加速。加速。―――――加速。
スピードを上げながらぐんぐん上昇していくルカ達四人。
雲を突き抜け、天空高くまで上り詰めると―――――
『……!!』
ルカの目の前には巨大な空中戦艦―――――『破壊者』。
戦艦の甲板から小さく突き出た艦橋の中。真ん中に座っている、田山と一瞬目があった。
瞬時に艦橋のガラスに防御用シャッターが下ろされる。
それとほぼ同時に――――――――――主砲が稼働した。
『!! ルカ姉気を付けて!!』
ミクの叫びと共に、主砲から砲弾が撃ち出される。当たればお陀仏確実の、バイオメタル融解弾だ。
だがルカは避けようとするそぶりも見せずに――――すっと手を前にかざして、小さく叫んだ。
『adagissimo!!』
放射状に広がる音波。その音波領域の中に砲弾が突っ込んだ瞬間―――――急激にその弾速が遅くなった。
『アダージッシモ(非常に遅く)』の名の通り―――――ルカ達の反応速度なら易々撃ち落とせるレベルにまで減速させられたのだ。
『そのまま……返れっ!!!』
更に大きく腕を振るルカ。すると今度は、殆ど勢いを殺されたに等しい砲弾が、元のスピードを取り戻して『逆方向』に飛んでいく。
そのまま船の甲板を突き破る―――――と思いきや、寸前に何かに弾かれて砕け散った。
『! ……そうだった、バリアが復活してるんだったね』
リンが口惜しそうに呟くが、ミクは余裕綽々と言った感じで『Solid』と『Light』を起動する。
『だから何よ! この程度、真の力に目覚めた私の音波で……『ソニック・ブレード』っ!!』
鋭く振りぬかれた腕から、金色の光を纏った灰緑色の刃が放たれる。
目にも止まらぬスピードで飛んでゆく刃。まるでバターでも切り裂くかのように、あっさりとバリアを切り裂いた。
……が、しかし。バリアは何事もなかったかのように瞬時に再生。修復能力も非常に高いようだ。
『むむ……これは……どうしたものか……』
ミクが唸るその隣で、ルカはすっと鞭を一本取り出した。
『? ルカさん?』
『再生力が高い……となれば、傷口を何らかの力で押さえれば行けるわよね、理論上は』
『そうだけど……それを一体どうやって?』
『ま、見ててなさい』
ひゅん、と鞭を揺らして、そして勢い良く振りかぶる。
そしてそれを、刀でも持つかのように両手で握りしめた。
『行くわよー……『龍念鞭・斬』っ!!!』
叫びながら振り下ろされた鞭は一瞬で真っ直ぐに伸び、そして平たく鋭く形を変えていく。
出来上がったそれはまさしく刀―――――巨大な巨大な日本刀の様。
その鋭い刀は、これまたあっさりとバリアを切り裂いた。
……しかし先程の『ソニック・ブレード』の時とは様子が違う。
『……あ!?』
『再生……しない!?』
切り裂かれたバリアは、元通り再生することもなく動きを止めていた。。鞭を通して伝えられた念動音波が、断面の再生を抑え込んでいたのだ。
『今よ!! バリア内部に侵入!!』
『う、うん!!』
一気に加速し、バリアの切り裂かれた隙間からバリア内へと突っ込む。
すると今度は船の外壁の一部が開き、数機の戦闘機が飛び出してきた。
『! これは……無人戦闘機!!』
『なら遠慮なく破壊しちゃっていいってことだよね!!?』
『Light』でさらに加速したミクが飛び出し、一瞬にして全戦闘機のど真ん中をぶち抜いた。
すぐに敵わないと悟ったか、後続は現れずハッチが閉じていく。他に入り口はなさそうだ―――――侵入するならばそこしかない。
『ミク!! そこぶっ壊して!!』
『了解っ!! 『Solid』!!』
キィン、と音が響き、閉じられかけていたハッチの扉がバラバラに切り裂かれた。
ぱっくりと口を開けたハッチに、勢いよく飛び込む4人。
急ブレーキをかけたそこには――――-十数機の無人戦闘機。
「戦闘機のドック……ってとこかしら?」
「たぶんそうだな…………ん?」
レンが何かに気付き、無言ですっと指差した。
そこはドックの出入り口と思しきゲート。そこから、2機の小さなロボットが現れた。ルカ達とは似ても似つかぬ、如何にもロボットと言った風貌。
だがその両手には、エネルギー銃が装備されていた。
ルカ達の目の前まで来たロボット。ルカの姿を視認した瞬間―――――目の光の色が緑から紅へと変わった。
《侵入者発見、侵入者発見。総員、直チニ戦闘モードヘト移行、排除セヨ》
すると今度はゲートのみならず、天井や壁など至る所の仕掛け扉が開き、同型のロボットが現れた。皆目を爛々と紅く輝かせている。
「ロボット兵……か……!」
「こんなのばっかり来るってことは、もしかするとこの船、人間はあいつらしかいないのかもね……」
「上等! その方が遠慮なく暴れられるわ!!」
リンがどこか楽しげに拳を鳴らす。
しかし―――――その拳が動く前に、ロボット兵たちの銃が一斉に火を噴いた。
