「待ってくれ!」



羽化に失敗した塵が叫ぶ



「どうしてなんだ!?」


《どうしてもこうしても無いでしょう?》


「愛してるって云ったじゃないか!?」


《愛ぃ?
 それって,美しいのぉ?》


「あぁ
 愛は,とても美しいものさ!
 時に,歪んだり方向がおかしくなったりして,汚くなることもあるさ
 それでも,純粋な愛より美しいものなんてないんだ!!」


《えー
 完全なものが欲しいのぉ》


「完全なものなんてこの世にあるものか!?
 それに,僕と一緒に居て楽しかっただろ!?」


《私が欲しかったのは,貴方との愉しい時間じゃないのぉ》


「じゃあ,何なんだ!?
 お前が欲しいって言うものは全て……」


《見てみてぇ,この蝶々
 綺麗だと思わないぃ?》



羽は片っぽだけ

うーうー
蠢いていますねぇ







嗚呼,何て美しく可憐なんでしょう!

嗚呼,何て哀れなんでしょう!







《ばいばぁい》


「待ってくれ!!」


《だってぇ
 貴方はもう綺麗じゃないんだものぉ
 それだったら,この蝶の方が断然綺麗……よ?》



塵は塵らしく,ゴミ箱へ……ね?











































お月様がいなくなった
太陽に交代したみたい

刻の流れって嫌
見たいものをずーっと見れない



うぅ



でもね
もう良いの

あれは穢くなっちゃったけど,また綺麗な物見つけるもん












お月様と太陽が3回交代を繰り返した
そうしたら,貴方は私の元に来てくれた


でもでも,長かったぁ


何の感情も抱かない玩具に毎日愛を囁くなんて
ホント,長い時間だったわぁ



「ねぇねぇ」


「何だい?」




貴方は優しく微笑む
どうして,貴方には考える頭が無いのぉ?



「私,綺麗な物が好きなの」


「そうかそうか,じゃあ僕が何でも買ってあげるからね」


「ありがとぉぅ」


「お前は可愛いな……」



うぅ

髪の毛ぇ
触らないでぇ


そんな穢れた手で触られたら腐っちゃうよぉ



「うぅうぅ」


「あぁ,可愛い可愛い」



気持ち悪いよぉ

何?
それで私が満足してるとでも思ってるの?



私はねぇ
お人形さんじゃぁないの

お人形さんはねぇ
永遠に変わらない美を持つ素晴らしいもの
だけど,どんなことをされても何も云えない



とっても可哀想な子なの



そんな子を救ってあげたいと思わないの?










「……ん…………」



来ないでよ
私に触れないでよ

そんな柔らかいもの,どうせ優しいだけの塊なんでしょう?
分かってるのよ


厭らしいのねぇ





他の馬鹿共はそれで堕ちたかもしれない


でも,私は違うのよ?


私が求めるのは貴方との愛じゃないの
ただ只管に美しいもの


それだけ








だから,どれだけ頑張っても無駄なのよ?
ねぇ,分かってるの?

どうしてそんな目をしているの?

そんなにじーっと見つめないでよ



ねぇってばぁ










貴方と時間を共に過ごすようになってから,お月様がにじゅっかいぐらい消えました

その夜は,私はお月様を見ることが出来ませんでした
あの人はお月様を見せてくれなかった




酷いよぅ

うぅ





美しさも快楽も得られなかった


残ったのは痛みと穢れ

それから……






名残惜しさ




























私が求めているのは美しさ
ただ只管にそれだけ



なのにどうしてかなぁ?


こんなのおかしいよぅ?






「あのね」


「どうした?」



貴方の声
優しさと云う汚物に塗れた声



「私なんて存在しなければ良かったんだね……」


「……え?」


「私は美しくないよ」


「そんなことないだろう?
 君は,僕が知る人間の中で最も美しいよ?」



ニンゲン

それで居る時点で,もう,完全なる美を手に入れることは叶わない
ニンゲンは己を罪や穢れに溺れさせて,美しさを壊していく生き物




私の中の理想の生き物

それは,蝶


生まれたときは醜い幼虫
無様に葉の上を這っている
でも,美しくなるために懸命に生きる


今の私は幼虫以下なのよね



「ねぇ……」


「ん?」


「コレ……」


「うん」



柔らかいものが重なり合う

うん
これでいいの


これで貴方は最期だから



「……ん…………」



背に手を回す
今なら見えるわ

貴方のその羽

純白の羽





穢れを知る前に,その白が侵される前に,私がもぎ取ってあげる
そうしたら,貴方は穢れを知ることなく終わることが出来る

どぉう?
良いことでしょう?



貴方は倒れる
羽は簡単に千切れた



……あぁ
コレ,偽物じゃない





そう

知らなかった
貴方,もう穢されてたのね


残念

こんな穢い羽いらない


こんな物,あったって何の意味もないじゃない





こんなもの……































それからお月様が2回ほど居なくなった日

チョウを見つけた




それは,ニンゲンではなくチョウ
無防備にも羽を広げて私に話しかけてくる


どうして?
そんなに大きく羽を広げていたら,濡れてしまうでしょう?


貴方は,そうしていたらどうなるか知らないんでしょうね























今夜は貴方は来てくれなかった

貴方は今までのとは何か違う

何が違うかは分からないけど,何だか……私みたい









今まで集めたこれくしょんを眺める

どれも綺麗な純白の羽だった筈
穢れなんて知らない,ただただ美しい羽だった筈


なのに,どうしてかなぁ?

ボロボロになちゃってる
ちゃんと,標本にした筈だったんだけどなぁ……



でも,穢いものはもう,いらないよね
ぐちゅって手で潰したらバリバリって音がしたよ






それは羽の音じゃなかった


何かが割れるような音



愉しい音









今夜はそんな音を聴いて過ごしました














お月様が浚われた頃,私の部屋から羽はなくなってた
全部ぜーんぶなくなってた



いっぱいあったのに
おかしいなぁ……



私はただ,穢いものを捨てようと思って,ちょっと整理してただけなんだよ?




















(前のバージョンに続きます)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

カラクリアゲハ  ……カラクリと聞いて,ポケ●ンのカラクリ屋敷なる物を思い浮かべてしまった……

ここまで読んでくださった貴方
ありがとうございます!!


まずは素晴らしき原曲様
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7655922




今回は骨盤Pさんの『カラクリアゲハ』です!
†黒蝶†さんのリクエストでもあります!

この曲知らなくて,初めて聴いたのですが……ミク,かっけーよ!!
惚れましたwww




何か,今回は文章打つのに時間がかかりまして……

一昨日と昨日は,1日の半分ぐらいを画面の前で過ごした訳ですが,完成は今日と。。
乗れば,バババーっと打てるんですが,乗るまでが超スローなのでww





最後の部分を書くときに一応検索しておこう,と思い
『アゲハ 羽化』って入力して,ぐーぐるで検索したんですよ……


悲鳴を上げました……
虫,無理なので……

幼虫とかあのウネウネでブヨブヨな感じが無理です
幼虫さん,ごめんなさいorzorz



え?
どんな画像か?

ググレカス

ごめんなさい
Yahooでググって下さいまし







内容は何か,『カラクリアゲハ』っぽくなくなりました
うーん
何か,また,別の物っぽくなってる……





ご意見・感想いただけると,この暇人め,大層喜びます
よろしくお願い致します






あと,すっげーどーでも良い話ですが,
前回のペテン師の時の説明文,取りあえず書きたい文をそのまま書いたら1000文字オーバーしてしまいましたwwww

閲覧数:296

投稿日:2011/04/24 16:29:20

文字数:2,776文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました