あれから8年。母上が亡くなった。先に病に倒れた父上に変わって国を治めていた母上もその多忙さに倒れ、そのまま息を引きとった。
葬儀はリン王女の即位式と同時進行で準備が進められ、驚くくらい事務的に事が進んだ。
リンだけが大号泣して、部屋に篭りっきりだった。国民も悲しみに暮れてはいたものの、次期王女への不安の方が勝っているのか混乱の色を隠せないようだった。
僕はと言えば、ベッドの傍で、ただただ啜り泣く彼女の髪を撫でてやることしか出来なかった。
どれくらいの時間が過ぎただろう。先に口を開いたのは彼女だった。
「ねぇ、レン…」
「…ん…?」
「レンは、何処にも行かないでね…」
「…うん、行かない」
「ずっと、あたしの傍にいてね…」
「…うん。」
「あたし
レンだけでいい。
レンが居てくれたら…
もう、それでいい…」
「リン…?」
バッと彼女は突然身体を起こして、真顔で僕を見つめた。そして、困ったような顔で笑った。
「顔ぐちゃぐちゃ…。
戴冠式っていつだっけ?」
「あ…
今日は次期王女が体調不良だからって
明日正午からに変更したって…」
「なぁんだ。そうなんだ…」
「でもほら。
一度流れとか確認しなきゃだけど…
どうする?明日の午前中にしようか」
「…ううん、着替えたらやるわ。」
覚束ない足取りで彼女は扉へと歩いた。その姿が頼りなくて、ふと支えたその身体は 思った以上に細くて、柔らかくて… びっくりした僕は思わず手を引いてしまった。
「……?」
「ご、ごめんっ…
あの… どうぞ」
僕は慌ててドアノブを掴んで扉を開けた。彼女は僕を見つめたまま暫くきょとんとしていたが、遠くから彼女に駆け寄る他の召使いに気付くとフッて笑った。
「レン…ありがとう」
何か思い詰めたような彼女の声に不安を覚えて顔をあげた。それと同時に彼女は僕の頬に触れ、軽く口付けた。
「……は…?」
一瞬をおいて状況を飲み込み真っ赤になって口をぱくぱくさせる僕を、彼女はいつもの無邪気さでからかった。
「やだーっ!レンってば可愛いー!」
「な… な… 何してるんですか!王女!!」
「嗚呼!王女様、お身体の具合はもう宜しいのですか?!
…レンはどうされたのですか?」
真っ赤なままそれ以上何も言えない僕をクスクスと見つめる彼女と全く状況の掴めない召使い達の視線が居たたまれない。
「…なんでもありません!王女の着替えの手伝いをお願いしますっ、そのあと明日の戴冠式の説明を僕から行うのでそちらと合わせて準備をしてください、僕は先に行ってますからっ」
早口で捲し立てるように指示をして、彼女の顔を見れないまま僕はその場を去った。
その僕の姿を彼女がどんな顔をして見ていたなんて、僕には知るよしもなかった。
next…
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