「僕はずっとそばにいるよ」
それは…貴方と交わした約束。
…「嘘の」約束でした。
「…ぃ…ケイ…ねぇ!ケイ!!」
「ん…?」
ケイと呼ばれた少女は、閉じられていた翡翠色の目を開けた。
「こんな所で寝たら、風邪をひくよ?」
そう言うと、太陽色の髪の女性は大樹に寄りかかる。
「すみませんマスター…」
…此処で寝ちゃってたんだ…
いつの間にか夕方の景色が、目の前に…
こつんと大樹に、もたれ掛かる。
風が、ケイの金色の髪の毛を揺らした。
ケイは目を閉じた。
『僕は、ずっとそばにいてあげるよ』
…その言葉が、私の頭に浮かぶ。
そんな事…出来る訳がない…無かったのに。
何でですか、マスター…
私のマスターは貴方しかいません。
「小羽音ケイ」は貴方に作られたのに…
少女は、目に涙を浮かべた。
「…嘘つき」
少女の声は誰にも届く事は無く、風が掻き消していく。
…だけど、少女の傷は掻き消していかなかった。
静かに、時は過ぎて行く。
―――--‐…
それから1週間後の事だった。
「…おーいー?マスター??」
さっきから、マスターが見当たらない。
家中どこにもいない。
「もー…どこにっ……?」
マスターの部屋の机に、小さな紙が置いてあった。
…部屋に入ってみる。
かさ
置いていた紙を、読んだ。
『ケイへ
ちょっと買い物に行って来るわ』
「ふぅ…なーんだ、買い物かぁ」
少し、安心した。
…安心するのは…まだ早かった。
「そうだ!!ファイルの整理でもしようっと」
最近マスター…人使い荒かったから、出来てなかったんだ。
私は、ファイルを整理しはじめた。
「此処はー…ココで……あれ・・・??」
見慣れないファイルがあった。
「んー…っと音楽??」
聴いてみようかな…
ケイは好奇心から、聴いてみる事にした。
「……こ……の……曲…」
ありえない。
絶対にありえない。
こんな所に、こんな物が入っているはずが無い。
でも…
入っている…。
…
『マスター…この曲、下手すぎます』
『えぇ!?僕的には、上手くいったのに…』
『…あははっ…!!嘘です!!好きですよ…!!あはは!!』
『ちょ、そんなに笑うことないじゃんか…』
『あはは!!』
…
一粒、涙が零れた。
「ま…マスター…ッ」
拭っても、拭っても
「…っぅぅ…」
溢れてくる。
少女は、今までの思いを消すかの様に涙を流した。
…夏の若葉が、落ちていく季節。
彼女の涙も…いつか……
『マスター!!』
『ん?なんだい??ケイ』
『あのね…』
『うん』
『マスターの事大好きだよ!!』
彼は、笑った。
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