――人の命は儚く美しい。それはそれぞれの季節に色取り取りの花を咲かせる植物たちのように。はたまた、別れと出会いの季節に花を咲かせ、散ってゆく桜のように。


「桜が咲く頃に、ここに戻ってくるよ」
 あの日あの時、彼は私にそう誓った。桜がまだ蕾を開く前のことだ。
「4月には仕事が落ち着いてきっと、いい桜の花が見れるね。帰ってきたら、一緒に花見でも行こうか」
 彼は4月から1年間、仕事でこの町を出る。それは、短いようで長い遠距離恋愛の始まり。彼とは家がご近所さんで、小さい頃からずっと一緒だった。長い長い時間を共に歩み、ここまでやってきた。
「なあに、1年なんてあっという間だよ。心配しなくたって、浮気なんてしないよ。長い休みにはこっちに帰ってくるし」
 4歳年上の彼は、約1か月前に大学を卒業したばかりで、無事希望していた会社に就職することも決まっていた。だけれど、その会社では入社してから1年間、それぞれ地方の支部に勤め、研修しなければいけない。だけど、1年研修しても、全然使えなかったり、実力が未熟だったりすると、そこの支部で働き続けなければいけない。必ず1年間で帰ってこれるとは限らない。
「それとも、俺がそんなヘマを仕出かすとでも思ってるの?」
 彼を信じていないわけじゃない。だって今までずっと彼と一緒だったんだもの。彼の実力だって知っている。けど、1人で置いて行かれるのが不安なんだ。口に出して言えないけど、すごく凄く、寂しいんだ。
「未来(ミク)」
 そんな私の心境を察してくれたのか、気がつくと私は彼の腕の中にいた。
「本当は寂しいんだろ?不安なんだろう?それは俺も同じだよ……離れたくない。だけど、俺たちなら大丈夫って信じてる。必ず、帰ってくるよ」
 私を優しく抱きしめてくれる彼が逞しい。笑顔が、声が、すべてが愛しい。
「待ってるよ、海斗(カイト)――」
 待ってます、いつまでも。あなたがここに帰ってくると信じて、いつまでも。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

桜の季節・桜の季節-separation-・白の季節を小説化してみた。-プロローグ-(※カイミク注意)

この小説はゆうゆP制作の

桜の季節 - Full.ver 【初音ミク】(オリジナル)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1427306

桜の季節 -Separation-【初音ミク】(オリジナル) 
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4913436

白の季節 【初音ミク】(オリジナル)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1646686

 上記三つの作品を自己解釈で小説化したものです。あくまで自己解釈になりますので、自分のイメージを壊したくない方、自己解釈小説が嫌いな方は、申し訳ありませんがお戻りください。
 これはプロローグになります。
 こちらの小説は桜の季節がメインになりますので、白の季節の内容は少なくなります。

閲覧数:351

投稿日:2009/05/24 23:00:19

文字数:826文字

カテゴリ:小説

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