＃７２「帰宅」



釣りを終えた後、私とレンさんは一緒に帰ることにした


「今日は楽しかったです！」


私は、いまだに手に残る、あのビビビッという感触を忘れられない


「そうか。それはよかったな」


レンさんの機嫌もなおったようだ

でも……やっぱり、謝らないとな……


「あの……レンさん？」

「ん？何？」

「レンさんの秘密の場所を見つけちゃってごめんなさい！」


私は頭をさげた


「別にいいよ。気にするな」


さらっと流すレンさん


「え？」

「ああいうところは、いつかは見つかるんだ。仕方ない」


悪戯っ子のように笑うレンさん


「じゃあ、また行ってもいいですか！」


つい、調子に乗ってしまった私


「はぁ？！……別に俺と一緒にいたって、楽しくないぞ？」


レンさんは驚いていた


「そんなことないですよ。今日は楽しかったっていったじゃないですか」

「す、好きにすればいい……」


レンさんは、そっぽを向いてしまった


「た、ただし！他の奴には言うなよ！特にあの馬鹿医者には！」


レンさんの言葉に頷きながらも、少しひっかかった


「それって、カイトさんのことですか？……カイトさんは、いいお医者さんじゃないですか？」


私にとっては、カイトさんは命の恩人……


「はぁ？あいつが良い医者なわけないだろ？……そりゃ、腕は確かかもしれないけど……お前が風邪で寝込んでいる時に何もできなかったんだぞ？」


それは……私が人間じゃないからで……なんて言えない


「看病だって、ミク姉にまかせっきりだったじゃないか！」

「それは……たぶん、ミクさんを信用しているからじゃないでしょうか？」


私は、カイトさんとミクさんの間に何か……特別な感情があるのは知っている、というか、見てれば分かる……それが何かはわからないけれど……


「信用か…………ミク姉の気持ち……わかってるのかな？」


レンさんは、少し寂しそうな顔をした

でも、私には、それが何を意味するのかわからなかった












孤児院につくと、カイトさんが帰ってきていた


「あ、おかえり、リンちゃん。あれ？レンも一緒か！」

「なんだよ。悪いかよ！」


レンさんがカイトさんにつっかかる


「いやいや、悪くないよ。ただ、珍しいなと思って」


ニコニコしているカイトさん


「ヘラヘラしてんじゃねぇよ！まったく……」


レンさんは、そう言い放つと自分の部屋に駆けあがって行った


それと入れ違いでミクさんがやってくる


「あ、マイちゃん、おかえり。散歩、楽しかった？」

「あ、はい。楽しめました」

「そっか！よかったね！」


ニコニコと素敵な笑顔を振りまくミクさん……

さっき、レンさんが言っていた「ミク姉の気持ち」ってなんのことだろう……