今宵も月は雲居の奥に
鏡に映る あなたは誰
血をさす唇 炎の簪
緋色の襦袢 雪刺さる
呼べども呼べども影は遠ざかり行く
こぼれるこぼれる時は元に帰らぬ
求めて求めて白露の結ぶまで
玻璃の安らぎ尽きる前に どうぞ目を伏せ
おやすみ
此方の森で捧げたお燭 誠の願いを星へと送る
奇しき縁でまみえた二人
刹那の夜伽を照らしましょう
今宵も月は朧に溶けて
鏡に映る妾はあなた
火をさす唇 紅蓮の簪
紅葉の襦袢 蠟垂るる
跣足で迷う冬 暮れて
待ち人は来ぬ
吹き消す蠟燭 たゆたう白煙
抱いた燃えさし
胸に深くいつまでも吸い込む香り
魂取るほど忘れさせて
どうかどうか
近づく近づく招かざる者ばかり
いらないいらない穢れだけが累なる
助けて助けて白露の落ちるまで
針で描く色は褪せぬ どうぞ形見に
さよなら
彼方の山で捧げたお燭 切なる祈りを星へと渡す
浅き縁を契りし二人
須臾の情けを灯しましょう
何処の海で捧げたお燭 星の涙を天へと撒いて
薄き縁を失くした二人
詮無き想いを焦がしましょう
果敢無き憂き世を燃やしましょう
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