少女と少年が出逢って数日。
2人は毎日のように団子屋で会うようになった。
「そういえば、お名前を聞いてませんでしたね。」
ふと思い出したように少女が言う。
少年はにかっと笑いながら答えた。
「廉じゃ!まぁ、俺は母親が日本人じゃないらしくてな、本名はネミガ・廉・カーじゃけどな。お嬢さんはなんて名前だい?」
「私は加賀美凜と申します。」
「いい名前じゃ!」
廉は幸せそうによもぎの団子を1口頬張る。
そんな廉を見て、凜は数日前から気になっていたことを思い切って聞いてみた。
「あの・・・廉、さん。間違っていたらすみません。もしかして、家族を亡くしていますか・・・?」
「え・・・」
廉は目を見開き、バッと凜を見た。
凜はびくっと体を震わせる。
「すみません、変なこと聞いてしまって・・・。」
「・・・いや、そうじゃ。俺は捨て子でな。ガキの頃から爺に育てられてたんじゃ。その爺もこの間亡くなってな。俺が捨てられてたゆう江戸に戻ってきたんじゃ。」
廉は俯き加減に話を聞く凜を横目で見る。
「江戸は怖か所じゃと聞いていたが、凜みたいな優しい奴もおる。俺は幸せもんじゃな。」
寂しげに笑う廉。
「・・・俺はな、別に顔も知らん母さんや父さんのことを恨んだりはしとらん。・・・まぁ、一回ぐらいは会ってみたいとは思うがな。・・・すまん、暗くなっちまったな。」
「あの・・・」
凜は着物の袖をキュッと握りしめる。
「もし、もし良かったら、ですけど。私も一人で暮らして居るんです。・・・一緒に暮らしませんか?」
上目遣いに廉を見上げる凜に、廉は顔を真っ赤にして動揺していた。
「そそそそそんな、恋仲でもない男女がおおおお、お、同じ家に住むなど・・・!」
自分の言った言葉の意味を理解し、一瞬で凜の顔も真っ赤に染まる。
「すすすみません!そ、そうですよね、・・・ごめんなさい。」
火照りを冷ますように手を頬にあてる凜。
隣の廉も視線をどこかに反らし、何かを言うか言わないかをもごもごと口を動かしている。
「い、いや、あの、凜が嫌じゃないなら・・・」
「え・・・」
賑やかな町の片隅。
顔を真っ赤にしながら微笑み会う2人の男女。
はたから見れば、美男美女、恋仲にも見えるかもしれない。
しかし運命は悪戯に人生を狂わせる。
簡単に切れるその糸が切れたとき、人と人は別れ、出会い、そして消えていく。
2人の出会いは果たして神の悪戯だったのだろうか。
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