「いってらっしゃぁい・・・」

飛立つ飛行機をたった一人でお見送り。

両親は仕事の都合でニューヨークに行く飛行機。
しかも私は置いていかれた・・・

後ろには社長さんとそのご夫人。
今日からお世話になる偉い人・・・

「君に寂しい想いをさせてしまった。申し訳ない、リンちゃん・・・」

社長さんは深々と頭を下げた。
ちなみにこの社長さん一家も「鏡音」らしい。
最近良くみるな、私の苗字。

「いいんです！全然！大丈夫です！」

「でもね、リンちゃん」

夫人が続ける。

「私達も忙しくて・・・なかなか帰って来れないの。早速今から仕事だし・・・でも家には貴方と同い年の息子がいるから。相手してやって」

「はい！」

私は相変わらずおっちょこちょい。
だから反応しなかった。「自分と同い年の息子」というところに。



＊



こっちの鏡音邸はまぁすごく立派。

何坪あるのよってくらいの庭。噴水まであるし。
白い洋風の素敵な家。すごく大きい。

「うわぁ・・・」

トランクをガラゴロ転がしておそるおそるチャイムを鳴らす。

『はい、どちら様でしょうか』

お手伝いさんらしき人の声が聞こえた。

「えと、今日からお世話になります鏡音リンです」

『いらっしゃいませ。お迎えに上がるので少々お待ちください』


ドアが開くとそこはどこかの王宮みたい。

赤いじゅうたん、頭上で輝くのはシャンデリア！
カーブを帯びた階段・・・！
なんかお姫様になれそう・・・！

こういうときくらいは作者に感謝しなきゃってくらい綺麗！

「お待ちしておりました、リン様」

出てきたのは茶髪の綺麗な女の人と、青い髪の毛の優しそうな男の人。
女の人はさっきインターホンに出たお手伝いさんだろう。

「使用人の咲音メイコです。宜しくお願いします」

「キッチンを担当する始音カイトです」

「こちらこそ・・・!」

良かったすごく優しそうな人で！

「私共は夕方までしかおりませんが、何か困ったことがあれば夜でも駆けつけますので」

「有難うございます!」

なんかニューヨーク行かなくて良かったかも!

「お荷物はお部屋に運んでおきました。こちらへどうぞ。レン様がお待ちしています」

ん？
レンってどこかで聞いたことが・・・


ドアを開いた反動でまた転ぶ。
あーあ、これで転校生に馬鹿にされたのに・・・

「うわ、また転んだ・・・お前、天然？」

目を疑いました。
視力？1.5ですよ？
疑わないといられない。

「な、ななななな・・・」

「また会ったな」

転校生の鏡音レン・・・君!

転校早々私にお世辞のつもりか知らないけど失礼なこと言った奴!

「なんで・・・此処に？」


「そりゃ・・・俺の家だし？」


ぅ・・・嘘・・・

こんなのないって!見るからに危険そうな猛獣と一つ屋根の下とかありえないから!

作者の俺得設定になんで付き合わなきゃいけないの!?

(だってその方があうあうにしやすいじゃん　by侑子)


外ではちょうどいいタイミングで雨が降り出したようです。

ここで一句。

運命の　波乱の予感　雨が告ぐ　――リン