白い雪は、誰の為でもなく降り続ける。


少し寒いのか、傍らにいる恋人・・・リンは、ぶるっと身体を震わせた。

「リン、寒いのか?」

「ううん、大丈夫」

正直、北に二人だけで引っ越して良かったのかどうかは分からない。
けれど、それで少しでもリンが、リンの病が治るのならと、こうして二人で寄り添っている。

「レン、歌おうよ」

「・・・うん」

余命はあとわずか。
医師にそう宣告された後、リンはこう言った。

「ねぇ、レン。歌おうよ。でも悲しい歌にはしたくない。だから、やさしい歌を歌おうよ」

全く、彼女らしい。
その時レンは肩をすくめた。

「当たり前だろ。リンはずっとずっと居るんだから・・・」

あの時レンは事の重大さを受け入れることが出来なかったのだ。

「悲しい歌にはしたくないよー」

リンは自作の歌を可憐な、しかし色はあまり良くない唇で紡ぐ。

「ねぇお願い今、この時だけーはー」

レンは泣きそうになった。
しかし、泣くわけにはいかない。

「笑っていたいよ、あなたの横でー」

レンは無理に笑顔を浮かべた。

「やさしい歌をー」

世界で一番、大切な人を見つめる。

「歌ってい・・・」

レンの瞳が、恐怖の色に変わる。

「?」

「・・・えないの」

「?」


「聞こえないの」


あまりにも、唐突で、残酷。

レンはリンを家に連れて帰った。
涙を堪えて、ただ懸命に。







医師は言った。

「これ以上の回復は望めないでしょう」

この世の全てが、彼らにとって残酷かつ非情だった。

リンは次第に言葉を紡ぐのが難しくなっていった。
二人は筆談で話し、笑い、そして歌った。

しかしその後は必ず、レンは部屋の外で泣き崩れる。

「どうして、どうしてリンが・・・!」







ある日、大分弱ったはずのリンが提案した。

『雪を見に行きたい』

リンはそろそろ自分も終わりだということを悟っていた。

『そうだな』

レンは明るそうに見える笑顔で、リンの手を握る。

リンは微笑んだ。

(キコエナイけれど、伝わっているよ、触れた指先から、)


(アイシテルって・・・)


すぐにお迎えは来た。

リンは静かに息を引き取った。

レンはしばらく信じられない光景を見ているような瞳で、しかし次の瞬間には叫んでいた。

「あああああああああああああああああああああああ!」

どんなに叫んでも、リンには届かない。

リンは、リンの声はもうイナイ。

灰色の世界が埋め尽くす。

降り積もる雪が、ずっと降り続いてほしかった。

このまま全て奪い去ってほしかった。

自分の声を奪い去って愛しい人へと与えてください・・・


雪は、何もかもを白く埋め尽くしてゆく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

soundless voice

書きながら泣いていました。
全てが彼らにとっての「悲劇」であり、また「物語」だった・・・
それを伝えたかったんです。

閲覧数:691

投稿日:2011/06/27 01:42:24

文字数:1,154文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • シベリア

    シベリア

    ご意見・ご感想

    な、泣きそうになった…
    この曲は涙腺崩壊すぎるよ(;ω;`)

    うちがレンだったら立ち直れそうに無いかも…
    凄く大切な片割れがいなくなったらすごいショックだよね…
    ブクマもらうね!

    2011/06/28 20:24:34

    • 楪 侑子@復活!

      楪 侑子@復活!

      日枝学さん  絶望的な感じ表現できてますか!?
             良かったです(*´∀`*)
             ありがとうございます!


      シベリア  泣きそうになってくれたの!?
            これ以上にうれしいことは無いよ!
            うん・・・「亡くしてから気づく大切なもの」ってのも・・・
            残酷なことだね・・・
            ブクマ超感謝!いつもありがとう!

      2011/06/29 23:49:34

  • 日枝学

    日枝学

    ご意見・ご感想

    読みましたよー 原曲の絶望的な感じが上手く表現できてますね
    執筆ナイスファイトです!

    2011/06/27 03:25:22

    • 楪 侑子@復活!

      楪 侑子@復活!

      日枝学さん  絶望的な感じ表現できてますか!?
             良かったです(*´∀`*)
             ありがとうございます!


      シベリア  泣きそうになってくれたの!?
            これ以上にうれしいことは無いよ!
            うん・・・「亡くしてから気づく大切なもの」ってのも・・・
            残酷なことだね・・・
            ブクマ超感謝!いつもありがとう!

      2011/06/29 23:49:34

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