バイタルサイン
神様が世界から消えた日、
爆ぜて色が絶えた僕の視界
凍結、悴む手が震えていた
秤をなぞる午前三時
嗚咽の首を強く締めて、
溢れ出た憎悪が胸を灼く
焼失、こんな心が醜くて、
愚図な僕でも救えるのかな
声が、顔が、記憶を揺らす
それが消える世界などいらない
夢を託すことを許してほしい
また、巡り逢いましょう
そっと、心を受け渡す
目が覚めたら悲しむかな
それとも怒るかな
そんな姿が目に浮かび、
そのたびに訣別が辛くなる
意識が白へと溶けていく気がして、
願わくば幸せであれ、と零す
心を呑んだ彼女は問う
「この身体が貴方を奪ったの?」
泣き腫らした目で重ねて問う
「貴方がいない世界に意味はあるの?」
暗い部屋、独りで問いを続けてる
まるであの日の僕のようだ
今さら罪深さに気づく
その痛みを誰よりずっと
知っていたはずなのに
同じ痛みを背負わせる
浅はかで自惚れた僕の罪
心の古巣が軋んで痛んだ
叶うなら一抹の声、届けたい
明け方の部屋、
忍ばせたメスを手に
首筋へと宛てがった彼女
伸ばした手はすり抜けて、
ただ叫ぶ
帳揺れ、風が吹き、
金物の鈍い音が響く
これが最期の胸懐だ
伝えるよ
もう身体は無いけれど、
この想いはお前の心
そこに置いてくから
どうか、共に生きてくれ、と
囁いたその顔は淡く、穏やかだった
朝日が射す部屋で
流れ落ちた涙の意味を
ずっと、抱き締めている
一人、彼女の胸の奥、
重なった心拍はゆれている
「貴方が私に理由を与えた」
一言を零して、
微笑む彼女のほのかな姿は
昔日の彼によく似ていた
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一二三
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