「サナギが、行方...不明」
「そうなんですよ。バンドのみんなで、連絡を取ろうとしてて。ちょっと用事があってね」

コヨミ君は、困ったような声で言った。
「でも、昨日からどこにいるのか、わからないんだ。家にも、帰ってないみたいだし」

立ちつくすリンちゃん。コヨミ君は言う。
「何かわかったら、連絡しますよ。リンちゃんもお願い、連絡くださいね。気を付けてね!」
そういって、電話を切ってしまった。

青く晴れた空の下で、リンちゃんはわけもなく不安になった。


●ごめんなさい、急に訪ねちゃって


さて。それから少しして。
ミクさんが、デザイナーたちの集まる施設「ニコビレ」の門をくぐっていた。

目指すは、紙魚子さんのいるオフィスだ。

ドアをたたいて、返事を待つ。
「はぁーい」
やや呑気な声がして、ドアに向かってくる気配が。そして紙魚子さんが、メガネを指で押し上げながら、顔を出した。

「あら、ミクさん」
「こんにちは。ごめんなさいね、急に訪ねちゃって」

「いいんですよ。さ、入って」

先ほど、リンちゃんに電話を掛けたあと、ミクさんはすぐに紙魚子さんに連絡を入れた。
彼女の都合を聞いて、会えるとなったので、その足ですぐここに来たのだ。

いつもは、建築デザイナーの紙魚子さんの、設計図などいろんな図面や書類が置いてあるらしい、作業机。
そこを、あわてて片付けたようなスペースに、お茶を置いて、ミクさんを座らせる。

「さっき、お電話で言ってたけど、“月光企画”のお話でしょ」

ミクさんは、黙ってうなずいた。


●やっかいな奴らだよ

「何があったんです?」
大きく目を見開いて、そしてまたずり落ちかけたメガネを指で上げて、紙魚子さんは聞いた。

「そのー、あなたが、いつか教えてくれた、その...“神隠し”」
ミクさんも目を開いて言った。
「それが、どうやら起こっちゃったみたいなの」

「かみかくし...」
紙魚子さんは、まっすぐミクさんの目を見たまま、でも特におどろいた風でもなく、つぶやいた。
そして、ふうっ、と、大きくため息をついた。

「起こるかなぁ、って、気はしてたんですよ。不謹慎な言い方だけど」
つぶやくように、続ける。
「このところ、れいの人形...をめぐって何やら、さかんに動いてたみたいですね、あの“月光企画”は」

彼女の言葉に、ミクさんはうなずく。
紙魚子さんはさらに聞く。

「ふー。神隠し、いったい、だれ? まさか、リンちゃん...」

「じゃ、ないの」
ミクさんは、腕を組んで答えた。
「リンちゃんの相棒の、サナギちゃんって娘なの」

「そっか。リンちゃんじゃなかったか。ま、不幸中の幸いかも」
みけんにしわを寄せて、目をしかめて、体をゆする紙魚子さん。

「しかし、それにしても、やっかいな奴らだよ、あの“月光企画”サンは」(-""-;)ムム

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

玩具屋カイくんの販売日誌(261) 起こっちゃった!?

閲覧数:111

投稿日:2015/11/08 21:25:04

文字数:1,198文字

カテゴリ:小説

オススメ作品

クリップボードにコピーしました