ミクルカ小説です 百合注意><
Side ミク
私の朝は、だいすきなルカに起こされることから始まる。早起きなルカにお願いして起こしに来てもらっているのだ。だから、毎日とっても幸せな気分で始まる。
『ミクちゃん……朝よ。起きなさい』
『ん~、もうちょっと……』
『ほぉら。起きて』
本当は起きているのに、私は絶対一度目の呼びかけでは起きない。一度目で起きないと、ルカは私の身体をゆさゆさ揺すってくれるから。
『起きてって言ってるでしょう?…もう。本当、朝は弱いのね』
違うよって言いたい。でももし言ったら、きっと次ぎからは一度しか呼んでくれない。
『んん…ルカぁ?』
『はいはい。なぁに?』
寝ぼけた風を装って、私はルカの名前を呼ぶ。知ってる。そっけない口調だけど、ルカ本当はとっても優しい顔をするの。朝、私の意識が混濁している今だけ。無条件で甘やかしてくれるという錯覚さえ引き起こしそうな、そんな顔で。貴女は私に答える。
『だいすきぃ』
『ありがと。私もよ』
『うん……もっと、私のことすきになって………』
『くす…はいはい』
幸せだー。こんなに幸せでいいのかなぁー。
私はもう少しだけ粘って、それからしぶしぶ起きあがる。今日も頑張ってルカを落とすぞ!
『とりあえず顔洗ってらっしゃい』
『はーい』
とりあえず今後の議題だけど。どうやってルカにすきだと言わせるか。今でも少しはすきなんだし、きっと少し焦らせば落ちるはず!ん?もしかしてあれ?ツンデレ。
『……………………そうか。冷たくしれみればいいんだ!』
『ん?なんの話かしら』
『わ、ルカいたんだ………』
『……………さっきからいたわよ………』
ため息。あー呆れさせてしまった。うーん、どうしようかなぁ。でも計画は聞かれているし、このまま有言実行しても意味はないだろうな。じゃぁ新しい作戦考えなきゃ。
『…色仕掛けとか?』
ルカの背中をぼんやりみながら思いを馳せる。うっふんあっはん。うーん悪くない。でも問題は私がネコになるかタチになるか、だよね。というかそもそも私たちセックスしても意味ないんだった。……………ちょっと虚しい……。いや!そんな事言えない!だってその虚しいことをルカにさせたいんだもん。ん?なんか言ってる意味違うな。
『うーん……そういえばセックスしたいけど無意味みたいなこと言ってた気がするし、ルカって実はエッチな人なのかな?』
『違うわよ!!!』
『わっ!?』
あああ、ルカ居たんだっけ……。なんだか顔真っ赤ですけど……。
『なんかぶつぶつ言ってると思ったら、急に変なこと言って。もう!』
『聞いてたなら早いけど、ルカって性欲強いひと?』
『人聞きの悪いこと言わないで!』
ルカは拗ねたというか心底恥ずかしいようで、顔を真っ赤にしながら部屋の隅っこをみている。そうだ、ここはルカの部屋で、私はルカのベッドを占領してルカの枕を抱き締めながら寝てるんだった。ぼんやりしてた。
『ねぇルカー?』
『……………知らない』
あ、拗ねた。
『拗ねたルカも可愛いなぁ………』
『ミクちゃん、考えてること全部漏れてるわよ』
『ふふ。知ってる』
あ、今度は怒っちゃった。でも可愛い。食べちゃいたい。
ルカが怒ってしまったので、私はルカの部屋に一人取り残されてしまった。リビングにでも行ったんだと思うけど……あとで見に行こう。とりあえず今はルカのこのベッドから降りたくないし。
『でも………なんでこんなにすきなんだろう………』
ルカの枕を抱き締めているだけで、私はこんなに幸せな気分になれる。もし人間なら、匂いとかも分かったのかな、なんて自重する。
『人間…………』
人間ってずるい。なんだかすごくうらやましい。とても素敵な歌を作れるし、すきな人と触れあえる。味覚だってもっと細かいだろうし、匂いだって分かる。太陽っていうのの暖かさだって分かる。ああ、そんな素敵なことをたくさんできるから、人間は素敵な歌を作れるのか。
ソフトでしかない私が、制作者の人間に嫉妬するなんて論外だと思う。でも、この感情だって人間が作ったものなんだ。それは、どういうことだろう。
『ルカぁ……………せつないよぅ…………』
もしこの感情が、もともとプログラムされたものだったらどうしよう。ルカに会ったら「すき」と強制的に言わせるように作られていたら?ルカの一挙一動に喜怒哀楽を感じるように、作られていたら。
『………分かんないけど、私が不安になったら、だめだよね』
ルカはもっと不安だから、私を受け入れられないんだもん。私がリードして、そんな不安を解消させてあげないといけないんだ。だから、
『ルカに、会いに行こう』
プログラムでもなんでもいい。ルカに会えて幸せだから。なんて、心から言えたら、きっとルカも安心するんだろうな。
部屋の主に会いに、私はベッドを降りた。
『べ、べつにルカが心配だったからってわけじゃないんだからね!』
『…………ようやく追いかけてきたと思ったら唐突に何言ってるのよ、貴女』
『あれ、すべった?』
リビングにはルカとリンちゃんレン君、そしてメイコ姉がいた。私とルカの遣り取りに苦笑を漏らす様子から、きっとルカが喋っちゃったんだろうな。いいけど。
『あ、いいなぁそれ。ルカ一口ちょーだい』
私は答えを待たずにルカが両手で持っていたマグカップをひょいと取り上げ、口に含む。それは酷く甘かったが、後味は悪くない。悪いと感じたことはないけれど。ルカは「はいはいご勝手に」なんて肩をすくめていた。
『甘………ルカ甘党だっけ?あ、私が飲むこと予想してたな』
『ちがっ………ただ砂糖入れすぎただけよ』
リンちゃんがルカの隣でくすくす笑っている。それだけで分かっちゃう。やっぱりそっぽを向いてしまうルカの両肩に両腕を乗せ、頭に顎をおいて抱き締めた。抵抗しないのは私の調教のたまものだと思ってくれて構わない。
『正直じゃないなぁ~。ね、リンちゃん』
『ね~、ルカ姉って結構ツンデレだよね』
『ツン……!?』
ルカが動揺している。でも確かに。やっぱ本物には敵わないや。リンちゃんはそこまで甘くないだろうミルクココアを飲みながらニヤニヤした。やれやれ、なんて顔でレン君とメイコ姉が顔を見合わせている。ちなみに、というか多分、メイコ姉はココアなんて飲んでいないと思う。
『じゃあ私がルカ好みのココア入れてあげるね。ちょい待ってて』
『あ、別にいらな…』
『はいはい。じゃコーヒーねー』
マグカップを机においてするりとルカの身体を離す。そのままキッチンへ向かう背中にメイコ姉が「ミクあたしにもお茶いれて~」と投げかけた。いつからお酒を飲んでいたのか結構気になるけれど、とりあえずお湯を沸かすことにした。ポット欲しいなぁ。
ルカはちょっとだけまろやかなコーヒー。メイコ姉には、渋いお茶を。
私はこのままでいいと、どこかで思っていた。
安穏とした幸せな日々がこのままずっと続いていくのだと、信じて疑ったことは一度もない。
私はルカがすき。
私は、いつのまにか、ルカをあいしていた。
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