やがて世界は廃れて消えるから
誰も愛さないように生きてきたのに、
君は私のすべてを受け入れて
「魔法使いは凄いね」って笑っていた。

「脆い身体でよく笑えるよなぁ。
 君には命の重さとか分からないのかい?」
君は笑顔で図鑑を抱えて
「死んでもいいと思っていた」分からない人間の言葉は

それから君は何度も私に性懲りもなく
話すことを続けた。冷ややかな私を無視して。
何処で拾った知識か分からないけど君は唱える。
デタラメだけど確かに私も生きていた。

「最期には雪を見て死んでみたい」
「じゃあ一緒に作ろう、そんな雪の降る魔法」



そして君が姿を見せなくなり
永久的に続く時間と睨めっこを。
どうせ飽きたのだろうと思っていた、
窓辺にカラスが止まって話す迄は。

「あの方は今、床に伏していて
 貴女の名前を何度も呼んでおいでです」
耳を疑い、箒を片手に
私は今何を考えているのだろう?

無心で薬草を手に取り、トカゲの尾を投げ入れて
魔法陣を展開、メラメラと舞い上がれ、炎!
生きていてくれ、君にはまだ見せていないものがあるんだ。
箒に跨り、君の名前を叫んだ時、
頬を伝う何かが風に吹かれて
夜空へ溶けて消えた。愛してはいないというのに。


人間は脆いと分かっていて、
それでも生を恨みはしない。
廃れては消えると分かっていて、
それでも死を受け入れたい君へ。

君の笑顔を思い出すたびに、
箒が少しだけ加速した。
生きていて欲しいと願いながら
魔力のすべてを夏空へ。


雲間から雪が降っては舞って、
君の瞳に白い雪と箒と。
「見えていますか?私と君の魔法」
「大袈裟なんだよ。ただの風邪だよ?」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

アンラスト・スノウ

雪を見たことのない少年と
死が訪れない魔法使いの少女による
一夏の雪のような詞

テーマ:「あなたの大切な人は」


すんさんの歌詞募集に書かせて頂きました。

「人間は分からないなぁ、ホントに」

閲覧数:231

投稿日:2018/06/26 14:17:10

文字数:703文字

カテゴリ:歌詞

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