ある初夏のこと、ハクさんが付き合えっていうもんで一緒に飲みに行ってきたんだ。
そこはハクさんの馴染みらしい居酒屋だった。
オレ「どうしたんですか、ハクさん」
ハク「いいから、まずは飲め。おやっさん、酒出して。」
オレ「ちょっとハクさん、オレ腹減ってるんで何か食べたいんですけ…」
ハク「ああん!?いいからまずは飲めよ!」
オレ「あ・・・はい・・・」
おやっさん「へいお待ち」
ハク「よしじゃあ、乾杯しよっか。あの…その、ふ…二人の未来に…」
オレ「え!?そ…二人にって…お」
ハク「う…、嘘だよ!ばーか!乾杯!」
オレ「…乾杯。姉さん、冗談はやめてくださいよー。」
ハク「…冗談か。冗談なんて…ひっかかるのが悪いんよ。」
オレ「そうっすよね~。あ、おやっさん、たこの刺身ひとつ」
おやっさん「あいよ~」
ハク「あっじゃあ私たこわさび一つ」
おやっさん「えーい」
オレ「なんか慣れてるようですけど、ハクさんはここによく来るんですか?」
ハク「まあねぇ。たまーにだけど」
おやっさん「あい、刺身にたこわさね。姉さん、今日は若い兄ちゃん連れてどうしたんだい?」
ハク「別に…。…暇そうだったから連れてきただけ。」
おやっさん「はーん。さては彼氏かい。」
ハク「ちょっと!べ、別にそんなんじゃ…」
オレ「お…オレが彼氏?」
ハク「んなわけねーだろ!(バキッ!)」
オレ「冗談ですよ、痛いですよ、もう酔っ払ったんですか」
ハク「うるせーよ!ったく!おやっさん!こっちくんな!」
おやっさん「はいはい、じゃあ二人きりにしましょうかね」
ハク「ちょ…おやっさん!ふざけんのもいい加減に…!」
オレ「まあまあ、とりあえず水でも飲んで落ち着いて」
ハク「はあ。グビッ・・・。ウホッ!これ酒じゃねえか!」
オレ「あっ間違ったー(棒)」
ハク「わざとだろ!てめーも飲め!」
オレ「グビグビグビプハーっ、んまーーい!!」
ハク「そ、そんな…12機の日本酒がたった3秒で…。お前なかなか飲むじゃないか。おやっさーんスピリタスボトルで追加~!」
おやっさん「あいよー、グラスも2つ置いとくよ」
オレ「はあ?ちょっとハクさん、いくらなんでもそんなに飲めないんじゃ…」
ハク「うるせー今日は飲む日なんだよ!飲ませろ!飲め、付き合え!」
オレ「わかりましたよハクさん、今夜はとことん付き合いますよ…」
ハク「いっておくけど、付き合うっていったってその…交際するとこかそういうんじゃないんだからね、勘違いしないでよね」
オレ「わかってますよ、ハクさん意識しすぎですよ」
ハク「そうよね…。どうせ私なんて…」
オレ「ハクさん?」
ハク「歌も下手だし、おしゃべりも上手じゃないし、なにいってるかよくわかんないし。こんな私なんて…だれも相手に…」
オレ「ハクさん…そんなことないですよ…」
ハク「世間ではボカロ好きをカミングアウトすると白い目で見られるし、友達はどんどんリア充になって付き合いにくくなるし。ネット上だってろくな交流もないし、ボカランなんて雲の上、全部門番に見えるし(中略)年収低いし、友達と呼び合える人いないし、休日は一日中ニコ動みてるし、自動車免許持ってないし、(中略)長続きする趣味もないし、ファッションセンスもアレだし、こんな私なんて…誰にも…どうせ…。」
オレ「ちょっと…ハクさん」
ハクさん「私らんて…私なんてどうせヒック・・・死ねばいいんだ。どうやって死のうヒック。迷惑かからないほうがいいな。でも生きてらってヒック迷惑だよねぇ…。はぁ、私って駄目だな。生きててごめんね…」
おれ「…弱音を吐くなんて…ハクさんらしくないですよ!!」
ハク「えっ!?」
オレ「俺は知ってますよ、ハクさんのいいところ。ハクさんは、とてもスタイリッシュでいろいろできる多芸で、おっぱい大きくて、面倒見がよくてみんなが頼れて…他にもいっぱい。いつでも人の気持ちをわかってくれる優しいお姉さんだと思ってます。ハクさんのこと、死んだほうがいいって言うやつなんていないし、そんなやつがいたらぶっ飛ばします!!」
ハクさん「…」
オレ「おれは…、オレはそんなハクさんが好きで…す、好きですから!!」
…
…
ハクさん「…………おっぱい大きいとか言うなー!!!」
オレ「はっ…すいませんつい…」
ハク「どうせおっぱいが好きなんだろ!ちくしょー!!身体めあてか」
オレ「違いますよ…ただ胸はオプションとしてというか…」
ハク「人を車みたいに言うなー!もう!」
オレ「ちょっとハクさん落ち着いて。ねっ!?とりあえずまあ、水でも飲んで落ち着いて!」
ハク「わかった、グビっ!ぷはっ!これスピリタスじゃねえか!」
オレ「あっ間違えたー(棒)」
ハク「てめー!もう許されあれあれあれあれ…」
オレ「すいません、ハクさん、謝りますから…あれ?ハクさん?」
ハク「zzzzzzzzz」
オレ「寝ちゃった。仕方ない、ちょっと寝かしとくか…。」
おやっさん「おうおう、姉ちゃん寝ちゃったか。」
オレ「あっすいません騒いでしまって。ちょっと休んでてもいいですか?」
おやっさん「あいよ。ゆっくりしていってね。」
オレ「参ったな~、やっぱりボトル余っちゃったよ」
おやっさん「いいよいいよ、余ったスピリタスはうちの方でキープしておくから」
オレ「はあ、お願いします」
おやっさん「ただし兄ちゃん。姉ちゃんのほうはあんたがキープしておきな。」
オレ「・・・おやっさん。」
おやっさん「…(ドヤァ)」
オレ「全然うまくないっすけど」
東京の夜は更けていきます。けれど街はまだまだ眠りません。
(続く)
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6.
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