「レン君」

助けに来て欲しいと思ったらレン君が来てくれた。

都合が良すぎると思った。

でも目の前にあるのは間違いなく現実。

とりあえず自由になった身なので身なりをキチンとして部屋の隅っこに避難。


「ったく。１０分もしない間に来やがって」

「超嫌がられてやんの」

レン君が来て私の頭をくしゃくしゃ撫でた。

「泣かしてる」

「ごめんねーリンちゃんー」

手を差し伸べられてビクっとする。

やだ怖い。

と、その瞬間、レン君がリント君を殴った。

「リンを泣かしたから」

「って・・・マジで殴ったな」

「リン、行こう」


＊


「どうする？一人で家いるの怖くね？」

「・・・すっごく怖い」

「ウチ来る？大丈夫、何にもしないし」

「そうしてくれると嬉しい、かな」


＊


「お帰り、こんな時間にどうｓ・・・」

レン君のお母さん、少しビックリ。

「彼女さんかな？」

「はじめまして。鏡音リンといいます。レン君とは友達です」

「襲われかけてたから助けてきた」

レン君のお母さん、優しく笑って中に入れてくれた。


＊


レン君のお母さんは紅茶を入れてくれた。

「怖かったでしょう」

「はい・・・」

「大丈夫よ、ウチのレンをそんな風に育てた覚えはないから」

レン君はぶっと音を立てて紅茶を吹き出した。

「あらあら珍しいわねぇレンが慌てるなんて」

「・・・風呂はいる」

レン君は怒ったように出て行ってしまった。


＊


「あの子も父親に似て不器用な子ね」

「不器用、ですか」

「あの人は不器用すぎてレンに嫌われてしまった。そのまま分かり合えずに他界
してしまったのよ」

「だからレン君はお父さんが嫌いって・・・」

「あら、レンが言ったの？珍しい」

「はい。レン君も言ってました。何でお前に言ったんだろうって」

「そう・・・」


＊


気がつけば、１１時を回っていた。

これ以上迷惑をかけたくないので、家に帰ることにした。

レン君のお母さんとはすっかり仲良くなって、

「また来てね、リンちゃん」
と言ってくれた。

「菜美さん、レン君、有難うございました」

「送る」

「え、いいよ！どうせ５分くらいしかかかんないし・・・」

「その５分が危ないし」

「あ、ありがとう」

「レン！しっかりリンちゃんを送るのよ！」

「はいはい・・・」