とある都市のとある街路に、1人の青年が歩いていた。青年の見た感じは中肉中背で、特徴はなく、特に目立たない感じだったが、その表情は穏やかで、親しみ易そうな雰囲気がある。
 彼の名前は安田雅彦。彼はこの近くの大学に通う大学生だが、現在大学4年生という彼の学年と比べると、少し幼い印象を受ける。それもそのはずで、彼は中学、高校をそれぞれ1年飛び級で卒業しており、大学に2年早く入っている上、通常3年かけて修得する単位を僅か2年で修得している為、通常の4年生より3つも若いのだ。雅彦は今から大学で始まる研究室選びが楽しみで仕方なかった。もう既に入りたい研究室が決まっていたが、研究室の選択権は成績順に回って来る。しかし、雅彦の頭脳を持ってすれば最初に選択権が回って来るはずで、従って望むままにどの研究室も選べるはずだった。といっても、彼が考えている研究室は1つしか無く、それは大学に入った時から変わらなかった。
 (佐藤研究室の下見に行ったけど、雰囲気は良さそうな研究室だったな。ああいう自由な雰囲気の中だと、のびのびと研究出来そうだな。先輩たちも良い人が多そうだったし、今から楽しみだ)
 そんな事を考えていると、十字路にある横断歩道に着いた。考え事をしながら歩いていたせいか、信号に気が付かず、更に走って来た車に気が付かない。横断歩道に足を踏み入れた所、車がクラクションを鳴らしたのでようやく気がついて慌てて足を引っ込る。雅彦は周囲に気がつかないほど考えに没頭していた自分に苦笑しながらも、車が通り過ぎた事を見計らって、横断歩道を渡る。
 雅彦は横断歩道を渡ると、商店街に入った。馴染みの商店街で、いつもの様に客引きの声がせわしない。
 (そう言えば冷蔵庫の中身が少なかったな、今日は商店街で食べる物を買って帰ろうか)
 そう雅彦が考えていると、やがて商店街を過ぎ、駅前に着いた。この駅は比較的大きな駅であり、そのため彼の住む地域は都心からのアクセスはよい。今は朝のラッシュを少し過ぎた時間帯だったので、多少人は少なかった。
 そうして駅をすぎると、雅彦の視界に大学の門が見えてきた。大山北大学。ロボットやアンドロイドの研究に関しては、日本でもトップクラスの研究成果を持つ大学である。彼は小さい頃からこの大学に入りたくて仕方が無かった。彼が大学に入った時、2年飛び級した天才の入学として彼はちょっとした話題になったものである。雅彦はスマートフォンで時間を確認した。研究室選びの時間には十分余裕を持って来ている。まだ時間は大丈夫だった。雅彦は門の近くにあった自動販売機で飲み物を買って一口飲んだ。そして研究室選びが行われる教室のある棟へと向かって行った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初音ミクとパラダイムシフト1 1章1節

閲覧数:125

投稿日:2016/10/23 22:21:05

文字数:1,125文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました