一歩
「そういえば」
リントは机の引き出しの中から見覚えのあるネックレスを持ってきた。
レンとおそろいのネックレスだ。
リントはレンカさんの首に手をまわし、ネックレスをつけた。
「おかえり。レンカ」
リントはレンカさんに微笑みかける。
「ただいま」
そういうとレンカさんはリントに抱きついた。
2人ともうれしそうだな…。
――あたしもレンにネックレスをつけてあげたかったな…。
「じゃ、私はみんなに挨拶してくるね」
「分かった」
「リントも行った方がいいんじゃない?事情の説明とか」
「そうだな。リンは?」
「あたしはここで待ってるよ」
「分かった」
リントとレンカさんは出て行った。
ふぅ。
あたしの心はずーっとモヤモヤしていた。
レンは帰ってこない。
分かってる。
分かってるのに――。
諦めきれない。諦めたくない。
諦めるよりないのに。
何でだろ?
あたしは何に期待してるんだろ。
アハハ。アハハハハ……。
―――あれ?涙が出てきちゃった。
あたしってば、何で泣いてんのよ。
何で――。
そう思うたびに涙があふれ出して止まらない。
泣いたってなにもならないのに。
「…リン?」
「ッ!?」
「どうした?」
「な、何でもないよ」
「何でもない訳ないだろ。泣いてんのに」
「何でもないったら何でもないのよ!!」
あたしは叫んだ。
リントは驚いている。
「…リンちゃん」
「?」
「リンちゃんが何で泣いてるのか分かったかも」
「え?」
「レン君のことでしょ?」
「…」
「私が帰ってこれたならレン君だって…ってことでしょ?」
「…」
「リンちゃんの願い、私が叶えてあげられるかも」
「え?本当に!?」
「私がこっちに帰ってこられた訳、レン君が帰ってこられない訳、全部リントから聞いたから」
「そうなんだ」
「実は私、現実世界に行ったことがあるの」
「え!?」
「俺も初耳だぞ!」
「うん。たまたま鏡の方にこけて、手を前に出したら魔方陣が開いて、そのまま鏡に吸い込まれちゃったの。で、気づいたら現実世界に…」
「それって、たまたまじゃなくて?」
「こっちの世界に帰ってこられたから、たまたまじゃないと思うよ」
「なるほど。そういうことか…」
「そういうことよ。じゃ、早速洗面台へLet's GO!」
あたしたち3人は洗面台の前に立った。
「じゃ、私につかまって!」
リントはレンカさんを、あたしはリントにつかまった。
魔方陣が開くと、あたしたちはすごい勢いで吸い込まれた。
「「うわぁあぁあぁ」」
目を開ける。
見慣れた歯ブラシとカチューシャが置いてある洗面台の前にあたしたちはいた。
「戻ってこれたんだ…」
廊下へ出る。
すぐ向かいのドアに「RIN」と書かれたプレートがぶら下がっている。
あたしの部屋だ!
部屋に入る。
何も変わっていない。
「へぇ~。これがリンの部屋か」
「リントって入っていいの?」
「セーフだろ」
パソコンが閉じている。
誰かがやってくれたんだな…。
パソコンの前にはネギの抱き枕が落ちている。
反転世界に行ってしまう直前まで抱きしめていたものだ。
何かいろいろ懐かしい。
「よし。早速やろうぜ」
「うん!」
「頑張って!」
レン。
待っててね。迎えに行くから。
そしてマスターに…。
次回に続きます。
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