ユア視点
「…」
エンジェ星に帰ってきた。
ただ、その場所は4年前とほぼ変わらず、荒れ果てた土地だった。
悪UTAUの襲撃を受けたせいだ。
「…早く、クオを探さなければ…」
「何で、そんなに急がなきゃなんだよ」
ロスト君が私に問いかけてきました。
「…クオは、バグだったんです。リンちゃんはもう、それに気付いたみたいで、だから、さっきはクオを追いかけて出て行ってしまったのだと思います。…それに"ボーカロイドの誕生した場所"は、ミク達のデータがまだ残っています」
"ボーカロイドの誕生した場所"
それは、ミク達は、本当は地球ではなくこのエンジェ星で生まれたもの。造られた。
亜種に足りなかった物は、このエンジェ星で生まれなかったこともあったのだと私は思っていた。
とにかく、クオはミクを元に戻す為に、ミクのコアを持って"ボーカロイドが誕生した場所"まで行こうとしているのだと私にはすぐに分かった。
「実衣さん、もう降りて良いですか?」
「はい。…どうか、ミクちゃんと、クオ君を…」
「…分かりました」
その時の実衣さんの顔は、とても心配したような顔でした。
きっと、ミクも、クオも…一緒に、一緒に帰ってきて欲しいからだと、私は思いました。
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キョウ視点
「クオ…あいつ。馬鹿かっ!」
「アクアちゃん…」
私とアクアちゃんは走る。
"ボーカロイドの誕生した場所"を求めて。
私は知らないけど、アクアちゃんは何か知っているようだった。
クオさんの事も、ミクさんの事も、私は知らなかったけど…。
本当に、何も知らなかった…。
「…はあ…はあ…つい…たの…?」
私は少し疲れて、アクアちゃんが立ち止まった後ろで少しへたっていた。
「…此処が"ボーカロイドの誕生した場所"だ。此処に、世界で始めて生まれたボーカロイドが居る」
「え、初めてのボーカロイドって、メイコさんじゃなかったの?」
「ああ、メイコさんの前に、外国語しか喋れないが、LEONとLOLAというボーカロイドが居る。その二人が、此処の管理人をしている」
「…LEONさんと、LOLAさん…」
「行くぞ」
「あ、うん…」
私達は、その建物に入って行った。
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ユア視点
「…どうやら、本当にキョウも、アクアも…此処に入って行ったみたいです。この建物の中から、微かにアクアの反応があります」
私は、マイちゃんとサウ君と一緒に、此処に来ていました。
ロスト君は、悪UTAUがエンジェ星に向かっていると知って、エンジェルボイスターに残り、戦うといっていました。
二人は、ララとキョウの様子を見たいと言っていました。そして、マイちゃんは、アクアにお礼が言いたいと言っていました。
「…その、アクアちゃんが、この前私を助けてくれたの…。サウが悪UTAUに操られた時…」
「そうなのか」
「…二人とも、入りますよ…」
「うん」
「…分かった」
建物の扉を開けると、其処には巨大コンピュータがあり、その中央に男性と女性の姿がありました。
男性の方は目を閉じていて、スリープ状態なのだとすぐに分かりました。
【ヨウコソ、ゆあサン。オヒサシブリデス】
女性の方が口を開き、そう言いました。とても片言なのは、彼女達は本来日本語を話すボーカロイドではないという事です。
「…LOLAさん、お久しぶりです。あの、先程女の子が二人ほど入ってきませんでしたか?その前に、ミクにとっても似た男の子も…」
【ハイ、キテイマシタヨ。オクノホウヘイキマシタ。ワタシモ、トメタノデスガ…ダレモキキマセンデシタ。タダ…オトコノコハ、トテモカナシソウナカオヲシテイマシタ。みくサンニ、ナニカアッタノデスカ?】
「…そうですね、LEONは今。スリープ中ですので、LOLA…ちょっと来てくれますか?」
【ハイ、ワタシモ、スコシシンパイナノデス。こんぴゅーたハ、LEONニマカセルトシマショウ】
