白い花が咲いていた。
それに気づいたのは、奇しくも雨宿りの最中であった。
ひっそりと、可愛らしい小さな。
むき出しになった床の下の土からひょこりと顔を出したそれは、吹き込んできた露を乗せてきらめかせている。
そこで初めて、雨が有害なそれではなくなったことに気がついた。
ゆっくりと座り込んで見つめて、KAITOはふいに身体が重い事に気がついた。
ぺたり、と地べたに座り込む。
そよ、と風が吹いてきてくすんだ青い髪を揺らすのが心地よい。
重いというよりは、動かしにくい身体が億劫で、そのまま仰向けに寝転ぶ。
空が見えた。
屋根はお情け程度に残っているだけで、その隙間や崩れた壁から見えるのだ。
綺麗な、青。
昔見たことのあるそれとは違う。あぁ、これが本当の空か。
重い腕を伸ばして空へと翳す。袖がボロボロな上、ところどころむき出しになっている線が鈍く光を反射する。
「青いなぁ」
ぼんやりしていると、微かに己を呼ぶ声が聞こえた気がして、KAITOは眼だけを動かして辺りを見回した。
どこかで見た風景だ。いつだろう。あの寂れた教会ではない。妙に懐かしい風景。
あぁ、どこであっただろう――
思考回路もどうやら鈍り始めたらしい。
それにしても、己は間違った認識をしていた。
今、彼女と同じ立場に置かれてKAITOは苦笑した。
彼女は無になったのではない。あそこで待っているのだ。主の帰りを。ずっとずっと、機械のまま。
だって僕らは、どうなったって主の願いを叶えずにはいられないのだから。
願い、叶えたことになるのだろうか。見届けたうちに入るだろうか?
もう、動くことは出来ないし、散々探していたくせに自分はすぐに変化に気づくことが出来なかった。
大分前から自分が壊れ始めていたのだろう、と人事のように考えて、ふいにまだ“願い”が残っていたことを思い出したKAITOは、口を開いた。
歌で教えろと言ったから。
だから、教えてあげる。
ちゃんと聞いてくださいね。
白い花が咲いたんですよ。最初に見つけた変化なんです。
空も青くなりました。でも、なんだかもう識別できそうにありまセン。
カんじる風が気持ちヨいですよ。あの淀んダ空気とは大違イです。
潮風を感じる場所まで行けば、きっトきっと、あなたが映像で見たというあの美しい海が広がっているのでしょウ。
だから、アナタも僕も見れナかった海の美シさを、今度ふたリデ見に行キましョうヨ
ねぇマスター
to be continued...
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