「可哀相に・・・。」
「まだ、高2でしょう?」
「まさか、2人もなんて・・・。」
一様に喪服を身に纏った参列者達が、次々と棺桶の中に、色とりどりの花を添えてゆく。
俺は白い百合の花を手に、棺桶の横に立つ。
死に化粧をして、長いまつげを伏せ、冷たくなって其処に横たわる人物。
「・・・嘉神音・・・。」
「・・・嘘、だろ?なぁ・・・カイト!」
俺は、思わず携帯の向こう側にそう問い返す。
「っバカ!そんな嘘、つくかよ・・・っ。」
掠れ気味にそう呟くカイトの声は、気のせいか泣いているようにも思えた。
でも、そんなことは今はどうでもいい。
「嘉神音が・・・死んだ?」
どうしようもない現実を、俺はもう1度だけ繰り返した。
地面にぽつりとしみを作った雨が、容赦なく俺を濡らしていった。
「レン・・・大丈夫か?」
葬式場のロビーで俯く俺に、お前こそ大丈夫か、と言いたいほど疲れ切った顔のカイトが声を掛ける。
でも、そんなことを言う気力はなくて、小さくあぁ、とだけ呟いた。
「まさか、な・・・。まさか、嘉神音も、なんて・・・ッ」
カイトが手を顔に当て、声を押し殺す。
ああ、きっと。
「・・・お前、さ。もしかして、嘉神音のこと・・・。」
「ああ、・・・本気で、好きだった。でも、告白も・・・できないまま、逝っちまった・・・。」
そう言ったカイトの顔が、哀しく笑っていて。
どうしようもなく胸が苦しくなった。
「・・・ごめん、俺、ちょっと外行ってくる。」
ふらり、とロビーから出て行ったカイトを見送る。
飲み物でも買おう、とポケットに手を突っ込むと、待っていたかのようなタイミングで携帯が震える。
発信者は、
「こーんにーちわぁ!鏡音レンさん。彼女・・・嘉神音リンさん、でしたっけ?亡くなったんですってね!あはっ、ご愁傷サマですっ!」
気付いたときには、怒鳴っていた。
周りの奴らの視線なんて微塵も気にせずに。
「てめえ・・・っ、何なんだよ!人が死んだのがそんなに可笑しいのかよ!」
「やだぁっ、そんなに怒らないで下さいよぉ。まぁ、ちょっとふざけすぎちゃいましたかね?ごめんなさいっ!」
そこでやっと、周りから怪訝な目で見られていることに気付き、足早に外へと出る。
「お前・・・何なんだよ・・・。ミクと、嘉神音が死んだことに、何か関係在るのか!?」
「ふふっ、それはどうでしょう?ああ、でも、これだけは言えますっ。・・・もうこれ以上大切なものを無くしたくないのなら、もうちょっと気を付けた方がいいと思いますよぅ?」
「どういう・・・」
意味だ、と言いかけた時、遠くでカイトの声が聞こえた。
悲鳴のような、叫び声のような、そんな声。
「あららっ、随分早いご登場のようですねぇ?じゃぁ、あたしはここら辺で。ばいばいで~す!」
女が話し終える前に、俺は声がした方へ走り出していた。
脳内に、さっきの女の言葉が蘇る。
「もうこれ以上大切なものを無くしたくないのなら、もうちょっと気を付けた方がいいと思いますよぅ?」
どういう意味なのか、なんて、痛いほどよく分かっていた。
嫌だ、もう、誰も失いたくない。
瞬間、俺の目に飛び込んでくる、カイトと数人の大柄な男達。
両手を拘束され、猿轡をされたカイトが、無理矢理車へと乗り込まされる所だった。
「ッカイト!」
「・・・!」
カイトが目を見開くと同時に、男達が俺に向かって手を伸ばす。
抵抗しようとしたが、首元を捕まれ、息が苦しくなる。
次第に、意識も薄れていった・・・。
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でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
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「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
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