「凄い…この人達が、最初のボーカロイド…」
マイちゃんは、とても驚いた様子でLEONとLOLAを見ていました。
「…とにかく、奥のほうの部屋に行けば良いんだろ?」
サウ君は、何か悪い事が起きようとしている事をわかって居るらしく、急ぐように言いました。
「はい。じゃあ、行きますよ…」
私は、奥の部屋へと続く扉を開けました。
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ロスト視点
「悪UTAU確認!今すぐに戦闘体勢へと移る模様です!ボーカロイド隊、出撃準備をお願いします!」
実衣さんがそう言った。それが合図だった。
「…ミクやクオの事はユアに任せられる。俺は…悪UTAUを討つだけ…」
コックピットに乗り込み、レバーを握る。
この故郷で戦闘になるとは思いもしなかった。
色々な思い出の詰まった場所。そして…残った者を守らなければいけない場所。
「ロスト・タイム…出撃する!」
そして、俺は故郷の空へ飛び立った。
【こんにちは。ボーカロイド隊。私はUTAUの白鐘ヒヨリと言います…。突然ですが、戦いを申し込みます。ボーカロイドは、私達UTAUにとっては忌むべき存在なのですよ…】
「ヒヨリ…」
オリジナルのUTAUが出てきた。テトやテイと同じく、操られているのだろう。
「ヒヨリちゃんっ!」
テトは叫んだ。
でも、他の悪UTAUがテトに襲い掛かる。
俺も、悪UTAUを避けつつ、攻撃を行っていた。
「…数が多すぎるっ!」
悪UTAUはオリジナルのUTAUと違い、容赦なく倒せる上に雑魚なだけ、数が多いととても鬱陶しいだけだった。
「レイン様ぁ…」
マキは、とても弱っている。ミクの消失やララの状態の事をまだ引き摺って居るのだろう。
皆が皆、ミクの事をとても心配している。
まだ、心の傷が癒えている訳ではない。
「マキ!しっかりなさい!悲しんでいても無駄なだけよ!」
レインさんは、とてもしっかりしている。レインさんだって、苦しい筈なのに。
彼女はどうしてこうも、強くあれるのだろうか…。
「でもぉ…」
「マキ、私達が頑張らないと駄目なのですよ…!」
「そうよ、マイもサウも…ミクちゃんを取り戻すために頑張ってるのよ」
「それに、ララちゃんとキョウちゃんも、エンジェ星に居るみたいよ。此処で頑張らなきゃ、あの二人に顔向けが出来ないし、ルル君にだって怒られちゃうわ」
レインさんは少し笑って、悪UTAUに銃口を向ける。
「ミクさんは、ボーカロイドの中でも、とても輝いている存在なんだ。それに、ミクの事を好きな人は沢山居る。勝手に居なくなられてたまるかよ!」
「そうだな。ボクらは、ミクさんの居場所を守ろうとしているわけでもあるし、クオにだって、居なくなられたら困るんだ。ボイス…ここでやられてたまるかってんだよな!」
「ああ、そうだな」
ボイスとミユウのコンビネーションは抜群だった。リユウとノイズの事件から、元々仲の良かった二人はもっと進展したみたいだが、恋愛にまで発展してるかは微妙なラインだ。
「…こんな事分析している暇じゃないのにな…」
ふと、そんな事を思う自分が、まだ余裕を持てて居るという事だった。
まだ、余裕が持てているという事は、まだ、何かが出来る。
4年前…何もかもを守れなかった自分への、リベンジだ。
歌姫戦士ボカロボット第33話後半
LEON&LOLA登場!でもLEONさんw寝るなw
次回予告
ユア「"ボーカロイドの誕生した場所"へと来た私達。其処に居たのは、ミクのコアを持っているクオと、それを止めに来たキョウとアクアだった。一方、エンジェ星での戦闘は、オリジナルUTAUの白鐘ヒヨリちゃんが悪UTAUを使役して、皆をてこずらせていた。次回「ヒカリじゃなくて、もっと暖かい…」お願い、私達がミクとクオを連れて帰るまで、どうか…待っていてください」
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