溶けてしまえればいいのに、と思うのだ。ほら今降っている、こんな雪のように、人肌に触れて溶けてしまえればいいと思う。
互いに互いに触れて、溶けてしまえればいいと思う。
そうしたら何も残さず、けれど2人で、共にいることができるのに。


「レン!はやくはやく!」


あの彼女の笑顔も、亡くすことなどないのに。

レンは微笑んだ。そしてお待ちください女王様、と言いかけて、待ってよリン、に言い換えた。リンはひどく嬉しそうに微笑んだ。その笑顔がレンの全てだった。

そしてレンは知っていた。知っているのだ、溶けることなど出来ないと。溶けて死ぬことさえ許されないと。知っているのだ、きっと、レンだけは。
知っているから、そんなことばかりを望んでしまう。
こういうときにほど、あぁ僕はなんて馬鹿なやつなんだろうな、と強く思う。

あぁ。本当に雪のように溶けてしまえればいいのに。


「レン!」


名前を呼ばれ、レンは微笑み、差し出された手をとった。その手は溶けてしまえそうなあったかかった。


「リン」


レンは名前を呼んだ。そして歩き出す。雪にはしゃぐ姉を、これ以上ないほど愛おしそうに見つめて。


(ああ、溶けてしまえなくてもいいから、)
(どうか、どうか、彼女と二人で)


願ったけれど、そんなことは無理だと、レンは知っていた。
レンは微笑んで目を閉じる。

終わりの鐘が鳴るまで、あと三月。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

悪ノ召使-雪想-

悪ノ召使が大好きなので書いてみた。こんな短編しか書けないよちくしょー!
作詞とかもしてみたいです。

閲覧数:311

投稿日:2008/11/21 21:00:08

文字数:603文字

カテゴリ:小説

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  • 紅蘭 蝶

    紅蘭 蝶

    ご意見・ご感想

    はじめましてッ。
    素敵な話ですね。
    次回が楽しみです。
    ブックマ-クしてもいいでしょうか?

    2008/11/22 00:15:02

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