「マジでこわいーーッ! もうっミクちゃん。これだけ恐い話ならやめてよっ!」

「すごいでしょリンちゃん。私のお母さんは、この恐い話が好きなんだよ♪」

「どこが恐い話なんだよっ! 完全に丸パクリした話じゃないかッ!」

 ──ミクちゃんのお母さんは、なにを話してるんだよっ!。微妙にアレンジしてるけど、完全にアウトなネタをだしてるよねッ‼──レンはミクから聞いた恐い話が、別の意味でコワい話になったと思った。

 ヴァンパイアに関するとても恐い話を終えて、ミクたちはブルーローズ・レジデンスの2階へ到着していた。
 すると……階段を上がりきった先で自分たちに異変が起きてしまう。その異変とは、ダンジョン中に漂う瑞々しい薫りが増していることだ。

 鼻の中へ入る青薔薇の薫りが明らかに強くなっていた。

「なっ…なにか居るよ……」

 レンは歩く足を止めて2人に合図する。当然、仲間の2人も立ち止まりバルコニーの方向を注視しだした。

「青く輝く満月の夜に…君たち侵入者は、誰かに雇われて…ぼくの家にきた……」

 誰かの声が聞こえてきだした。
 カツッ…カツッ…カツッ…カツッ……と床を歩くブーツの音が、バルコニーからこちら側に向かって鳴り響いている。

「侵入者である君たちを歓迎しないよ……。ここには、ぼくの大切な思い出があるからね……」

 天井から降りそそぐ月明かりと共に姿を現した一人の青年。彼が語りかけてくる声は控えめな印象だが、とても甘く取り繕った艶のある声を持っている。

 その容姿も甘い声に劣らず、見る者たちへ美しさを与えていく。彼は黒混じりの青い髪にサファイアのような碧眼を持ち、全体の顔立ちも女性が羨むぐらいに麗しさがある。
 体格はスラリとしており、一見すると女性と見間違うほどしなやかで、かつ煌びやかさがあった。

 そんな彼が着る服は、膝まで伸びた瑠璃色をするライダースコートを上着にし、腰には鞘に収めたレイピアと呼ばれる剣を装備していた。
 また…本革で造られたタイトなレザーパンツを着用している。この衣装がさらに身体の線を強調させると共に月明かりが加わり彼をより一層、女性的な印象を見る者たちに与えるのだ。

「でっでたわねっ! フーガ・バーンシュタインッ!。あんたが女ハンターにするホスト狂いも、今夜が最後よっ!」

 リンは勇気を振り絞って指を差しながら相手に言った。

「ホスト狂い……?」

「そっそうよ! あんたがホスト狂いにした女ハンターたちは、ポストへ手紙だすのが止まらなくなったらしいんだからね。その罪をわびなさい」

「……」

 フーガ・バーンシュタインはリンから言われた事の意味がわからず、溜め息を吐き片手で頭を抱えていた。細長い指を使ってだ。

「あのフーガさん…私たち、あなたを退治する為にクエストを受けたのですが、あなたを傷つけたくないんです。だから私たちは、あなたを説得しにきました」

「そうなんだ……。じゃあ…説得だと言ってヒトの家をダンジョン扱いにし、君たちはクローゼットを漁るのか?」

「はっ……!?!?」

 ミクはフーガからのひと言で、白く燃え尽きそうになってしまう。やっぱり私たちのしていたことは、ドロボーさんと同じだったんだと認識したからだ。

「僕も戦いたくないんです…あなたの家をダンジョン扱いにしたのは謝ります。ごめんなさい」

「別に…謝らなくてもいいんだよボーイ……。ぼくは君たちを追い払うだけだからさ……」

 フーガ・バーンシュタインは身構えてきだした。腰に掛ける剣に手を掛けてはいないが、彼がこれからパーティーと対峙してしまう差し迫った事態に変わりないのだ。

「ぼくはただ……静かに暮らしたいだけなんだ……。それを邪魔する若い君たち……呪われたぼくの力で誘《いざな》ってあげよう」

 侵入者であるミクたちと闘う決意を決めたフーガ・バーンシュタインは、青い薔薇を指に挟むと闘いを挑んできた。フーガは左手でおでこ付近を覆い、右手に持つ薔薇を相手に差し出すような感じで振る舞っている。

 その立ち振る舞いは、まるでルネッサンス期の銅像、またはモデルがする気取り体勢であった。不思議なことにフーガ・バーンシュタインが、その姿勢《ポージング》をすると彼の背景には……。


 ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ……と漫画のセカイで使われるオノマトペが現れ、地響きのような雰囲気を演出しているのだ。

 それを間近で見たレンはこう言った……。

「ジョジョ立ちしてるゥーーッ!」

 ──僕たちがする旅は奇妙な冒険の連続だな……と14歳の少年は心のなかで思うのだった。

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奇妙な冒険

それは創造の大神ヒロヒコ・アラキにしかできないセカイ

※荒木先生の大ファンです※

次話
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投稿日:2020/02/29 08:00:16

文字数:1,932文字

カテゴリ:小説

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