「クオーー」



間延びした声が静かなリビングに響く。
……返事は帰ってこない。


「クーーオーーー」


更に間延びする声。だが、やはりその声は寂しく響くだけで返答はない。



「クオってばー、暇ー」


やはり返答は無い。
そんなクオに、ミクはぷうっと頬を膨らませてから、ハァァっとため息をつく。


「何なのよぅ…そんなにその本楽しい?」



そう、ミクオはさっきから「図書○戦争」という本を読み続けていて、微動だにしない。
ミクはずっとクオの名前を呼び続けているのに完全にスルーだ。

最初はミクも雑誌を読んでいたのだが、読み終わってしまって暇なのでクオにちょっかいをかけようとしたら、この状態。
だが、暇すぎるミクはこんな事では負けない。



「…クオさーん?応答ありませんけどー?」


…返答は無い。
ミクはぐぅ、と呟きながらそれでもなんとか負けずに続ける。


「……私、仮にもクオの彼女なんだけど」


髪すら揺らす気配のないミクオ。
うぅ…と唸るミクは、一向に構ってくれる気配を見せないミクオに既に涙目だ。


「ねぇ…くおぉ…」


甘めに呼んでみたが返答は無い。
そんな冷たいミクオに、ついにミクがキレた。


「クオのバカバカーー!折角一緒にいるのに、こんなに別行動なんて、寂しいでしょ!」







浅葱色に輝く短髪がさらりと揺れた。




「へぇ…寂しかったんだ?」

「っ!!」



しまった、と言う顔をしてから真っ赤になるミク。
そして、赤くなった顔を隠すように俯き、小さく「そんな事言うつもりなかったのに…」と呟いた。

その言葉にくくっと意地悪く、でも楽しそうに笑うミクオ。

そんなミクオに反発するようにバッと顔を上げ、言い訳のようなものを口にするミク。


「何よぅっ!さっきまで返事してくれなかった癖にっ!」


ちょっとキツめの言葉も、その赤い顔で言うと効果はない。
更に楽しそうに笑われてミクは頬を再度膨らます。

ミクオが笑いを噛み殺してから答えた。


「いや、だってさぁ…、ミク面白いんだもん。一人で百面相したりとか、甘い声で強請ったりとか」

「うぐ…それは…」


耳まで赤くなるミク。そんなミクをお構いなしにミクオは続ける。


「あれは本当可愛かったなぁー…ね、あれ誘ってた?」

「ちっ、ちち違う!!!!」


「あぁ、もう、クオのばかばかばか…」とか呟くミクの表情は心なしか嬉しそうだ。やはり、ミクオと会話が出来るのが嬉しいのだろう。


「まぁまぁ。そんな拗ねるなって」


「ばか」を連呼し続けるミクに、苦笑しながら声をかけるミクオ。


「拗ねてませーん。」

「いや、それ絶対拗ねてるだろ」

「…拗ねてないしぃー」

「……。」


すっかり「私拗ねてるし」モードに入ったミクに、ちょいちょい、と手招きをするミクオ。?マークを出しつつもミクはミクオに近づく。

そのミクの顔をぐいっと適度な力で引き寄せ、耳元で囁く。





「俺、ミクに声かけられてから、本1ページも進んでない事、気づいてた?」


「え、」


目を見開くミク。
内容をいまいち理解していない様子で口をパクパクと動かす。


「えと、それってその……、」


ミクはもごもごと呟きながら、既ソファーから立ちあがったミクオを見上げる。


「…そ、そーゆうこと、ですかね…?」

「ん。そーゆうこと」


再び真っ赤に染まったミクはそれを隠すかのように、ぎゅうっとミクオに抱きついた。
突然の事に驚きながらも、嬉しそうに抱き返すミクオ。




―――二人の時間は、これから。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初音家の休日

短編です。
いつもとは違う、第三者目線で書いてみて見事に玉砕…(・ω;`)
書きにくかった…;;


元々「クオミクが足りない!」とか思って書いたのですが…;
…何故だ。萌えない←

誰か!クオミク不足の私にクオミクを恵んd(((殴

閲覧数:617

投稿日:2011/10/30 15:03:25

文字数:1,530文字

カテゴリ:小説

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