天空塔。八又町で最も高い建物で、日本で二番目に大きな電波塔でもある。謎の地下室が存在すると噂されたこともあるが、その真相は謎に包まれており―――――
「……その謎の地下室が、『黒猫組』のアジトってわけ……か。」
『そういうことだな。さて……。』
天空塔の前に立ったルカたちとロシアンは、静かに足を進めていく。
すると、ミクがあることに気が付いた。
「……あれ?なんか……閉まってない?」
「ほんとだ……自動ドアが反応しない!」
自動ドアのセンサーのスイッチが切られている。近づいても全く反応しない。
『今日は別に閉館日ではないはずだが……恐らく奴らが何か感づいたのかもしれんな。』
「私が割ろうか?」
『いや、やめておけルカ。下手にでかい音を立てるとすぐに飛んでくるだろう。ここはこうして……。』
そう呟きながら尻尾の先を自動ドアに当てるロシアン。
するとどうだろう。尻尾の先から噴き出た碧い焔―――――『碧命焔』が、ガラスを溶かしていく。
2本の尻尾で互いに半円を描いて―――――ガラスが円形に切り取られた。切り取ったガラスを、そっと音が出ないように地面において、するりと中に入った。
『そら、来いお主ら。足音をなるべくたてるなよ。』
「う、うん……!」
静かに中に入るルカたち。
若猫の証言では、エレベーターの横にある隠し扉が地下への階段の扉だと言っていた。
慎重にルカが歩み寄って、静かに手で押してみる。
「この辺ね……よっ!」
ギギ……と少し重い音を立てて、隠し扉が開いた。その向こうには階段と、そして奥に見えたのは―――――もう1枚の扉。赤眼の黒猫が描かれた扉だ。
「よし……行きましょ―――――」
『待て、ルカ!……ここから扉を破壊できんか?』
「えっ?」
ここ、というのは隠し扉の入り口。つまり、この場所から階段下の扉を破壊する―――――ということ。
『あの若猫の証言からすると、あの扉に何か罠があるとしたほうが辻褄が合う。下手に近づいて開くより、ここからぶち抜いたほうが安全だ。』
「なるほどね……ならばこれで行きますか!!」
そういって取り出したのはいつもの鉄鞭。それを真っ直ぐに構えて――――――
「巡音流乱舞鞭術!!龍撃鞭っ!!」
ズドンッ!!という轟音と共に、分厚い鉄製の扉が通路の奥に吹っ飛んでいった。
「よっし!!皆、行くよ!!」
ルカの掛け声で、全員が一気に飛び込んだ。
当然ながら、入り口が吹っ飛んだ時の音を聞きつけて『黒猫組』組員が飛び出してくる―――――
「な……なんだてめぇら!!」
「生きて帰れると思――――――――――」
『そっちこそ生きてられると思うなぁあああああああああああああ!!!!』
――――――――――が。
怒り心頭のルカにとって、そんなものは屁でもなかった。鞭を一閃。瞬く間に組員二人が壁にめり込んだ。
この衝撃でだろうか―――――警告音が鳴り響き、一気にあちらこちらの扉から得物を構えて組員が飛び出してきた。
「ルカ姉、任せて!!……『Light』っ!!」
後ろからミクの明るい声が響いた―――――と思った次の瞬間には、金色の光が目の前の組員を蹴散らしていった。
バタバタと倒れる組員の山の向こうに降り立ったミクが笑う。可愛らしく、しかし力強く。
「……ふふっ。」
思わず釣られてルカも笑う。
その時、後ろからも組員が飛び出してきた。
「んなっ!?こっちからも!?」
「ちょ、天井から来るってアリ!?」
「落ち着きなさい!!……よっし、ミクと私とロシアンちゃんで道を拓くわ!!リンとレン、それにカイトさんは上下左右からの奇襲に備えて!!めーちゃんは殿(しんがり)をお願い!!」
『りょーかい!!』
「ロシアンちゃん、お願い!」
『仕方ないな……はっ!!』
ロシアンの裂帛の気合いとともに、碧命焔が槍状になって組員の前に突き刺さり、爆裂する。ロシアンの得意技・焔槍だ。
『殺さなくていいのだろう!?』
「あったりまえ!!とにかく簡単に気絶させて!!」
『難しい注文だな……ならば、これでどうだ?』
軽く尻尾を一振り。すると束のような碧命焔が一気に目の前の組員たちを呑み込んでいく。
碧命焔がロシアンの元に戻ると、そこには泡を吹いて倒れている組員が。全員生きていた。
『軽く幻覚を見せてやった。今頃夢の中で無数のムカデにかまれているだろうな。』
「うわぁ……えげつなっ!!」
そうして前を蹴散らしている間にも、上下左右後方から組員が奇襲を仕掛けてくる。
リン・レン・カイトの攻撃が、それらを片っ端から蹴散らしていた。
『ツイン・サウンド・アロー――――っ!!ぅおらぁ無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!!!』
「卑怯プログラム発動!!バナーナスリーップ!!」
「ふぎゃ!」「ぐはっ!!」「げぼぉ!!」「アッー♂」「てめぇ卑怯なm」「てめぇ人のものを踏むなぁ!」
ことごとく叩き落とされていく組員たち。だがしかし、その数はとどまることを知らないかのように湧いてくる。
「くっ……倒しても倒しても全然減らないとはっ……!!」
「このままじゃ抑えきれないよカイト兄!!」
相手は雑魚ばかり。だが雑魚といえど、数がいればそれ相応の強さを誇る。
三人がどうにも攻めあぐねていると――――――――――
「……まったく、だらしないわね―あんたたち!!」
「めーちゃん!?」
殿で戦っていたメイコが、いつの間にかバックしてきていた。
「あんたたちちょっと下がりな!!……くらえ!!メイコバ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――ストッ!!!!」
『キィィィィィィィィィィィィィィィィィィイィィィィッ!!!!』
いつもよりも小さいが、だがしかしそれでも凄まじい高音の音波砲が組員たちを呑み込んだ!
