“自分の心が映る~ココロテレビ~”。

不思議な小さな箱を持って、レンくんは立っていた。

ちょっと変わった雑貨店「星を売る店・上海屋」で。
長い金髪の、お店のマスターの女性が、彼を見て静かにほほえんでいる。

「気に入ってくれたかしら。それ」
彼女は、ゆっくり彼に話しかける。
「え?ええ、はい!」
あわてて、ドギマギして答えるレンくん。

おずおずと、聞き返す。
「あの~、コレ、ホントに僕の心が映るんですか?」

マスターの女性は、笑ってうなずいた。
「そう。そのテレビの画面みたいなとこにネ。それはね、キャンドル入れなのよ」
彼女は、レンくんの持っている箱を指さした。

「自分のお部屋で、そのなかにキャンドルを灯して、箱の画面を見つめるの。そうすると...」
彼女は、椅子に座ったまま、静かに腕を組んでつぶやいた。
「あなたの心が、そこに映ります」


●それ、未来も映るかナ...

レンくんは、不思議な気持ちになって、持っている箱を目のところにかざしてみた。
半透明の黄色い、ただの小さい箱だ。

すると、急にマスターの女性がまた話しかけた。
「ね、あなた、いつも、雑貨とか、よく買うのかしら?」
レンくんは、夢から覚めたように感じた。
「あ、いえ、僕はあんまり。でも、妹のやつが、こういう雑貨とか好きです」

レンくんの家の、妹のリンちゃんは、こんな不思議な雑貨が好きで、よく買ってくるのだ。

「あら、そう」
マスターは、優しそうにほほえんだ。
「よかったら、妹さんも、今度連れていらしてね?」
「は、はい。そ、そうですね」
なぜかレンくんは、アガッてしまって、答えた。

マスターは、手のひらを胸の前で組んで、言った。
「その、ココロテレビ、きっとあなたの心が映ります。それと、未来も映るかナ...」
「ええっ、未来が?」
レンくんは、驚いた。

「ボク、これ、買います」


●マスターのマジック

にっこりとほほえむマスターに、レンくんが財布からお金を出して払っている時。

店の隅で、それを、不思議そうに見つめる女の子がいた。
さっき、レンくんが眺めていた、ガラス細工の「足」を作った、ぱみゅちゃんだ。

彼女はいま、ギャラリーで開くはじめての個展の準備のために、
会場を飾る、ムードのある雑貨を買いに来たのだ。


「あれえ、あの子が買ってる“ココロテレビ”。」
ぱむちゃんは、思った。
「あれ、人の心なんか映るのかな? ツルカメ堂のアロマ・キャンドル入れだよなぁ」

彼女は思った。
「そっか!これか。これは、マスターのりりィさんの、魔術(マジック)、だ!」 v(。・・。)


(Part3に続く)

ライセンス

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玩具屋カイくんの販売日誌 (116) レンくんと、星を売る店 (Part2)

不思議な雑貨を買ったレンくん。そこに何が映るのでしょう?

閲覧数:79

投稿日:2011/08/16 19:58:05

文字数:1,117文字

カテゴリ:小説

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  • 日枝学

    日枝学

    ご意見・ご感想

    読みました! 読んでいてまず「あ、魅力的だな」と心惹かれるものを感じました。ココロテレビそのものとココロテレビについての描写の二つ共を魅力的に感じました。そこから惹きこまれて読んでいき、最後のあたりで予想外の展開になり、不思議に思うと同時にさらに引きこまれました。良いですね。レンくんの描写もとても暖かく感じられ、良いと思いました。
    良かったです!

    2011/08/16 23:46:39

    • tamaonion

      tamaonion

      日枝学さん

      読んでくださって、有難うございます!

      もしかしたら、ホントに魔法のような雑貨って、あるのかもしれませんが。
      (水晶玉とか、パワー・ストーンとか)

      でも、その前に、雑貨の楽しさって、
      こんな風にモノを通じて、人と話したりすることかも、ですね。

      そんな話を書いてみたいと思いました。

      またぜひ感想を聞かせてくださいね!

      2011/08/17 01:21:18

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