「わ!?」
『皆後ろに!! 『Vivid・Shield』!!』
薄紫色の巨大な盾がミクの眼前に出現し、敵のエネルギー弾を弾く。
片手でその盾を支えながら、リンに向かってにっこり。
『遠慮なくなんだって?』
「だー!! これから暴れるのよっ、これからぁー!!」
『はいはいわかったわかった。……ルカ姉、どうする?』
『どうもこうもないわ。片っ端から叩きのめす。ミク、援護なさいっ……『pesante』!!』
ひゅん、と振り下ろされたルカの腕に連動するかのように、ロボット兵たちがぐしゃりと潰れ、次々と爆発していく。
しかしロボット兵が潰れる度に、ゲートから壁から、新たなロボット兵が現れていた。キリがない。
「……ジリ貧だぜ、ルカさん」
『そうね……となれば』
『……うん!』
『強行突破あるのみっ!!!』
その言葉と同時に『Vivid・Shield』が解かれ、ミクとルカが飛び出した。
そして――――――――――
『leggieroッ!!』
『『Light』!!』
狭い空間を、金と桃色の光が弾けるように飛び交った。目にも止まらぬ速さでロボット兵が破壊され、沈黙する。
全ての敵を排除した二人。ゲート前に降り立って―――――
『『邪魔よっ!!!!』』
再び現れた援軍のロボット兵に向かって、二人同時に拳骨を叩き込んだ。直接叩かれたロボット兵はもちろん、凄まじい拳圧は後方のロボット兵も破壊していく。
「ほら!! 早く来なさい!!」
「早く早くー!!」
ぼーぜんとしているリンレンに振り向いて手招きする二人。そんな二人に対し、リンは慌てながら、レンは慌てながらついていった。
前後左右上下、全方向から飛び出してくるロボット兵を破壊しながら先に進む4人。
ルートはドックからずっと続く一本道。前後から挟み撃ちにしやすい構造だ。
加えていつどこでもロボット兵が出撃できるようになっているらしい。上からも下からも横からも、通路の壁をぶち抜いてロボット兵が飛び出してくる。
正に侵入者を確実に始末するためだけに作られた、機能性重視の絶対的構造だ。
勿論それは、『ロボット兵を一撃で破壊できる』『全体攻撃』ができる者が『複数いる』状況下に置いては全くの無意味なのだが。
「ったく、よわっちい癖に数ばっかいてたまんないわね……!!」
「全くだぜ!! 力がない分は数でカバーってか!?」
「と言ってもこの程度ならよゆーよねルカ姉―!!」
「ホントねぇ……鍛え方が足りないんじゃないかしら」
「ただのロボットに対して鍛え方ってなんぞ!?」
ミクが前方の敵を叩き落とし、リンとレンが後方の敵を殴り飛ばす。そしてルカが、上下左右から奇襲するロボット兵に『サイコ・サウンド』を浴びせる。
一糸乱れぬチームワークで敵を寄せ付けないまま、4人はようやく広い場所に出た。
直径10m程度のドーム状の部屋。そこにあったのは少し広めのテーブルと散らかった資料、そして壁に設置された大型の液晶スクリーン。どうやら会議室のような場所であるようだ。
「! 見て、ルカ姉!」
ミクが指さした先では、今し方ルカ達が入り込んできた入り口のところでロボット兵が立ち往生していた。どうやらこの部屋には入り込まないようプログラミングされているようだ。
「……ミク、リン、レン」
「何?」
「ここで二手に分かれましょう」
「二手に?」
小さくうなずいて、周囲を見回した。
この部屋は船の通路の中心部でもあるらしい―――あちらこちらに出入り口が広がっている。
「リンとレンは、『量産型』の倉庫を探し出して破壊して頂戴。この船の内部構造は私が『心透視』で読み取ってあなたたちに転送する。……私とミクは」
一瞬ミクに目をやって、そしてパン、と拳を手のひらに叩き付けた。
『この船の動力部をぶっ潰す!!』
「ど……動力部!?」
「そう! 動力部を破壊して、この船の活動を止めてやる!! そうすれば私の『サイコ・サウンド』で地上まで引きずり下ろすことができるはず……!!」
「船ごと奴等を機能停止させる……ってことか……単純明快、だが結構きついぜ、ルカさん?」
「その程度できなくて町を守れるかっての」
「……ちげえねえや」
苦笑するレンと、つられて笑うリン。そしてすぐに真剣な表情に戻って、ルカを見つめる。
「……了解! 俺たちであの人形たちたたっ壊してくる!!」
「OK……Good luck!!」
拳と拳を軽く合わせたルカとレン。
そして――――――――――
「行くぜ、リン!!」
「うん!!!」
「ミク、やるわよ!!」
「りょーぅかいっ!!」
床を力強く蹴った4人は、部屋を飛び出し、各々の標的目指して走り出したのだった。
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