『判ってる…君のせいじゃないって。』
誰…?
『だけど俺にはもう耐えられないんだ。』
この声…どこかで…。
『このままじゃ…いずれ…。』
どこかで…。
「いい加減起きろー。」
「きぃやぁああああああああああああ?!」
「ごふぅ…っ!!」
思い切り膝で鳩尾を蹴り上げていた。だって目を開けた瞬間アップで羽鉦さんの顔があったから。何?!何?!この状況…脳みそウニ…じゃなくて、えーと?心臓が有り得ないビートを刻んでる、落ち着け私、まず状況を整理しよう。私確か話があるって羽鉦さんに呼ばれてこの広い部屋に来て、それでスーツの人が出て行って、話してる最中に急に眩暈が…。
「あれ?私もしかして倒れました?」
「…話の途中でぶっ倒れたんで、床に転がす訳にも行かず、俺のベッドに運んで
介抱した結果、礼が蹴りとは良い度胸だ。」
「…って何で上裸なんですか?!服着て下さいよ!!」
「風呂上りなだけだ!!何考えた!!」
羽鉦さんはブツブツ言いながら冷蔵庫からビールを出して飲み始めた。いやいやいや、この状況でくつろがれても私どうすれば良いか困るんですけど!確かに私も悪いけど、起きた瞬間至近距離に顔があったら普通びっくりすると思うんだけどなぁ…。しかも半裸。ふと見ると外はすっかり暗くなっていた。随分眠ってしまったらしい。こんな時間迄介抱してくれたのかな?だったら蹴っちゃって悪い事したかも。
「あの…蹴っちゃったのは謝ります…ごめんなさい。」
「最近貧血多いみたいだな?この前も中庭で眩暈起こしただろう?」
「眩暈って言うか、何か、頭に声が響くみたいな感じがして…。」
「声?耳鳴りか?」
「誰の声とかは判らないんです、でも、何かこう、胸がキューッってなって…。」
「ふ…ん…熱は無いみたいだしな…。」
「ええ、熱とかは…って、だから服着て下さいって!!」
そもそもこんな遅い時間だし、羽鉦さんお風呂上りって事はもう寝る時間かも知れないし、部屋に帰った方が良いかも。ベッドだって借りちゃったしこれ以上迷惑掛けるのも良くないよね。
「帰んの?」
「え?…そりゃ帰りますよ、もう夜ですし。」
「話まだ終わってないのに。」
「なら明日にすれば良…!」
いきなり視界がぐるんと回った。高い天井、照明、そして…真っ白な髪と緑の瞳、私を見下ろすのはいつもの笑顔で、だけど両手は私の手首を押さえてる。状況が飲み込めず目をパチパチさせるしか出来なかった。
「泊まってけば?」
「はい…?」
「大丈夫。食べないから泊まって行って。」
――笑顔とは裏腹に押さえられた両手首は解けなかった。
BeastSyndrome -16.大丈夫、食べないから。-
説得力が皆無です。良い子はどっちの真似もしないで下さい。
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想