女は花の匂いに誘われて、花咲く道を奥へ奥へと進む。

「あの子がいたら……」


一緒にこの森を歩いて
一緒に花を摘んで
一緒に笑って


――それは、とても幸せな夢。


けれどあの子はもう、ここにはいない。


―― コ コ ニ ハ モ ウ イ ナ イ ――
 

「……っ」

込み上げる悲しみに堪え切れず、女は眼を閉じた。
荒い自分の呼吸音を聞きながら、落ち着くのを待つ。

女が再び眼を開けた頃にはもうすでに空では月が輝き始めていた。

「……帰らなくちゃ」

女の呟かれた声にまぎれて、小さな音が聞こえてきた。
それは、なんの音だったのだろうか。
女は考えるよりも早く、音のするほうへ足を運んでいた。

たどり着いたのは大きな木の下。
その根元には、

「ああ、なんてこと。……これは、きっと神様からの贈りものだわ」

女がずっと願い、望んだモノがそこにあった。


***

「いけない、もうこんなに暗くなって……あの子たち、泣いてないといいけど……」

赤い服を着た女は持っていた籠に花を詰め込み、元来た道を急ぎ足で進んでいた。
花に夢中になっていたせいで気づかないうちに、ずいぶん離れたところまで行ってしまったようだ。
遠目から、子供たちの安否を確認しようと女は少しつま先立ちで進んでいると、愛しい我が子の傍に黒い影が見えた。

「大変!」

慌てていた女にはその黒い影が「何」かはわからなかったが、悪い予感だけが彼女の足を急がせた。


どうしよう。
どうしよう。
私が目を離したせいだわ……。
早く。
ハヤク。
あの子たちを守らなきゃ。
あれは、……熊?
急がないと、早く、助けに行かないと。


黒い影は、女の子供を抱きかかえた。

「あ、待ちなさい! その子たちは私のっ……」

女の声が聞き終えるのを待たず、黒い影は森の中へ中へと消えていく。

「待って! 返して! 私の大切な、子供なの!」

黒い影は女の言葉を聞かず、ただひたすらに闇の中を走っていく。
女は黒い影を見失わないように、森の奥へ奥へと入っていった。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

【勝手に自己解釈】moonlit bear~1~

悪ノPさんの「moonlit bear」を仕事(作業)中に自己解釈したものです。

ミクのターン

メイコのターン

で、書いているのですが、どちらも名前出さないように今んとこ意識しているので、わかりづらかったら申し訳ない。
ちなみにミクが聞いた音は、「うー」とか「あー」とかで(お母さんを呼んでいるのか兄弟で話していたのかはわからないが)赤ん坊の声です。

勝手に思うがまま書いているので、問題あったらすべて消します。
何かあったらお教えくださいませ。

閲覧数:191

投稿日:2010/06/19 01:32:46

文字数:875文字

カテゴリ:小説

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