『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
猛烈な音圧に耳を破壊されながら次々と吹っ飛んでいく組員たち。
更に周りの壁や床に天井、扉をも粉々に砕き、そこに潜んでいた組員をも巻き込んでいく。
全てが収まった時、そこにはうめき声をあげながら地に伏す、組員たちの死屍累々とした姿があった。
恐れ戦いているリンたちに振り向いたメイコは、にかっと笑って一言。
「だーいじょうぶ、パワー0.0001%程度だから!!」
一本道を走り続けるルカたち。そこに突然――――――――――
『そこまでだぁ!!!!』
前後から組員たちが飛び出してきた。総勢200人強はいる。
「くっ……厳しいわね……!!」
「強行突破もできるが……どうしたものか……。」
しばらくにらみ合いを続けていると、リンが小さくルカの袖を引っ張った。
「ね、ルカさん!あれ、エレベーターじゃない?あれをぶち抜いて、中を進もうよ!」
「悪くない案だけど……恐らく中も罠が張ってあるわよ?そううまくいくとは……。」
『いや!リン、お主いいところに気が付いた!ルカ!!ここが地下何階まであるのか、お主の『心透過』で調べろ!!』
「え!?う、うん!!」
すかさず小さな声で、『心透過』の音波を広げ出した。
『……地下……30階。最下層は一本道じゃなくて、ちょっとした大広間があるみたい。』
『よし、悪くないな。……メイコ!!』
「はいはい?何よ?」
それまでずっとメンバーの後ろを守っていたメイコが、ロシアンの元に顔を出してきた。
『お主の怪力で、30階まで穴を開けろ。お主ならできるだろう?』
「難しい注文―――――ではないわね。ちょっとどいて?」
そういってメイコがメンバーの中央に陣取って―――――
「ちょっと気をつけな!!……っりゃあ!!!!」
《―――――――――――――――ズドゥンッ!!!!》
床を正拳でぶち抜いた!!その強烈な衝撃波は、次々階層をぶち抜いて進んで行き―――――最下層に達したのか、ドォォン……と轟音を立てた。すさまじい破壊力だ。
それまで地を走っていたロシアンが急にふわりと浮き上がり、ルカに叫んだ。
『ルカ!!雑魚は吾輩に任せて、お主らは最下層にいるであろう総大将を倒しに行け!!』
「え……でも!!」
『吾輩を何と心得る。齢300年の猫又ぞ?』
「……!!わ、わかった!!皆行くよ!!」
「ま、待ってルカ姉!!」
ルカがまず穴に飛び込んで、次いでミクが、そしてリンたちも次々と飛び込んでいく。
全員が飛び込んだのち、ロシアンは組員たちの方向を見た。
「な、なんだぁ!?」
「猫如きに俺たちが倒せるとでも思ってんのか!?」
そのあまりに無礼な物言いが―――――ロシアンの怒りに火をつけた。
『……もう一度言う。吾輩を何と心得る。齢300年の……猫又ぞっ!!!!』
その怒りが爆発するかのように―――――ロシアンの全身から碧命焔が噴き出した!!
噴き出した碧命焔は辺りの組員を一気に包み込み、そしてメイコが開けた穴から下の階にも浸食し、次々組員を呑み込んでいく。
「のわああああああ!!焔が来たああああああ!!」
この強烈な焔の浸食は、穴の中を急速下降するミク達にも届いた。
「みんな!!急いで!!」
ルカの一言で、さらに壁をけって加速する。
超高速で地面を射抜くかのように―――――最下層に降り立った。瞬時に後ろからせまりくる焔を回避。地面に激突した焔は花火のように散って、何事かと集まってきた組員を蹴散らした。
「こっちよ!!こっちからすさまじい気配がする!!」
すぐに立ち上がって走り出すルカ。後ろから続くミク達。
目の前に迫る組員を蹴散らし、片っ端から襖を開けていく。
そして―――――――――
「ここか――――――――――――っ!!!」
ルカの叫び声とともに、一番奥の襖が吹っ飛んだ。
その部屋にはブランドものの黒スーツを着た、幹部らしきメンバーがずらりと並んでいた。
とっさに銃を構えて立ち上がろうとする。
「貴様ら!!ここを一体どこだと思――――――――――」
『黙れええええええええええええええええええええええっっ!!!!!』
――――------それはまるで……突風が吹いたかのように錯覚させるほどの声量。
一瞬にして、その場の全員を黙らせた―――――ルカの叫び。
「……ほほう。こいつは大したものだ。ここまでたどり着くだけのことはある。」
ずっしりと重い声が、部屋の奥から響いた。
部屋の奥で胡坐をかいて座る、ガタイのいい男。
「!……あんたが、組長?」
「ああ、そうだ。『黒猫組』組長―――――黒山兵助だ。とりあえずここまで来たことは誉めてやろう。……だが!」
ゆっくりと立ち上がる黒山。その体躯は壁のように、そしてその威圧感は一回の人間とは思えぬものを放っていた。
あまりの強烈な威圧感に、ルカも思わずたじろいでいた。
(なんて……大きな“気”……!!……でも、この感じ……どこかで……?)
「貴様らでは俺には勝てねえよ……どれほど強い力を持っていたとしてもな……!!」
その時である。
『はぁっ!!』
突如、ルカたちの後ろを碧い焔が走り、ロシアンが飛び出してきた。
『ルカ!!雑魚は全員眠らせてきたぞ!!』
「ロシアンちゃん!」
そのルカの声を聴いた瞬間、黒山の顔が驚愕に包まれた。
「!!ろ……ロシアンだと……!!?」
『……む?なんだ?吾輩には人間の知り合いなんぞいないぞ?』
一歩前に出て、黒山をにらみつけるロシアン。
しかしその眼には驚かずに……小さく笑い出した。
「……くっくっく……くくく……成程成程……!!お前らがここまで来れたのも、その方の御蔭というわけか!!道理でな……!!」
「“その方”?ねぇ、あんたいったい――――――――――」
ミクがそう聞こうとした瞬間――――――――――
『ヌゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!』
凄まじい咆哮と共に、黒山の体から紅い焔が噴き出した!!突然のことにルカが愕然とする。
「な……何!?自爆かなんか!?」
『……いや……違う!!』
だがそれ以上に愕然としていたのはロシアンだった。
『これは……猫又の焔だ!!』
焔の中で、黒山の体が小さく縮んでいく。
黒いスーツはそのまま漆黒の体毛になっていく。
地面に両手をつき、その両手は前足と成る。
2本の長い尾が伸び、焔がまとわりつく。
そして―――――赤い瞳が輝いた瞬間、焔が一気に爆裂し四散する。
そこにいたのは―――――一頭の黒猫。それも、2本の尻尾を揺らす、漆黒の猫又だ。
その紅い瞳でロシアンをすっと見つめ、そして子供のように嗤った。
『久しぶりっすねぇ!!ロシアンの『兄貴』!!』
その言葉を聞いた瞬間。ロシアンの顔が驚愕に包まれた。
『ばっ……馬鹿な……お前……まさか…………!!』
『く……クロスケ……か!!?』
ボーカロイド達の慰安旅行(11)~決戦!!『黒猫組』~
アジトに乗り込みだーっ!!
こんにちはTurndogです。
生身の人間相手に容赦ないですこの人たち。
特にめーちゃん!メイコバーストそこで撃っちゃうんですか。
いくらパワーセーブしたって、メイコバーストはメイコバースト。
最近ルカさんやミクの陰に隠れ始めてますが、ヴォカロ町の迫撃砲、未だ健在。
というか前よりパワー上がってんじゃないのこの人!?wwww音波も腕力も。
そして黒猫組大将―――――この本性・黒猫又とロシアンの関係とは!?
コメント3
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ご意見・ご感想
イズミ草
ご意見・ご感想
さすがっすねえ、ターンドッグさんw
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まさかの!?
ロシアンちゃん知り合いだった系!?
ええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!???????
2013/04/20 08:57:22
Turndog~ターンドッグ~
私からバトルをとったらもはやなんも残らんですからwwwww
世界は案外、広いようで狭いもので。
想像フォレスト風に言ってみたww(どこが
2013/04/20 11:07:42
しるる
ご意見・ご感想
めーちゃん……猫に「怪力」っていわれているよ?
いいの?しめなくていいの?めーちゃん、女の子だよ?いいの?
なんか……敵のボスが慣れ慣れしく話しかけてきたよ?
リンレン……猫助がふえたよ?
2013/04/13 17:51:06
Turndog~ターンドッグ~
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2013/04/13 18:08:23
和壬
ご意見・ご感想
めーちゃん腕力ヤバッ!
まぢヤバッ!!!
まさか…黒山兵助、ロシアンの仲間…なのかァ!?
気になるよ…
2013/04/13 12:04:39
Turndog~ターンドッグ~
めーちゃんは馬鹿力でいいと思うんだ!wwww
今日上げますよ!!その秘密を!!
2013/04/13 12:29:12