-第七章-
「リン、今日は神威のところに行くよ?」
そういって、レンはリンを起こした。
眠気眼をこすりながら、リンはベッドから起き上がってくると、時計は既に昼の一時をまわっていた。部屋からレンを追い出し、どうにか着替えを始める。
あれから、一週間も経っていない。ルカにあった後でも、レンの態度は全く変わっておらず、本を持ち出していたことにも触れないようにしているようだった。
着替えを終えると、リンはトタトタと足音を立てながらキッチンへと向かう。キッチンでは、カイトとレンが昼食を作っている途中であった。
「今日はお昼、何?」
「カレーだよ。野菜いっぱいの」
「やった。手伝う!」
「いいよ、リンは座ってて。あ、お茶、入れておいてくれると嬉しいな」
「わかった。あれ、お茶っ葉ってこれぇ?しけってるっぽいんだけど」
「違う、それの横の緑色の缶」
「オッケーオッケー」
そういって、リンは言われた通りの緑色の缶を手にとり、急須の中に量を調節しながら茶葉を入れていく。それからお湯をいれ、三つの湯飲みにゆっくりとお茶を注いだ。
「お昼も美味しく食べたし、行こっ♪」
「うん。カイト、行って来るよ。夕飯までには帰ってくるから」
「あ、うん。行ってらっしゃい。気をつけてね」
「わかってるって!行ってきまーす!!」
そう、カイトの言葉を軽くあしらうと、リンはレンの手を強く引きながら、外へと飛び出していった。
――イズア。
夜店のような沢山の店が並び、活気に溢れた町並みは、始音探偵事務所がある町とは比べ物にならないほど、街自体からのエネルギーが見られた。
夜になっても、きっと明るくて楽しそうなんだろうな、とリンは思った。美味しそうなたこ焼きや焼きそばの匂いや、キレイなガラス細工の店が並び、その中をリンとレンガはぐれないように歩いていく。
「レン、どこに行くの?」
「こっち。すぐだと思うんだけどなぁ」
「思うって…」
すたすたと人の間をぬうように進むレンを、リンはやっとの思いで追っていく。そこに、少し幼い声がかかった。
「あれ、レンじゃない?こっち、こっち!」
「あ、いたいた。リン、来て」
混乱しているリンの手を引き、レンは声のしたほうへ歩いていった。そこには、不思議な格好をした緑色のショートヘアーの少女がアクセサリーショップを開いていた。
少女は嬉しそうにレンを呼び寄せると、微笑んだ。
「久しぶりだね!あ、今日はデート?それは、お邪魔しました。どう?何か買っていかない?今日はもうすぐ店じまいするから、安くしておくよ」
どのアクセサリーもキレイなガラスがはめられ、ブレスレットやネックレス、指輪なんかもあってどれもリンの目を引くものばかりだ。
「いや、今日は、そんなことじゃなくて…」
「これっ♪」
「ああ、それがいいの?わかった、じゃあね、本当は1200Vなんだけど、900Vでいいよ」
「やった♪ありがとう、はい、900Vね!」
「まいどぉ♪」
言いかけたレンの言葉をさえぎって、リンは一番気に入ったアクセサリーを手にとり、少女はレンを無視して、リンにそれを売った。心なし、リンは満足げである。
「ああ、それで?レン、何しに来たの?」
すこし小声になり、少女が聞いた。それに、レンは小声で答える。
「コイツに、試練を受けさせたいんだ。家、行ってもいいか?」
「ああ。わかった。まって、店じまいするから。それまで、その辺歩いてなよ。そうだな、一時半になったら、花時計の辺りで落ち合おう」
「わかった。じゃあ、一時半に」
そういって、レンは少女と別れた。
店はがやがやと大きな声で客を呼び寄せようとしているのだが、それもまた、夏祭りか何かのようで、風流という奴である。
いろいろな店で一通り遊ぶと、約束に時間も近づくだろうと、二人はそのまま辺りを見てまわることにした。
途中、リンは小声でレンにきいた。
「さっきの子が、レンの言ってた『神威』?」
「いや?あれは神威じゃないよ。あれは神威の妹」
「そっか。そうだよね、守護者の家族なら知ってても当然か、試練のこと」
「…そだね」
二人はにぎわう街中を、ゆっくりと歩き出した。
コメント1
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廻りながら感じて内宇宙...天体スコープ
Re:sui
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ご意見・ご感想
リオン
ご意見・ご感想
こんばんは!みずさん。
ふふふ・・・どうでしょう?
次の試練はあれじゃないですか、大食い大会。リンは一分間でホットドック二十本くらい軽々平らげそうです。
な、なんだか、熱くなってません?たいした意味はないと思いますよ。(テキトウ)
あ、1Vが、一銭位の価値です、きっと。宝石がだいぶ安価ですが…。大丈夫ですよね?
では、次の投稿で♪
2009/09/27 20:04:34