刺を取り出しテーブルに置いた。

「フェニックスグループ商品開発部チーフ…えっと、間凰…。って、えぇっ?!」
「現在後継者修行中の会長の息子だったりする。」
「思いっ切り名前違うじゃないですか。」
「普段は一之瀬って使ってるだけ、そっちが本名、あ、因みに読み方『はざま』ね。」

私は何とも落ち着かない部屋で3人をゆっくり見遣って、それから溜息を吐いて言った。

「有り得ないわ…。」

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いちごいちえとひめしあい-68.落ち着かない部屋-

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投稿日:2011/10/23 20:19:57

文字数:1,203文字

カテゴリ:小説

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