君が僕に願うなら
欲しいものはみなあげよう
金も銀もこの世のすべての美しいもの
望むままに、願うままに
ただ一つ、手に入らないのは
優しい彼女の笑顔だけ――
古い古い言い伝え
水鏡の底、奥深く
「まもの」はそこに棲むという
覗いたものの欲しいもの
なんでもその手にさしだして
甘い言葉で誘うという
『こちらへおいで、一人はとても寒いんだ』
ある時、美しい娘がやってきた
恐れないよう、逃げ出さないよう
「まもの」は息を殺して身を隠す
娘の唇からこぼれる願い
それは、たった1輪の花
病床の母への贈り物
君がその美しい声で僕に願うなら
欲しいものはみなあげよう
雪のように白い花も、血のように真っ赤に染め上げよう
望むままに、願うままに
ただ一つ、代わりに欲しいのは
優しい君の笑顔だけ――
森の奥深く、広い泉の中
そこから、「まもの」はでられない
水鏡の先に映るのは、まだ知らぬ外の世界
あそこはどんな場所だろう
触れたら壊れるのだろうか
ただ聞こえるのは水を汲みに来る彼女の歌声
ある日娘が泣きながらやってきた
「まもの」は息を殺して身を隠す
恐れないよう、逃げ出さないよう
娘は涙を流して希う
『愛する人に会わせてください』
澄んだ水鏡に映るのは、愛しい母親の姿
やっと、娘は微笑んだ
君が僕に笑うなら
欲しいものはみなあげよう
夢と幻、永遠の約束
望むままに、願うままに
だけど、僕の欲しいものは
どれだけ願っても得られない
君の笑顔、美しい声、熱い眼差し
遠ければ遠いほど欲しくなる
娘が水鏡に触れた瞬間(とき)
腕を伸ばして捕まえる
『助けて』という悲鳴さえ
体ごと冷たい水の底
「まもの」はいまだ気づかない
彼女は永久に失われたという事に
やっと、やっと手に入れた
雪の肌、滑らかな髪、凍った体温
この世のすべてより美しいもの
惜しむらくは、悔やむらくは
ただ一つ、もう聞こえない
優しい彼女の歌声だけ――
水鏡の底、奥深く
「まもの」はそこに棲むという
引きずりこんだ少女の涙で生きながら
今も冷たい水の底
誰かの願いを待っている…
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