4.許さないよ
今まで自分の声しかなかった部屋に響いた小さな声。
その声に驚き、シンデレラは涙をぬぐい、視界を取り戻して、小さな声の主を見た。
ベットに横たわっている少女の目は、はっきりと開き、こちらを見つめていた。
「クミ……。クミ……っ」
突然の驚きとうれしさで、シンデレラは少女の名を呼ぶことしか出来ないでいる。
少女はそんな彼女を見つめながら、優しい口調で語りかけた。
「泣かないで……、ほら、私も生きてるよ? 私の命もシンデレラが助けてくれたんだよ?
シンデレラが命がけで私を守ってくれた。だから、私も自分の意思で君を守りたかった。
犠牲なんかじゃない、私たちはお互いに命を救い合った。だからチャラだよ」
少女は歯を見せて、元気いっぱい明るく笑ってみせた。
「でも、でも、私は……、私が行きたいなんて願ったから。やっぱり許されないよ……」
シンデレラは、少女の笑顔を直視できずにいる。
「許さない!」
突然、クミは大きな声で怒鳴った。シンデレラは驚き、少女の顔を見た。
「ほんと、許さないよ。いつまでもそんな暗い顔して、めそめそ、じめじめ……
過ぎた事は悩まない。いつもの明るいシンデレラに戻らないと本当に怒るよ?」
しばらく、クミとシンデレラはお互いの顔を見つめたまま。
クミはほほを膨らませて、シンデレラは口をあんぐりと開けたまま。
やがて、ほぼ同時に二人の表情は緩み出し、大きな声で笑い出した。
久方ぶりに部屋は、笑い声に包まれていた。
「ほら、やっぱりシンデレラは、笑顔の方が似合ってるよ。
さっきまでの顔、気持ち悪くてしょうがなかったよ」
笑ったまま、シンデレラの顔を指差しながらクミが言った。
「なんだよ、人がせっかく心配してやってたのに。このやろ~」
シンデレラも笑顔のまま、反論してみた。
「私たち、生きてるんだよ? これからも一緒にいられるんだよ?」
クミは、嬉しそうにシンデレラに話す。
「そうだよね、これから目いっぱい幸せになる権利くらい、私たちにもあるよね」
シンデレラも、嬉しそうにクミに話す。
「お花畑でいっぱいにするんでしょ? パン屋さん始めるんでしょ?」
少女は、にやにやしながらシンデレラに問いかけた。
「え? なんだよ、聞いてたのかよ? あの時の話……」
シンデレラは、ほほを紅潮させた。
「で? どうするんですか? シンデレラさん?」
まるでマイクを突き出すかのような仕草をしながら、再びたずねた。
ぽりぽりと照れくさそうに、ほほを掻きながら、
「まあ、聞かれてたんならしょうがないな。やってみるか、お花畑もパン屋も。
夢は広がるばかりだな。それもこれも、生きてればこそだな」
コホンという咳払いをしたあと、クミが少し大人ぶった口調でシンデレラに言った。
「じゃあ、私と約束して。これからは何があっても、ずっと笑顔でいてくれるって」
シンデレラは、しばらくクミの顔を見つめた後、少し微笑んで答えた。
「ああ、約束する。何があっても私は笑顔だ。にこにこだ」
歯を見せて、笑って見せた。
「ほんと……約束だからね……。私はいつでも私のままだから、どういう風になっても……。
だから、シンデレラもいつまでも元気で明るいままでいてね」
静かに念を押すように話しかけた。
「クミ?」
その様子に少し違和感を覚えたシンデレラは、少女の姿をよく眺めてみた。
すると、少女の手にきれいなネックレスが握られているのが見てとれた。
「私はいつでもシンデレラのこと、大好きだよ。たとえ、表現できなくても」
そう語り終わると、少女は自らその握っていたネックレスを首にかけた。
すると、みるみる少女の笑顔は消えていき、目の輝きも失われていった。
「クミ? それって『テレパス君2号』じゃないか……。
なんだよ……結局そうするしかないってのかよ?」
首にかけたネックレスが、メルト症候群の症状を感情を制限することで、抑制する装置、
テレパス君2号であることに気付いたシンデレラは、再びその表情を曇らせた。
やがて融解していくしかないメルト症候群の患者を救うには、自らが開発したこの装置を
使うほかないことは、彼女自身一番よくわかっていた。
しかし、目覚めてから普通に話しかけてくれるクミの様子を見て、
このままかつての自分の様に平気なままいけるのではないかと、どこかで期待していた。
しかし、現実はトラボルタが既に少女に装着していた装置が、
何かのはずみで外れてしまっただけの事だった。
しかし、本来装置が外れてしまえば、その反作用で症状が一気に悪化し、
融解することもあり、装置が外れたクミが普通に話せたことも実は奇跡であったといえる。
曇った表情のままのシンデレラは、クミが自分をじっと見つめ続けていることに気付いた。
その吸い込まれそうな碧色の瞳は、無言のままこちらを見ている、
はっと、シンデレラはクミの真意に気付いた。
「そうだよね、ごめん……。どんな風になってもクミはクミ。
ほんのさっき約束したばっかりなのにね。いつでもにこにこ、笑顔で元気に」
そう言うと、シンデレラは満面の笑みをクミに見せてあげた。
その笑顔を見たクミは、ゆっくりと小さくうなずいた。
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