桜花の宴が内裏であって
帝の左に東宮(こうたいし)さま
帝の右には中宮(きさき)即ち
藤壺さまのお席があった
東宮(こうたいし)さまの母の女御は
おもしろくなくお思いになる
右大臣さまの姫君で
帝の最初の女御となって
帝の最初の皇子(みこ)を産み
その子は東宮(こうたいし)となるが
自身は中宮(きさき)になれずに終わった
弘徽殿住まいの女御さま

弘徽殿さまは藤壺さまも
源氏の君もお嫌いだけれど
東宮(こうたいし)さまは そうではなくて
紅葉の賀での源氏の舞を
また見たいものとご所望なさり
一さしだけと源氏は舞った
左大臣さまの姫君は
源氏の君の奥方なのだが
仲睦まじくはないようで
源氏はそれほど通われぬ
左大臣さまは恨めしかろうが
見事な舞には涙する




酔いのまにまに源氏の君は
その夜藤壺を訪れてみる
忍び入る隙を探したけれど
まったくそんな緩みなどない
仕方がないので引き返す折
通りかかったのは弘徽殿よ
帝のおそばに上がられて
御殿のあるじはおいでにならず
女房(おつき)もそれほどおらぬよう
源氏は勝手に入り込み
戸締まりもせずに無用心だなと
そのくせ内心批判する

そこへ誰かが近づく気配
「朧月夜に似るものぞなき」と
歌を口ずさむ声が聞こえた
嬉しくなって袖をつかめば
当然怯えた若い女は
源氏と知って少し落ち着く
一夜を過ごして朝が来る
名前を問うても答えはなくて
周りがだんだん起きてきて
とうとう別れてそこを出た
見つけてみせると約束なさって
扇を形見に取り替えて




弘徽殿さまの妹だろう
婿取り前なら五女か六女か
義兄の妻の四女であったら
おもしろかっただろうけれども
六女であれば東宮(こうたいし)さまに
差し上げなさるご予定だとか
その日は後宴があったので
有明の月を追うかのごとく
帰る人々を見張らせる
右大臣さまのお身内が
帰っていかれたようだとわかって
いよいよ心は落ち着かぬ

姫君もまたお悩みになる
四月になれば東宮(こうたいし)さまの
おそばへ上がると決まってらした
三月の末 右大臣家の
藤の宴があり源氏も参る
酔ったふりして姫の近くへ
催馬楽(うた)をただ歌うようにして
「扇を取られて辛き目を見る」
本当は「帯」であるところ
「扇」と言い換え 試みる
ついに姫君は返事をなさった
源氏は嬉しく思うけど

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8.花の宴

源氏物語、第八帖。

※「ノベルアップ+」及び個人サイト「篝火」でも公開中。

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投稿日:2024/12/08 14:36:24

文字数:987文字

カテゴリ:歌詞

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