第三十四話 どうかこの手をとらないで

 「ね、レン……一緒に帰ろう……?」

 出来ることなら。

 このまま帰って、このことはすべて忘れて。
私たちの世界でのんびり暮らせたら。

 きっとレンは縛られることはないし、またあんな思いをすることもない。

 カイトも、レンの親父さんも、みんな――あたしも―――。


 「どうして、なにも言わないの?」


 少しだけ、あたしの手の方に動いた手が、不自然な形で止まったままだ。




 ――この手をとって。




 でも、それをしたらきっとレンは後悔する。





 「この手を、とって……今すぐ……」




 さっきからレンは何もしゃべらないから、あたしばかり話している。









 


 お願いだから。





 一緒に―――。












 「ごめんよ、ぐみ……」










 雪はもう既に足首あたりまで積もっている。
レンの声以外何にも聞こえないその世界は、まるで天国のように穏やかだ。





 「ごめん」







 そう言って、レンはあたしに背を向け何処かへ走り出した。










 そう。

 それでいいよ。

 レン、それでいいよ。





 だから。
振り向かないで。






 君が今振り返ったら、きっとあたしは呼びとめてしまう。
この手をとらなかったことは正しいことだと、そう思っているのに、それを無理矢理跳ねのけてでも、君を求めてしまう。






 こんなに、苦しい。








 ああどうか降り積もる雪よ。
この訳のわからない感情とともにこぼれる涙を、その白く気高い姿で隠して。













 君が、振り返る前に。











 この冷え切った手が君のぬくもりを求めてしまう前に。











 ああ、君が消えていく。














 どうして今気づくのかな。

 今までたくさんその答えは落ちていたはずなのに。






















 こんなにも、愛しいだなんて―――――。














ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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ノンブラッディ

閲覧数:76

投稿日:2013/01/30 19:26:37

文字数:915文字

カテゴリ:小説

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  • Seagle0402

    Seagle0402

    ご意見・ご感想

    難しいとこですね…(悩)
    …でも、レンもグミも強いですね…すごい…

    2013/02/04 18:50:04

    • イズミ草

      イズミ草

      そうなんです……。
      書いてる私も苦悩です。
      ですので、中のみんなはもっと苦悩でしょうに……。

      2013/02/04 18:59:16

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    グミちゃんも、戦ってもいいのよ?

    あきらめなくても……
    それとも、これが大人の対応か……

    2013/01/31 18:58:37

    • イズミ草

      イズミ草

      うーん、何と言いますか……。
      グミなりのけじめなんじゃないでしょうか。
      ここで追いかけたら、レンはここからもう動けなくなってしまうからとか。

      戦いたいけど、戦えない。
      葛藤。
      ジレンマですw多分w

      2013/01/31 19:02:44

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