[自宅]

俺「え、ど、どうした?今はもうそんな変なこと考えたりしてないから!」

モ「あ、す、すみません。お見苦しいところを。」

 止まったり泣きだしたり。まあ、不本意ながら「心」がついてきたみたいだな。

 そう考えると、俺の過去が役立つこともあるんだなって思えてほっとする。

 ヤレヤレ。

俺「落ち着いたか?」

モ「ひくっ、はい。本当にすみません。」

俺「構わんさ。ただ、もう少し聞いてもらえるかな?」


[過去回想 続き]

 当時十二歳のミクに、十六の俺は振り回され続けた。

 休日に遊ぶ約束をするのはザラだった。

 でも、俺が高三になったとき、やっぱ遊んであげるだけの時間がなくなった。

 手紙(お互い携帯を持っていなかった)も来たけど、返すのはまちまち。

 通学路も孤児院じゃない方を通るようになった。

 そんで、気付くと大学生だ。

 ミクの手紙は全部実家に保存した。最期の一通は、涙で濡れてたっけ。

 その内容は「孤児院の移動」。

 俺が高三終わるちょうどその年の二月いっぱいで、孤児院は移動したらしかった。

 受験が終わってすぐに向かったさ。でも、その時はすでに売却済み。別の人が住んでた。

 俺ってバカだな、って思った。ひどく後悔した。

 後悔するなら、最初から付き合わなきゃよかった、とか。

 でも付き合わなかったら俺は変わってなかったな、とか。

 頭ん中グルグルで、気付くと俺の意識はパソコンの中、さ。


[現在へ戻る]

俺「で、それじゃダメだって気付いたから、モモを造ったのさ。」

ミ「その言い方はおかしいです。」

俺「どこが?」

ミ「今の言い方だと、まるでモモさんが、私の代わりであるようにしか聞えません。」

 反論できない。

 モモを造ったのは「メイドが欲しい」と思ったからだ。その欲求の基が「ミクの代わりが欲しい」でないとは言い切れない。

 俺はモモにかける言葉を失ってしまった。


  俺「あ~、ごめんな。ちょっと頭冷やしてくる。」


 結局逃げる俺がいた。

[6月12日(日) モモサイド]

 マスターは出ていってしまいました。

 ミクさんと二人で取り残されて、なんだか気まずいです。

ミ「モモさん。」

モ「は、はい!」

ミ「あの人は肝心なことを言ってません。私たちがどうなったのかを話していません。」

モ「……私がそれを知る必要は、ありますか?」

ミ「あります。だってあなたは、あの人を愛しているのでしょう?」

モ「私がマスターを?ありえませんよ、そんなこと。私はメイドなのですから。」

ミ「その認識が間違っていると思ったことはないんですか?」

 メイドはマスターとは結ばれない。それは、私に元からインプットされていた「メイド」の定義の一つ。

モ「そ、それは……私が『愛する』なんて……」

ミ「泣いていたのに?」

モ「……!!」

 この方、説教が上手です。これでマスターも説き伏せられたのですね。

ミ「結論から言うと、私たちは別れました。」

モ「え?仲が良かったのにですか?今の話からすると、自然消滅したかのような……。」

ミ「あの人は、自分から振ったことにしたいんでしょう。責任を負うために。責任感は人一倍強いですから。」

モ「それはわかります。ってことは、あなたから?」

ミ「そう。最期の手紙の、もうひとつの内容。

  『私たちは離ればなれになってしまう。これ以上悲しい思いをしないよう、その前に』と。」

 あれ、電気パルスが少し落ち着きました。

 この電気パルスの異常パターンがが、「恋」なんでしょうか。

 まさか自分が、テレビドラマのヒロインのような「恋」をするなんて思ってもみませんでした。

ミ「ごめんなさい。私はもっと違う形でモモさんの心を育てに来たのに、変な話になっちゃって。」

 真面目な顔から一転して、とびっきりの笑顔になりました。

 この笑顔なら、マスターが恋に落ちたのも納得です。

 あ、もしかして、この家にいらっしゃる二人って、私の「心」の育成のためなんですね。


  ~m( _ _)√ 20分経過


 私の呼吸も落ち着きました。そこで。

ミ「そういえば、あの人の誕生日知ってます?」

モ「いえ、今まで聞いたことないですね。」

ミ「六月十五日なんですよ。あと3日です。」

モ「え、そうなんですか?では、誕生会の準備をしなくては。」

ミ「手伝いますよ。あの人がいない間に準備をしましょう。」

モ「そうですね。」

 マスターのために。いえ、「あの人」のために。

ミ「私は探してくるので、失礼ですけど、お昼の準備をしていただけますか。」

モ「はい。三人分、ですね。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

モモの木成長日記:三曲目「SING&SMILE」3/4

なんとか4つでまとまりそうです(-_-;)アーキツイ

まあ、おたのしみくださいな。

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投稿日:2012/05/02 19:08:29

文字数:1,981文字

カテゴリ:小説

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