懐中時計の音だけが響き渡る。漆黒の闇。息が詰まる。どろどろとした闇がのど元にまとわりつき、呼吸が浅くなる。懐中時計の音と自分の呼吸の音が頭の中で反響して、べたべたとした汗をかいている。
「・・・・っ・・・・」
ついに、床と思われる場所にひざをついてしまった。ひざが痛むが、そんなことはどうでも良かった。
「・・・くっ・・・・くくっっ・・・・」
のどの奥でほとんど声にならない笑いを上げ、床に倒れる。
チッ、チッ、チッ、チッ・・・・・
懐中時計の音。生きている心地なんかしない。いやな血が体に流れているようだ。
「誰か・・・・・!」
悲鳴のような声を上げる。そして、意識を失った。
「うっ・・・・・・・」
意識を取り戻すと、そこは草の上だった。周りを見ると、茨が茂っていた。というより、どこまでも続く茨の中、ここだけが草地のようだ。
「太陽が・・・無い・・・?」
べったりと青い空。太陽が無い。そして、自分が動かなければ動かない空気に頭ががんがんする。ふと、前を見ると茨の向こうに巨大な石の塔があった。茨がつたっている。
「行かなきゃ・・・・」
なぜ、行かなくてはならないのか、自分でのよく分からない。でも、あの塔で自分を待っている人がいる。そう確信していた。
「ぁあ・・・ぐっ・・・・・・・!」
・・・ぶつっ・・・茨のとげは鋭く、簡単に服を突き破って白い肌に突き刺さる。自分の手が赤く染まっている。
・・・・それでも、進んでいく。
「はぁ・・・・はぁ・・・・・・・」
しかし、いくら進んでも塔は近くなってくれなかった。そのかわりに進むほどに棘は大きく、丈夫になっていく。
・・・すると、
「これは・・・・?」
足元の、もう少しで踏みそうなところに青玉と銀の首飾りが落ちていた。拾うと、血が付いた。彫刻がされていて、文字も彫られているようだ。目がかすんでよく読めない。
「・・・・塔・・・ハ・・目の・・・・・マエ・・」
----------塔は目の前------------。
反射的に顔を上げると、塔の入り口が目の前にあった。そして、走り出す。体が重く、とてつもない痛みがはしる。
「つっ・・・・ぁぅ・・・・・」
塔の中は壁に沿って階段が続いている。これを上れば、たどり着ける。
待っている人がいるから、走り続ける。
巨大な塔の最上階は、まだ遠すぎる。
「・・・・・!」
塔の最上階、綺麗な布やガラス、鳥の羽などがそこここに飾られている。
リンは血にまみれ、開いた扉の前・・・・・リンの足元・・・・に倒れた
レンをじっと見つめる。
「レン・・・・・!」
リンの、悲しそうな、嬉しそうな声。
「・・・・」
レンは喋ろうとするが、声が出ない。
「お前は何をしに来たの?」
微笑むリン。近くにあった椅子に座り、高々と足を組む。
レンは、リンの白く細い足に額を乗せる。
「・・・お・・許し下さ・・・・い」
今度は声が出た。なぜこの人に許しを請うのか、それもわからなかった。
でも、こうしなければならない気がした。
すると、リンはレンの頭をひざに乗せ、手でなでる。レンは安心して目を閉じた。
塔から見える空は、いつの間にか綺麗な夕焼けに変わっていた。
レンが持ってきた青玉と銀の首飾りは、レンの胸元に輝いていた。
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